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映画談義『ダーティ・ダンシング』

ミスター・ペン「しかし、こう在宅時間が長いと夢中になれる趣味がないともちませんなあ…。作家だの絵描きだの、大作に夢中になれる方々の才能ってのが改めて羨ましいです。」

マダム・ジラフ「でも、ミスターも何か夢中になれるものあるんじゃなくって?」

「そうですなあ、読書と映画は大好きですが…どちらも鑑賞する一方でして…。クリエイティブなことは一切できないのが情けない…。」

「あらん、鑑賞してくれる者がいてくれるからこそ、作る側も張り合いがあるんですわよ。みんながみんなクリエイティブだったら、世の中うまく回らないんじゃないかしらん?」

「!!…なんて心強いお言葉!!さすがマダム、惚れ惚れします!」

「あら、適当に言ってみるものね、うふ。ところでお気に入りの映画はなんですの?」

「いやあ、たくさんありますですよ、そりゃあ。しかし何度も観たのは、この風貌で恥ずかしながら『ダーティ・ダンシング』ですな。」

「『ダーティ・ダンシング』?どんなのかしらん?」

「いやあ、すごい低予算のため、ストーリーやら設定やらはいかにもB級な陳腐な話なんですがね。とにかく、音楽とダンスシーンと、なんてったってジェニファー・グレイが本当にキュートでして。撮影時20代後半だったんですが17才のうぶな役を見事にやってまして。」

「まあ、すごいサバよみ。でもキュートならいいかしらん。」

「ええ、むしろ逆に実際は20代後半って方がしっくりこないくらいです。相手役のパトリック・スウェイジも美男子ではないんですが、さすが元々ダンサーだけに踊りに色気あるのなんの。」

「確かに色気って、見た目ではなくて仕草からにじみ出るものですものね。」

「さすがマダム、よくわかってらっしゃる。このスウェイジという男は、この時すでに30代半ばで、顔はオッサンながら20代の不良役をやってまして。でも何気ない手から漂う色気は、女性にはたまらないんじゃないかと思いますぞ、マダム。」

「ああん、わかるわあ。手が色っぽい男性は最強ですもの。いっそ顔なんか見なきゃいいんだから。」

「ええ、ええ。安っぽいストーリーもどうでもいいんです。とにかく、キュートなジェニファーと“色気ぷんぷんハンド”のスウェイジのダンスと、数々の曲がどれも最高にいいんです。そのうちの1曲はスウェイジの曲ですし、とにもかくにもクライマックスのダンスシーンと音楽はたまらんです!!」

「まあ、あたしは“色気ぷんぷんハンド”が楽しみだわあ、うふん。」

「しかし残念なことにこの数年後、ジェニファーは整形したら整い過ぎてしまい、キュートな顔の面影が全くなくなりましてね。友人にも気づかれない特徴のない顔になってしまったんです。」

「んまあ、そんなこともあるのねぇ。」

「ジェニファー本人が、しなきゃよかったと後悔したそうですから、それだけに残念しごくです。」

「あら~ん、じゃあ“色気ぷんぷんハンド”さんは?」

「パトリック・スウェイジはですね、私はあまり好みの作品ではないんですが、のちに『ゴースト』とい映画で人気がでまして。けれども50代で病気で亡くなってしまいました。」

「あらまあ、せつないわねえ。」

「ええ、それもあいまってなおさら二人が輝いてるこの『ダーティ・ダンシング』が最高ですよ!」

「うふん、そうね、いつか観てみますわね、うふふ。」

茶柱1月[1316]



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