ほんまショック
私が政治問題になりうる話題を扱う時に「こんなふうになれたらいいな」と思うのは文学者で言ったら夏目漱石。つまりこの人は右でも左でもないというイメージがある。この人は明らかにこう、という人も多いと思う。三島は右、大江は左みたいな。鴎外なら西洋かぶれというイメージがある、あるいは私は長い間そう思ってきた。実際はそうではない気もするけど。でも漱石は「私は英国は嫌いなんです。しかし事実は事実として認めなければいけない」なんて言ってから英国を褒めたりするので、なんかバランスが取れてるなあって。自分ではバランスを取ってるつもりでも他人から見たら右か左かバレバレみたいな時も多いと思う。ずいぶん昔に読んだ小説、マイケル・クライトン「ライジング・サン」の冒頭に、主人公がある日本通の刑事だったかを評してこう言う。「(アメリカ人が)日本のことを言う時、綱渡りをする人の多くがどちらか側に落ちるように、ボロクソにけなすかべた褒めするか、どっちかのタイプになるけど、その人はどちらの側にも落ちずに綱の上を渡っている」みたいな。ほんまそうやなあって。綱渡りして、右側か左側か、どっちかに落ちちゃう。漱石はうまいこと綱の上を歩き続けてるって。私もそうありたい、と常日頃思っているが、思っているだけで実行できないけどね。きのうの選挙のことを今から書こうと思うんだけどタイトルだけで私の政治スタンスはもうバレバレなんやけど。でも「残念」っていうんじゃなくて「ショック」なので、そこが。とにかくたとえバレバレでも、「私はこういう政治スタンスです」「右です」「左です」って明言はしたくないと思ったりする。過去に政治トピックで記事を書いてる中で言っちゃってるかもしれないけど。少なくとも「皆さん〇〇党に入れましょう」「△△党は入れてはいけません」みたいなことだけはないようにしようと思う。実際私は無党派だといちおう思っていて、今回も小選挙区で入れた人と違う党に比例区は入れたし。何党に入れることが多いという傾向はあるけど、いちおう毎回考えて「前回とは違う人に入れよう」っていう感じである。
前置きだけでかなり時間がたってしまった。私はもし以前やっていたブログの記事を書くんだったら、こんなトピックのこんな長い文章なんか誰も読まないっていうのに、なんかアスペ独特のこだわりなのか、数字とかファクトチェックをきちんとして、それで延々と長い記事を、何日もかけて書くのが常だった。なんか、そうしないと気が済まないような気がして、書けたらいちおう気が済むのだ。1週間で完成すれば「早く書けてよかった」って思ったりした。
しかしそういう書き方は時間があんまり取れない中で、生活スタイルと合ってないと思い、それが前のブログを潰した最大の理由なので、きのう選挙のあった翌日である今日じゅうに、適当に書いて一つ記事にしてしまおうと思う。それで書き足りないところは必ずあるのでそしたら続きをまた別の日に書けばいいや、って。そういう書き方を今までしたことがないので試しにそうしてみよう。今日はあと1時間も時間がとれないので、昨日からメモ書きした文章をつなげたりして以下書いてみようと思う。昨日の選挙のことについてだ。
20時ちょうどに衆院選挙結果をNHKの速報で見たら、自民の単独過半数割れ確実とあって、二の腕の裏側に嫌な血が逆流するのを感じた。なんかショックを受けると、ある時は頭のてっぺんから、ある時は手先から、軽い痛みを伴う血の逆流みたいなのを感じるけど、今回は二の腕だった。どうでもいいけど。
・結果は与党215議席。自民191,公明24。自民は247から191へと56議席減らした。過半数が233なので14足りない。裏金問題関与の候補46人のうち28人が落選、18人が当選した。非公認で当選したのは平沢勝栄、萩生田光一、西村康稔の3人、加えて離党勧告で以前から離党していた世耕を入れても、4人しかないので14人足りないのはやはりどこかから補充しなくてはいけない。その作業が大変そう。無所属、国民民主党、そして河村の日本保守党あたりからリクルートする。無所属では松原などもいる。維新の中から一本釣りできる可能性のある人もいるかもしれない。たとえば石破と個人的なつながりのある前原誠司とか。今後しばらくは過半数を固めるために誰に声をかけるかというニュースが賑やかになりそう。
