オリオン座愛
冒頭の画像は今の時期、つまり年始頃の宵の口に南の空にみえる星空。左側が東の空で右側が西の空。
星は東から昇り西に沈む。太陽も月もみんなそうだ。
「但し」と言い出すと話が込み入ってくるが。
それぞれ東から西に動く理由が違って、みんな地球が西から東に向けて自転してるからそう見えるのだが、月だけはさらに月が地球の周りを回っているという理由があるので、太陽や星たちとは違う独自の動きをするし。星たちは北極星の周りをグルグル回っているので、東から西に動くのは実は南のほうを向いている時だけで、北の空では西から東とか、北から南みたいに動いてる部分もあったり。でも我々が地球から星を見る時は、北側を向くことはほぼない。北の空には北斗七星ぐらいしかめぼしい星がない。地球上では、北半球に陸地がたくさんある一方で、南半球は陸地的にはスカスカであるが、星空に関しては逆で、南半球に星がたくさんあり、北半球はスカスカである。北極星なんか、1年じゅう同じところにあるけれども、東京とか大阪みたいな大都市では見るのは難しい。苦労して見つけたとしても「え、あれ?しょぼー」みたいな。そして北斗七星が夜空に映えるのは、こいつが北極星の南側に回り込んで、南の空のしし座と背中合わせみたいになった時で、こういう時は南の空を見ながら背中を海老反って見るのでもはや北斗七星は南の空の星座の一つとして見ることになる。(私基準)
さらに、普通の恒星じゃない太陽系の星はまた別の動きをする。恒星どうしの位置関係はガッチリ固定されているので、星座というものが成り立つのだが、太陽系の星、惑星は、明るいんだけど、星座を邪魔しに来るので私はノイズの一種やと思っている。最近は、宵の口には「宵の明星」として西の空に金星がある。これはそのうち沈むから別にいいが、現在、木星がおうし座の角の付け根ぐらいにあるし、赤っぽい火星がふたご座としし座の間ぐらいにあるように思う。おまけに月もだんだんふくらんで、あと数日したら満月になりそうだ。星空を観察する者としては邪魔者である。
そして下の画像はそれから12時間ぐらいたった明け方の、同じく南の空にみえる星空。
昨日の夜のはじめにはオリオン座の西側にみえる星座たちが一掃されて、今はオリオン座の東側の星座たちが夜空を制している。ページをめくったみたいだと思った。つまりオリオン座は前のページの終わりで、そこを持ってぺらってめくって次のページになったみたいに。
星空は夏よりも秋から冬にかけてがいちばんきれいにみえる。空気が乾燥していて水蒸気が含まれないから遠くまで澄んでみえるからというのもある。しかしより大きな理由としては、主要な星とか星座は秋から冬にかけて見えるからということがある。その中心はオリオン座である。こいつは一年を通じていちばん派手で見つけやすい星座だし、その左下にあるシリウスは恒星の中でいちばん明るい星だ。こいつより明るい星があったらそれは惑星(金星、木星、火星)か、飛行機か、人工衛星か、UFOである。こいつらだけは都会でも見れる。街灯がギラギラしててもその向こうにシリウス見えたりする。私も星空観察は大阪時代に覚えたし。大阪は特に夏は、地平線なんか真夜中でも街の光で白くかすんでるし、てっぺんもなんかかすんで、見やすい星がないので夏場はほぼ星空観測はできない。それで8月ぐらいだろうか、このオリオン座が夜明け前の東の空に現れ始めたら、「よっ!待ってました!」っていう感じである。1年の始まりは世界中でいろいろ違う。ハロウィンを祝うケルト人なんか、11月が1年の始まりで、普通の西洋では1月だし、われわれのいる極東の旧暦の1月は太陽暦の2月ぐらいやし。4月が1年の始まりというところも欧州にはあるらしい。それが、ある時から1月が年の始まりになったけど、ずっと4月1日が1年の始まりやと言ってた人たちを揶揄して「4月馬鹿」って言ったのがエイプリルフールの始まりだとか。イスラム暦は1年の始まりが、月の動きによって変わっていくので、夏だったり冬だったり色々だという。1日の始まりでも、江戸時代は、夕方、月が出始める頃が1日の始まりだったというし。私としては、星空に関しては、初めてオリオン座が見える8月の、下旬ぐらいかな、夜明け前の空に「あ、今年初めてオリオン座見た!」っていうのが、なんだか新しい1年が始まった!という感じがする。星空観察はオリオン座が中心である。その周りに、シリウスを含むこいぬ座、おうし座、ぎょしゃ座、ふたご座など比較的目立つ星座が固まっている。星の名前を知らない人が秋とか冬の夜空を見て「今日の星空きれい」って思ったとしたら、たいていオリオン座とその周囲を見てると思う。
夏の終わりから秋のはじめにかけてはオリオン座はまだ夜明け前の3時とかでないと現れないのが、だんだんともっと早い時刻に出てきて、秋が深まった頃にはオリオン座も日付が変わる前に見えてくるようになり、今頃、年初あたりには、夜が暗くなる6時には冒頭の画像みたいに、東の空にみえるようになり、それが一晩かけて夜空を渡り、明け方前に西の空に沈んでいく。つまり1年でいちばん星がたくさんあるオリオン座付近が、夜のどの時間にも見える時期である。
今年のはじめ頃。1月4日頃だったろうか、夜のはじめにはオリオン座が東の空に昇りはじめて、その西側にみえる星座たちが、冒頭の画像のように見えていて、それが夜明け前には一掃されて、2番目の画像のように、オリオン座の東側からどんどん出てくる星座たちが夜空を制することになる。なんだかページをめくったみたいだと思った。つまりオリオン座は前のページの終わりで、そこを持ってぺらってめくって次のページになったみたいに。スマホで星空を撮影したら街灯とか邪魔して星はシリウスぐらいしか写ってなかった。それで画像は自分で手書きすることにした。縮尺とかは言うまでもなく無茶苦茶だが、私の頭の中にはこんな感じで星空の秩序がイメージされている。
私はこのオリオン座の東の星空が西の星空にページをめくったみたいに総とっかえしたさまが詩的であると思ったので、これを思いついた記念に一句詠もうと思った。「オリオン座」が5で「ページをめくる」が7で、575とするとあと5文字しかない。
星空のページをめくるオリオン座
これでは説明がなければ意味がわからない。私がその日なぜ「ページがめくられたようだ」と思ったかというと、新しい年がはじまったということと重なったのかもしれないと考え、
新年のページをめくるオリオン座
ますますわけがわからない。
仕方ない、わかるように説明を加えるために57577に拡張して短歌にしようか。と思い、では新しく加える言葉は「一夜明け」「夜空をめぐり」「ひと晩で」など色々考えれば考えるほど気持ちが削がれていく。「別にここまで考える価値のあることか?」と思えてきた。しかし考え続けたらいいアイデアが浮かぶかもしれないと思ってむなしく1週間近く過ぎてしまった。