オナニストの復活と進化~タントラマンへの道(第33話)
克服された恐怖
当時の知識レベルでは、「身体に生じたしこり=癌」であり、
「癌=不治の病」だったので、もうこの世の終わりかのように感じていた。
しかし、親に相談することは無かった。心配をかけるといけないと考えたからなのか、秘儀のことがバレるのが嫌だったからなのか、ハッキリとした理由はわからないのだが、とにかく親にも先生にも友人にもこのことを話すことはなかったのだった。
もちろん、一人で病院に行くなどということは出来なかった。
そうなると、インターネットなどという便利なものが普及していない時代、他人に相談できないことを解決する手段は「本」しかなかった。
幸いなことに、家から自転車で行ける範囲に少し大きめの書店があったので、医学関連コーナーで調査を開始した。
いつも怖々ながらも読んでいた子供向けの「病気(奇病)本」とは趣が異なり、もっと実際にありふれた病気に関する解説を読むにつれ、なんとなく今すぐにでも病気になってしまいそうな気分に陥ってしまった。
「乳首の皮下組織に出来た痛みを伴うしこり」の正体に目星が付くまでどのくらいの時間がかかったかの記憶は定かではないが相当な時間が経過していたと思われる。
没頭してZONEに入っていたのだろう。
立ち読みしている迷惑な客の周りを、店員がはたきをパタパタさせながらうろつくという、漫画かドラマで見かけるような光景を実際に体験することになった。
でも、その甲斐あって、ついに「正解」らしきものにたどり着くことができた。
自分に出来たような胸のしこりは、成長期に分泌されるホルモンの影響で出来ることがあるのだという。
成長期には胸のしこりだけではなく、膝関節に痛みが出たりもするそうだ。
その膝関節の痛みも自覚症状はあって、膝を曲げてから伸ばそうとすると
鋭い痛みを伴いながら「バキバキッ!」と音がするのが、これまた怖かったのだが、これも成長期にともなう正常な症状なのだとわかって安心した。
何しろ、当時は一年で身長が10~15cmくらい伸びていたので、自分が成長期の真っただ中にいるのは間違いなかったからだ。
しかし、最大の発見(?)は、「精通現象」に関する知識だった。
ある日突然秘儀のクライマックスで発現した「透明な鼻水」の正体までもが
いとも簡単に明かされてしまったのだ。
「あ~、良かった~! 癌じゃなかった! 鼻水が出るのも当たり前!」
上り坂が続く帰路も、いつもは重たい自転車のペダルも軽く感じられるくらい楽々と登っていくことができたのである。
その日のうちに秘儀を執り行うチャンスを得た。
方式は「うつ伏せピストン方式」ではなく、「父ムスコ対面方式」を採用した。
身長とともに、チン長も伸びていることを改めて実感した。
そして、ご神体も以前は萎んだ朝顔のような見た目で皮に覆われていたのに
今では皮が余らなくなってきていて、おしっこの出る穴が見えるようになっていた。
そこで、皮を無理やり剥こうとしてみたのだけれど、皮と中身が密着しているようだったし、痛みを感じたのでその時はそれ以上は剥くのがためらわれた。
その日の儀式では、さらなる変化が生じた。
儀式のクライマックスで発射されたヌルヌルの液体が、
透明ではなく、白く濁っていたのだ。
しかし、これについては書店で店員に邪魔されつつも完遂した修行によって既に知識を得ていたので心配はしなかった。
こうして、目出度く小学5年生にして、父親になる身体的能力を獲得したのであった。
(つづく)
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