【随時更新】特定生殖補助医療法案についての質問状への各政党の回答

わたしたち「クィア/フェミニズムZINEを作る会(仮)」は2024年の衆議院議員総選挙に合わせて各政党(政治団体「日本保守党」を含む)に特定生殖補助医療法案についての質問状を送付しました。この記事では、その回答をご紹介します。10/26日現在回答が得られているのは立憲民主党、日本共産党、国民民主党、れいわ新選組の4党です。

第三者から精子や卵子の提供を受ける不妊治療などのルールを定めた特定生殖補助医療法案は、現在超党派の議連によって今国会での法案提出が目指されているものの、子供の出自を知る権利が脅かされる可能性や、法律婚のカップル以外が子供を得る権利が侵害される可能性などから懸念の声が上がっています(特に後者については以下の記事を参照ください。https://news.allabout.co.jp/articles/o/85717/#goog_rewarded)。

【質問1】2024年10月7日に生殖補助医療の在り方を考える超党派の議員連盟から提出された特定生殖補助医療法案の最終案(以下、当該法案)の内容について、どのように考えますか?

1、全面的に問題ない

2、どちらかといえば問題ない

3、どちらかといえば問題がある

4、全面的に問題がある

5、その他:

立憲民主党

その他:2.の回答をご覧ください。

日本共産党

全面的に問題がある

国民民主党

その他:今後党内で具体的な法案協議を行うことになると思います。

れいわ新選組

全面的に問題がある

【質問2】1の回答をどのような理由から選びましたか?

立憲民主党

議連の最終案について、立憲民主党としてまだ議論しておらず、その他とさせていただきます。

日本共産党

法案は、「子どもの出自を知る権利」を保障していません。生殖補助医療によって生まれた当事者は、「ドナーの性格や趣味など人となりを知り、自分の命が生み出された過程に“医療技術”だけでなく“人”が関わっている手触りを感じたい」「遺伝性の病気を防ぐためにも、事前に精子提供者がどんな病気にかかりやすいか知っておきたい」など、「出自を知る権利」の保障を求めています。イギリスやドイツ、ニュージーランドなどでは、「性別、身長、体重、目・髪・肌の色、子の有無、病歴、結婚の有無、宗教、職業、趣味、特技、提供理由、氏名、生年月日、出生地、住所、国籍、民族」などの個人を特定する情報を政府が保管し、開示に同意した人だけがドナーになれることを定めています。
日本も子どもの権利条約を1994年に批准しており、「出自を知る権利」の保障が求められています。ところが法案は、ドナーが開示に同意しなかった場合もドナーとなることができ、「身長、血液型、年齢」などの個人を特定しない情報に限られ、子どものアイデンティティ形成に重要な影響を与える情報を知ることができません。ドナーとなる際の要件として、イギリスやドイツ、ニュージーランドなどのように、個人を特定する情報も含めた子どもへの情報開示についての同意を必須とする、子どもが当該情報を開示請求できる年齢の引き下げ、親や法定代理人による代理請求を認めるなど、子どもの福祉の観点から、子どもの出自を知る権利を全面的に保障する制度が検討されるべきと考えます。

国民民主党

これまでも政務調査会や子ども子育て若者政策調査会にて、特定生殖補助医療法案のたたき台等について法制局や関係者からヒアリングを行うなど、党内で議論を深めてまいりました。超党派議連で法案化されたことを踏まえ、今後は党内で具体的な法案協議を行うことになると思います。

れいわ新選組

①子の出自を知る権利が不十分です。法案ではドナー登録時に年齢・血液型・身長等を開示可能情報として、子が成人に達して情報開示を求めた場合開示。それ以外の項目の開示については、ドナーが同意した項目のみ開示となっており、ドナーの意思によって左右されることになります。 附則に「公布後5年を目途として検討」規定が追加されましたが、既に欧米では20年前くらい(一番早いスウェーデンは1984年)から個人を特定できる情報開示に踏み切っており、日本でも個人を特定できる情報開示を承諾した人のみドナー登録している提供機関もあります。生殖補助医療の法整備が20年以上遅れた日本でようやく出てきた案が、20年前の状況にも遅れた内容ではお粗末すぎます。また、すでに個人を特定できる情報の開示に踏み切った国の事例を見ると、法施行直後は提供数が減少しましたが、復活しています。個人を特定できる情報開示がドナーの減少の原因となるとは言い切れません。 

 ②生殖補助医療は生命の誕生に直接かかわる技術であり、生命倫理に触れる出生前診断、着床前診断、ゲノム編集などを含む技術をどこまで、どのような環境の下で利用するのか、なし崩し的な拡大をどう規制するのかが問われてきます。しかし、本法案はそうした生殖補助医療技術にかかる倫理面(優生思想の排除)には一切触れず、生殖補助医療の提供体制(生殖補助医療の対象者と提供者、かかわる事業者の範囲と要件)と個人情報の取り扱いを定めるにとどまっています。

