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Short story 多機能ナイフ

昔から、1つの物で複数の役割をこなせるものが、実は私、大好きなんです。2WAY、3WAYというワードに極端に弱いのでございます。
例えば、一番良い例が「多機能ナイフ」でございます。
お得感満載な上に、コンパクトである点がめちゃくちゃ大好きです。

これ一つで、万が一無人島に流れ着いても何とか、生きていける気がしませんか?(笑)ミニナイフのほか、缶切り、ハサミ、ルーペ、プラスドライバー、スケールなどなど、33種類の道具が収まっているものもあるのです。

この多機能ナイフは、私の父が大好きでよく持ち歩いており、私たち姉妹にもプレゼントしてくれていました。父の口癖は『何があっても、無人島で生活することになっても、生き抜く!』です。

なぜ、無人島??今もって謎ですが……。

私たちが無人島に行き着くことって、
船でどこか旅行に行って沈没して漂流するとか?
それとも、飛行機が墜落して海に漂流するってこととか?
はたまた、誰かに拉致されて連れてこられるってこととか?

と、様々な無人島行きのシチュエーションを考えては、密かに怯えていました。だから、父からプレゼントされた時は常に持ち歩いていたものです……。

が、ある日、法学部生であった私は、授業の一環で友人と裁判の傍聴をしに行きました。皆さんも飛行機搭乗時に、身体検査されるゲートをくぐると思うのですが、裁判所にも身体検査ゲートがあり、私がそこをくぐったら、まさかの「ピーピー」音が鳴ってしまったのです。

「は?」と思って、自身の荷物を検査員さんと確認したところ、「これですね」と指摘されたのは、父からもらった多機能ナイフ……。

検査員:何でこんなの持っているんですか?
私  :いや、父が何かあった時用に常に持ち歩いていないと危ないというので
検査員:いや、あなたが持ち歩いているほうが危ないです。
私  :……。

はい、確かにそうですね。ナイフ入ってますもんね、おっしゃる通りです。ということで、私はこの日を境に持ち歩かなくなりました(笑)。


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