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「給食無償化」は本当に必要なのか

教師として見た、親の“出し渋り”と子どもの食の権利

「親が数千円の給食費を出し渋るせいで、子どもが肩身の狭い思いをしている」――私は小学校の教諭として、このような現場の実態を何度も目にしてきました。教師がわざわざ給食費を取り立てなければならず、子どもを巻き込んで苦しい空気になってしまうケースも多いのです。そんな中、政府与党が公立校給食無償化の方向性を打ち出し、2026年度にはまず小学校での無償化を実現、その後中学校へも広げようという動きが注目を集めています。

果たして給食無償化は必要なのか、「食育」としてどのような意義があるのか。現場教師の視点から、親の「出し渋り」がもたらす子どもへの影響や、給食費無料化のメリットを整理してみたいと思います。


1.親の数千円“出し渋り”が子どもを追い詰める

1-1. 学校給食は、単なる食事ではない

同じ時間にクラス全員で同じメニューをいただくことで、コミュニケーションを深め、食育(栄養バランスやマナーを学ぶ)を行い、互いの食文化への理解を育む場でもあります。

1-2. 教師が行う“取り立て”業務のつらさ

公立校の場合、給食費は実費扱いとなり、未納がある場合は学校側が催促しなければなりません。担任や事務職員、管理職が「○月分がまだですが……」と何度も電話をかけたり、文書を送ったりする手間は相当なもの。本来、教師は子どもの学びや心のケアに集中したいのに、取り立て業務まで背負うのが現実です。


2.政府・野党問わず“給食無償化”に前向きな動き

2-1. 石破首相が維新・公明と合意、「2026年度に実現」

報道によると、石破首相が公明党・日本維新の会との間で、まず小学校での給食無償化を2026年度に実現することで合意。さらに中学校への拡大も「できる限り速やかに実現する」方針が示されたとのことです。
この流れを受け、与野党を問わず給食無償化への期待が高まっており、立憲民主党や国民民主党も類似の法案を国会に提出しています。

2-2. 「昔の給食」から「いまの給食」への進化

石破首相は、自身が子どもの頃「パンと脱脂粉乳とラーメン」という不思議な給食メニューがあったと述懐。しかし近年は品目数が増え、地域の特産品や地産地消を取り入れた美味しい給食が広がっています。アレルギー対応なども進み、給食の役割はますます教育的に重要になっているのです。


3.なぜ「給食無償化」に賛成か? 教師目線からの理由

3-1. 「食育」なら教育費の一環にするべき

教科書が無償で配布され、授業料も公立校では無料(高校も実質無償化)になっているのに、給食費だけが家庭負担というのは一貫性に欠けると感じます。「食育」を謳うなら、給食も教育の一部として公費で賄うのは自然な流れでしょう。

  • 心身の成長に不可欠: 栄養バランスを考えた給食が担う役割は大きい

  • 子ども同士の差異をなくす: 無償であれば、すべての子どもが同じ条件で学べる

3-2. 教師の負担軽減で、子どもに集中できる

給食無償化されれば、教員が未納の催促をする手間が省けるだけでなく、誰が払った払ってないなどを気にする必要もなくなります。その分、授業や児童指導に時間とエネルギーを注げるというメリットが非常に大きいと感じます。


4.財源や質の問題はどう考える?

4-1. 国と自治体の協力が必須

無償化を実現するには、新たな財源が必要です。国がどの程度補助し、自治体がどの程度を負担するのかは、地域によってバラつきが生じるかもしれません。

  • 自治体の財政力: 裕福な都市部は独自で無償化を進めやすいが、地方や過疎地域は困難

  • 全国統一の制度か、自治体裁量か: 今後の国会審議や政令市の判断が焦点になるでしょう。

4-2. 食材の質を落とさない工夫

「無償になるとコスト削減が優先され、質が落ちるのでは?」という声も。一方で、 “地産地消”や“安心安全な食材” に力を入れている自治体も増え、むしろ予算が確保できれば給食の質が改善される可能性もあります。


◾️まとめ:給食はただの食事ではない。無償化で子どもの未来を支える

  1. 給食が有料だと親の“出し渋り”により子どもが恥をかく

    • 数千円を払わない家庭のために教師が取り立てたてることに

  2. 無償化すれば、差がなくなり“教育の一環”として統一できる

    • 食育を掲げるなら、教科書・授業料同様に公費負担が筋

  3. 教師の仕事が減り、教育本来の業務に集中できる

    • 未納催促や保護者とのトラブルを防ぎ、子どもの学びを充実させられる

  4. 財源や質の課題

    • 国と自治体で負担をどう分担するか、今後の制度設計が要

  5. 結果的に子どもの食・学び・心を守る

    • 給食が全員に公平に行き渡り、子どもの発育・学習意欲が高まる

私は教師として、教室で「給食費を出せない(出さない)家の子」が何とも言えない表情をするのを見てきました。その解消策として、給食費の無償化は大きな効果を持つと思っています。
「食育」と位置づけられながらも家庭の経済状況で格差が生まれる現状を変えるには、国や自治体の本気の意思決定が不可欠です。小学校での先行実施と中学校拡大もぜひ実現し、教師が給食費未納対応に追われることのない世の中を作りたい。これは、子どもたちの尊厳を守り、教育の機会均等を保つための一歩でもあるのです。


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