ワルツとウォルズ
アメリカ大統領選挙は終盤に入ってバイデン大統領のヨボヨボ感が問題視され次期大統領候補から引きずり降ろされてしまった。かわったハリス現副大統領が民主党の次期大統領候補になった。それが7月下旬。そこから次期副大統領候補探しが始まり、8月6日というから半月前、ミネソタ州知事のTim Walzという人に決まった。最初、日本のマスコミのほとんどはこの人の名前を「ワルツ」と表記していた。私の記憶では日テレが「ウォルズ」と報道し「おー。勇気あるなあ」と思った。多くのマスコミが「ワルツ」と表記してるのだからそれで固まる可能性が大きい中でまるで殴り込みみたいにぶち込んで来たように見えた。
ところが今日NHKが「ウォルズ氏」と表記しているのを見て「あ」と思った。検索してみるとNHKは2週間前には「ワルツ」と表記していたが現在では「ウォルズ」にしている。国内メディアだけでなくCNN、ロイターなどの外国メディアの日本語版も同様で、最初は「ワルツ」と表記し、今では「ウォルズ」が主流になった。
ワルツっていうと「♪ブンチャッチャ、ブンチャッチャ」を思い出すが、このスペルは"waltz"で、発音もカタカナで書けば「ワルツ」又は「ウォルツ」となるが、副大統領候補はちょっとだけ綴りが違う"Walz"で、wikipediaにある音声ファイルを聞くと「ウォルズ」というカタカナ表記がいちばん適当かなと思う。なんで最初からこれにしなかったんだろうと思う。「♪ブンチャッチャ」のワルツと同じ綴り、同じ発音だったら仕方ないけど、違うし。
バイデン大統領が初めて日本のマスコミに取り上げられたのは2008年にバラク・オバマが大統領選を戦っていた時に副大統領候補に指名された時だが、その時は「ジョエル・バイデン」と紹介する日本語記事がほとんどだった。でも英語ではwikipediaなどほとんどが"Joe Biden"と綴っていたのでそのうち「ジョー・バイデン」ってなるなと思って実際そうなった。
ずいぶん以前に遡るが80年代のレーガン大統領も最初は「リーガン」という表記だったのが最終的には「レーガン」になった。これは単に日本語表記が揺れたというのではなくて、レーガン自身が大統領選挙の初期には「リーガン」みたいに自ら発音していたが、Reaganは彼のルーツのアイルランドでは「レー」って発音するのが一般的なので大統領選挙の最中に「これからは自分の名前をレーガンって発音する」って表明したという経緯がある。
こんなふうに固有名詞でも普通名詞でも従来の表記が変わることはちょくちょくあるけれど、2週間で主流が「ワルツ」から「ウォルズ」にサッとほぼ統一された形になったのはどういう仕組みが社会にあるのかなと考えると興味深いのでここに指摘しておきたい。
私は素朴に疑問に思っていることがある。外国為替相場のチャートを見ていると、いろんなFXの会社があって、PCの画面上で、ドル円でもユーロ円でも、常に動いている。秒単位より細かく変動している。FXの会社によって相場はたぶん瞬間的には0.01円ぐらいの違いはあると思うが、動き方は基本同じなんだと思う。それである時はすごく動く。どうも日銀というか財務省が介入したらしいというが誰も断言できない。にも関わらず値動きは秒単位よりも細かい時間単位でものすごく変動する。どの金融機関も市場で取引していて「あ、1分前よりもこんなに円高になったんだ」というのならわかるだろうが、0.1秒単位ぐらいでどうしていろんなFXの会社がほぼ同じ値段に統一できるんだろう?という仕組みが分からない。そのうちYouTubeとかで誰かが解説しているのに出くわして納得する機会があるかもしれないが今のところ分からない。だって「ワルツ」が「ウォルズ」に収束するまで2週間ぐらいかかってるのになぜ外為の相場は0.1秒で収束するんだろう?というのが私の疑問である。
固有名詞の呼び方が変わる例はざらにある。たとえば北京は日本語では「ペキン」だが実際は「ベイジン」という感じで、英語表記はBeijingだと思う。昔は彼らも「ペキン」みたいに発音してたらしいが今では「ペキンダック」という時以外はBeijingにしているが日本は「ペキン」のまんまだ。
速やかに変わったものとしては「グルジア」→「ジョージア」や「キエフ」→「キーウ」がある。両方ともロシアに軍事侵攻された国がロシア的読みを拒否したためで、日本語表記もすみやかに変わった。
オランダは2020年1月から自らの名前を「ネーデルランド」に替え、「オランダ」の名称はもう使わないことを宣言し、外国にも「自分たちのことをこれからはネーデルランドと呼ぶように」と周知した。Hollandというのはこの国にある12の州のうち「北Holland州」と「南Holland州」の2州を指すだけで、この国全体を指す地名ではないということだそうだ。たぶん北九州のことを博多と呼んだり、兵庫だったらみな神戸と思ってるみたいな違和感があるんだろう。
但し日本だけは例外で、江戸時代に鎖国してる間もオランダだけは長崎の出島を通じて日本とやりとりが許され、日本人にとって「オランダ」という言葉には非常にポジティブなイメージが込められているために「そのままお使い下さい」ということだそうだ。