・思うに、参議院で負けるほうが政権交代につながりやすいかもしれない。まず衆議院で過半数をとると、新与党が守勢に立たされて支持率が低くなるので。参議院から過半数をとれば、ねじれ状態に置かれた与党をいじめながら過ごすので次の衆院選で与党が不利になり、野党が勝つ。するともともと過半をとってた参議院プラス新たに衆院を抑えれば政権交代につながりやすいかもしれない。
それにしても一寸先は闇。1年前ぐらいまでは、3年ぐらい大きな国政選挙がない黄金の期間みたいに言われてたのに。
・れいわが伸びたのは、中身ではなくパフォーマンス、表現が現実とどうバランスがとれてるかということが大事だということが示されていると思う。たとえば、ある政治家がある発言を批判されたとする。事実の間違いがあるとか、ひどい政策だとか、いろいろ。その時、「間違ってました。すいません」って言っておわびして釈明する。その後、「さて、私の政策・主張を聞いて下さい」って言っても、最初から聞く気のあった人だけ聞くけど、最初から聞く気のなかった人はもう聞いてない。そういう時は、批判はガン無視して「さて、私の主張を聞いて下さい」っていうほうが印象がよくて、選挙などで良い結果が生れることにつながりそう。かといってその問題が今回のように大々的に出ちゃった場合はガン無視すれば誠実さがないとか隠してるとか悪い印象につながるから難しい。
しかし政権に就いた側はほぼ常に守勢に立たされる。野党の悪いところはほぼニュース価値がないので、誰も探さない。これは自民党だから責められるというのではなく、民主党が与党の時だって色んなことを言われた。野党になった自民党もすごく意地悪で、民主党の誰々が農地のはずの自分の土地を車庫に使って税金で優遇されてるとか、外国人から献金を受けてるとか、額からすればわずかなことだけど色々責められていた。だから与党はそういう対策を何かすべきだと思う。安倍首相はそういう対策をすごくしていたように思われる。1年しか続かなかった第1次政権の時はほんま色々ボロクソに責められていて、守勢だったが、政権復帰した2次政権以降は朝日新聞を仮想的にして攻めの言論を行っていた。それ以前の与党になかった姿勢だった。「また朝日新聞が捏造しています」みたいなことを言う総理大臣というのは斬新だった。
今回自民党がボロクソに負けて、石破首相の態度を見ていると、こういう状況下で、私が想像できる限りでベストの態度だと思う。現実を受け留めてるけど、凹んでる様子もないし、過度な反省の態度でもない。非公認の候補に2000万円配ったということについても、小泉選対委員長はなんか反省の弁みたいなことを言っていたが、森山幹事長や石破首相は悪いところは何もないという態度を崩してなくて、これはどちらが正しいのか分からないが、もしそれが悪いことは何もないというのであれば、もう選挙は終わっちゃったけど、一度ガンガン議論を仕掛けて、赤旗の報道は不適切だったという論陣を張るべきだと思う。選挙結果は変わらないが、来年はまた参議院選挙があり、そこに影響してくる問題だ。
私が今回いちばん注目していたのは大阪の選挙区だった。大阪は19の小選挙区があるが、3年前の岸田首相のもとでの衆院選で、維新の会は19選挙区のうち3しか取ってなかったのをいっきに15に伸ばした。つまり3年前のことだが、選挙前は19のうち自民12、維新3、公明4だった。それが自民の12が全部、一つ残らず維新に移って維新15、公明4になった。前回の岸田政権のもとでの選挙はいちおう自民はめでたく勝ったということになってたのに、大阪という東京に次ぐ第2のでかさの19小選挙区で自民は全敗したのだ。当時維新は大阪都構想で公明党の協力を求めていた関係で、公明党が出る小選挙区の4か所では候補を立てなかったのが、今回、きのうやったやつでは、公明の4選挙区でも維新の候補立てるって言ったので、それがどうなるかと。今回の選挙でいちばん見どころだと思ってたのがそこだった。維新が全部勝って公明党の4候補はみな落選した。全国2位のでかい大阪で維新が小選挙区を総取りしてしまった。すごい。
但し維新は大阪以外では小選挙区でほぼ勝てない。隣の兵庫だって小選挙区はすべて候補を立てたのにゼロ。京都だって1つしか取れなかった。その取ったのは今回維新に入った前原誠司というスター政治家だった。前原は無所属でも当選できる人だ。
また気が向いたら同じテーマで書こうと思う。今は時間がないのでここまで。