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2回転で1周する電子のスピン

「自分は180度変わった」を言い間違えて「360度変わった」と言ってしまい、「元に戻っとる!」と突っ込まれて笑いをとる人もいます。しかし物理学では、360度回転しても元には戻らないものもあります。

電子や陽子、中性子などのフェルミオンを呼ばれる素粒子は、どの空間軸に対しても360度回転をさせれば、その波動関数や場の量にマイナス符号がかかることが知られています。このような性質はスピノルという数学的概念で記述されます。電子が持つこの性質は、多数の電子が集まったときに波動関数が完全反対称となるフェルミ統計性と結びついており、様々な物性を生み出す源の一つになっています。

ただ物理を知っている人でも、360度回転で出てくるそのマイナス符号は、絶対観測にかからないと誤解していることも散見します。それは波動関数全体にかかる位相因子に過ぎないと勘違いをしているからです。ところが電子と同じフェルミオンである中性子を用いると、実際にそのマイナス符号は物理として観測にかかります。

中性子に磁場を加えると、その中性子をぐるりと360度回すことが実験できます。フェルミ粒子である中性子の波動関数や場の量は元に戻らず、マイナス符号がかかります。

そこで次にような実験をしてみます。二重スリット実験で分かれた片方の中性子の軌道上だけに磁場を加えて、そこを通過する中性子を360度回転させます。すると下記のAやBの測定器が観測する干渉縞は、磁場をかけない場合の干渉縞からずれるのです。ぐるり360度回っても、元には戻らないのが量子力学の世界なのです。

ただ中性子を更にもう1回転させて、合計で720度回転にしてやれば、干渉縞は元の干渉縞に戻ります。マイナス1×マイナス1=プラス1というわけです。この性質は下記教科書の第12章12.2.1節でも触れました。



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Masahiro Hotta
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