【質問3】当該法案において、第三者の卵子/精子提供を受ける不妊治療の対象が法律婚をしている者に限定されており、違反した医療機関には罰則が設けられていることについて。この規定は、子どもを迎え育てたいと考えている者のなかに法律婚をしない/できない者(※)がいるという実状にそぐわず、そのような者を合法的な治療から排除する効果を持つことが予想されます。このことについてどう考えますか?
(※)法律婚をしない/できない理由は様々です。たとえば、パートナーを持たない選択をする場合、パートナーが戸籍上「同性」とされる場合、パートナーと事実婚の関係性を選択する場合、などがそれにあたります。

1、全面的に問題ない

2、どちらかといえば問題ない

3、どちらかといえば問題がある

4、全面的に問題がある

5、その他:

立憲民主党

その他:4.の回答をご覧ください。

日本共産党

全面的に問題がある

国民民主党

その他:今後党内で具体的な法案協議を行うことになると思います。

れいわ新選組

その他:下記4記載のとおりです。

【質問4】3の回答をどのような理由から選びましたか?

立憲民主党

立憲民主党は選択的夫婦別姓制度や同性婚の法制化を求めていますが、現時点では実現されていません。それゆえ対象を法律上の夫婦に限ることは現時点の措置として是としつつ、事実婚夫婦や同性カップル、シングル女性も対象に含めることについて、法案成立後に検討を進め早期に結論を得ることが必要と考えます。

日本共産党

現行の民法が、選択的夫婦別姓制度も、同性婚も認めていないもとで、対象を法律婚に限定することは問題があると考えます。

国民民主党

生殖補助医療を用いて生まれるこどもの法的立場や知る権利の保障といった論点も含め、議論を行うこととなると思います。

れいわ新選組

〔⚠️引用者注:以下のれいわ新選組の回答にはトランスジェンダーについて不適切な用語法が含まれます。【以下、不適切な用語法の例を出します】例えば、出生時に割り当てられた性別が女性の方を「生物学的に女性」と呼ぶことは不適切な用語法です⚠️〕

一般論として法律婚と事実婚を区別すること、同性婚、トランスジェンダーのカップルを認めないことは問題であると認識しており、法改正を提起しています。

しかし、生殖補助医療では、第3者の精子・卵子の提供を受け、出産した女性を母親、その戸籍上の夫を父親とすると、「生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法特例法」で規定されています。そのため、現段階では事実婚、同性婚、トランスジェンダーのカップルの場合、民法特例法を改正しない限り、違法状態になり、法制度の整備がまず必要です。 その上で、男性同士のカップル、トランスジェンダーのカップルでトランスジェンダーの人が生物学的に男性の場合は、第3者の女性に代理懐胎してもらうことになり、これは法的にも(産んだ女性が母親)女性の権利の問題からも大きな問題があります。特定生殖補助医療法案でも求めていません。 また、女性同士のカップル、トランスジェンダーのカップルでトランスジェンダーの人が生物学的に女性の場合、第3者の精子提供を受けて出産し母親になることは可能ですが、こうした場合、精子提供者の親子関係を否定する法律がないため、精子提供者(生物学的父)が認知しようと思えば可能です。これは子どものアイデンティティにとっては重大な問題だと考えます。

以上の理由から、生殖補助医療の対象を法律婚以外に拡大するには、法整備が整わず時期尚早であり、また代理懐胎の禁止は妥当と考えます。

【質問5】その他、当該法案について主張したいことがあればお書きください。

立憲民主党

この法案は、生命倫理や生まれてくる子の福祉にもかかわる極めて重要なものと考えています。議連でも長く議論されてきたことに敬意を表しつつ、党としても丁寧に議論を進めてまいりたいと考えます。

日本共産党

無回答

国民民主党

無回答

れいわ新選組

本法案がつくられる元となった民法特例法の基本理念には、「生殖補助医療により生まれる子については、心身ともに健やかに生まれ、かつ、育つことができるよう」とあり、「健やかに生まれ」が障害や遺伝病を排除する優生思想につながるのではないかという強い懸念、反対が障害者団体や女性団体から出されましたが、修文されることなく成立してしまいました。
障害当事者議員を3名有するれいわ新選組は、生まれてくる子が病気や障害のないように、精子や卵子提供の段階から遺伝子の選別や着床前の受精卵診断が可能な生殖補助医療の技術に対して、現状では何の法規制もない。生殖補助医療など生命倫理生が問われる様々な課題について全体を管理・運営する「公的機関」設置の必要性を検討項目に入れるべきと提案してまいりました。 生殖補助医療をはじめ、生命倫理に触れる出生前診断、着床前診断、ゲノム編集などを含む技術をどこまで、どのような環境の下で利用するのか、なし崩し的な拡大をどう規制するのか、障害や遺伝性疾患のある当事者を含め、幅広い議論ができる機関が必要と考えます。


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