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労働機会の損失
今回は、「最近暑くて働けないよね?どうしましょ。」って話しをします。
私は労働集約型産業であるビルメンテナンス業(ビルクリーニング)に従事し、営業と業務管理を担当しています。そんなこともあり?現場で働く方々のことは特に気にかかります。
ビルクリーニングいわゆる清掃業は、トイレ、床、ガラス等を清掃するので、現場での業務には一定の体力が必要です。
清掃業の平均年齢は全産業の平均より約7歳高く、53.2歳となっています。(厚生労働省:令和5年賃金構造基本統計調査)
特に現場で作業に従事される方の平均は更に高いのです。70歳を超えて働かれている方もたくさんいらっしゃいます。
元気だなーと感心させられます。(ほんと皆さん若くて元気なんですよね)
そのような思いのなか、先日、日本経済新聞にて温暖化による労働機会の損失、要は「暑くて働けない」という記述がありました。この記事を読んで、清掃業ももっと労働環境の改善に努めなければならないと思ったので、現場で働いている方の立場にたって、データに基づいて改善策を考えてみようと思いましたので以下綴ります。
現場の作業で働いている多くはいわゆる高齢の方なので、その方たちのことを知ることからスタートします。
一昔前のの60代70代の方ってこんな若かった?
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上のグラフは年代別の体力テストの合計点の年代別グラフですが
現在と25年前を比べると・・・・・
ここ25年で
男性が5歳
女性が10歳
若返っていることが分かります。特に女性の10歳ってすごいですね!これは女性参画の推進と雇用延長による影響も大きいかもしれません。
働いている方って若く見えますもんね。(主観)
加齢による身体能力の低下
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若返っているとはいえ、必ず加齢による影響はあります。
上記のグラフは上体起こしの年代別回数ですが、他のテストでも概ねこのようなグラフを描きます。
男性は60歳後半で
女性は60歳前半で
ピーク時から50%低下しています。
当然個人差はあるとは思いますが、60歳を超えてくると10代前半の体力まで戻ってしまうのですね。
また、体力だけでなく加齢による影響は以下の通り様々です。
・感覚機能
・体温調節機能
・内臓機能
・外観
・回復力
ここでピックアップしたいのは、体温調節機能と回復力です。
冒頭にあげた「暑くて働けない」とはこの機能の影響を多大に受けます。
清掃現場の特殊性
次に清掃に従事する方がどういった環境で働いているかを考えます。
清掃って特殊な労働環境なんです。
どういうことかというと、概ね顧客が保有する建物が仕事場(清掃している)になっています。そして控室(休憩場所)や道具置場はその建物内の部屋やスペースを使用することになります。
当然、その建物を利用される方の環境設定の上で作業することになります。
例えば事務所ビル内の清掃であれば、真夏の建物内のエアコンは概ね27℃で設定されており、廊下やトイレには空調機器は無い建物も多いのです。デスクワークでの27℃は適度(私はそれでも暑いのですが)なのでしょうけど、動いたら”めちゃあつい”んです。
そんな環境の中で、動き続けて作業していますから、作業始めて5分もすると、もう大抵汗だくな状態になります。
2023年の日本の労働機会損失
そんな”めちゃあつい”状況になる真夏日(30℃以上)が、近年は期間が長すぎませんか?気象庁を参照すると、近年は真夏日が年間50日が当たり前になっていました。
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猛暑により仕事が妨げられた時間は以下の通りらしいのです。
・世界で5,000億時間
・日本で22億時間(建設業7.8億時間、サービス業6.7億時間)
日本では潜在的に得られる収入5.8兆円分を喪失しており、GDPの約1%に相当します。(日本経済新聞)
更に建設業に至っては、総労働時間の約35%が猛暑により機会損失しているという凄い数値が出ています。
最近話題で持ち切りの「年収103万円の壁による学生の働き控え」による影響が年間1.1億時間、個人消費は1060億円(日本経済新聞)の影響がある試算が出ているので、労働機会の損失という面だけ見れば、この約20倍の影響があるということになります。
労働環境の改善
清掃業は深刻な人手不足に陥っており、現場の高齢化も進んでいます。
安全に継続して働いてもらう環境を整えることは、事業の存続の重要な要因になります。
そんな思いから来年に向けた準備を以下の通り考えてみました。
(作業計画)
・余裕を持った作業計画
・作業の中断や短縮
・こまめな休憩時間
→顧客へ事前に理解を求めておき、作業員に周知しておく事が肝要。
(冷却対策)
・冷却服着用
・冷却タオル使用
・休憩室への冷却機器設置
→一律ではなく、現場ごとに最善の対策をとることが肝要。
(健康管理)
・睡眠、体調、飲酒、食事等の生活管理
→従業員へ影響を周知し、自己管理の重要性を説き続ける事が肝要。
まとめ
前述の通り、清掃は現場ごとに環境が変わります。そして、人間は個人差があります。最善の対策を取るためには、一人一人とのコミュニケーションが大事になります。
気候変動という外的要因と加齢に伴う身体能力低下や個々の特性という内的要因を踏まえて、一律的な対策の上に、更にそれぞれを柔軟に考えることが肝要となります。
来年の夏に向けてしっかりと行動に移していこうと思います。
ビルメンテナンス業に限らず、上記以外で効果的な手段がありましたら教えてください。
最後までお付き合いありがとうございました。