3ヶ月おきの男


わたしには、大切な、本当に大切な男友達がいる。

彼はわたしと同じ歳で、バイトで出会った。
もともと仲がよかった男友達の友達だった、彼と初めて出会った時のことをわたしは覚えていない。でも、二人で飲んで終電を逃し、そのままカラオケで彼が歌う下手くそなブルーハーツを聴かされ、夜が明けるまで歌い倒してから親友のようなお兄ちゃんのような兄弟にもにた特別な仲だ。

よく、男女の友情は成立しないと言われる。

わたしもそう思う。
男女の仲なんてものは、簡単に崩せてしまうものなのだということは嫌という程耳にしてきたし、実際にそんなことになったことだってある。
それでも彼との関係は、別で、別というかもはや私たちの間に男女もクソもないというか、そんな感じ。

ふとした時に彼の声を聞きたくなる。
彼の声は、優しく穏やかだ。
悲しいことがあった時、腹が立った時、嬉しいことがあった時、そういう時に彼の声を聞いていると自分の揺さぶられた感情がスッと綺麗に伸ばされるような整理されるような、不思議な感覚になる。

わたしの精神安定剤みたいな人。

久しぶりに電話越しに聞く彼の声は、やっぱり穏やかだった。
大学を卒業した彼は、実家に戻ってしまいもう2年は会っていないけれどこうしてたまに電話をして生存確認をし合う。ほとんどわたしからだけど。
電話越しでたばこを吸っているのが分かって、「おいしいですかい」と聞くと「ええ」と返された。
長生きしてくれよ、ホントに。

一方的にひと通りこの3ヶ月にあった出来事を話し終えて、最近飲んだ紹興酒がすごく美味しかったとこを話したらそんなに酒に強くないくせにへえ、飲んでみたいって言ってた。酒は好きだが、顔が赤くなるタイプだ。
今度東京に来た時は、絶対一緒に行こうといった。

行きたい服屋があること、新しいビーニー帽を買ったこと、バイクを買ったこと。年末にこっちに帰ってくる予定だということ。
この3ヶ月で彼にもたくさんのことがあったらしい。
まだ会えないけど、年末が本当に本当に楽しみになった。

彼の好きなレモンサワーの美味しい店と紹興酒の店に連れていってまたブルーハーツを歌ってもらおう。

電話を切ったわたしは自分でも分かるくらいにやにやしていた。

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