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「短時間ならばエネルギーは保存しなくても良い」は間違い -エネルギーと時間の不確定性関係-
相対論では、時間と空間は切っても切り離せない概念であり、その2つは「時空」として統合をされています。それでもやはり時間と空間の属性は物理としては違っています。
時間に付随する量としてはエネルギーEがあり、空間に付随する量としては運動量pがあります。量子力学では粒子の運動量pと粒子の位置xのそれぞれの量子揺らぎΔpとΔxは不確定性関係ΔpΔx≥(ℏ/2)を満たすことが知られています。ℏは、換算プランク定数と呼ばれる、非常に小さな値をもつ自然定数です。
前世紀では、この不確定性関係と相対論を結び付けて、pをEに置き換え、xを時間tに置き換えた不確定性関係ΔEΔt≥(ℏ/2)が成り立つという主張も教科書などに書かれていました。そして湯川秀樹がノーベル賞をとった中間子論(原子核中の核子の間に中間子という粒子を媒介させて、強い引力である核力を説明する理論)の一般的な解説でも、この「ΔEΔt≥(ℏ/2)」に基づいて、間違った説明がなされてました。Δt程度の短時間ならばΔE≥ℏ/(2Δt)程度はエネルギーの値は揺らいでもよく、これは短時間におけるエネルギーの非保存を意味すると。そのため核子間を飛ぶ非常に重い中間子の質量エネルギーも、短時間ならばこのエネルギーの非保存性から供給されているという説明です。
しかしこの説明は間違っていることが現代では知られています。量子力学ですら、エネルギー保存則はどんなに短い時間間隔でも破れません。例えば力学的エネルギー保存則に出てくる全体のエネルギーの値は時間変化をいたしません。しかしその運動エネルギーは保存しないのです。位置エネルギーとの合計はいつの時刻でも一定なのですが、運動エネルギーだけに注目すると時間的に変動をしてしまうのです。昔の人は摂動論という計算方法で有限時間の量子的な反応を計算をしていましたが、そこに現れるエネルギーは、この運動エネルギーです。その値は時間変化をします。これを誤解して、多くの人は全体の力学的なエネルギーの保存則自体が破れていると解釈をしてしまっていたのです。
原子核内の中間子が含まれる量子過程でも、位置エネルギーの拡張である相互作用エネルギーを採り入れれば、全体のエネルギーは厳密に保存をしています。非常に大きな質量の仮想粒子が途中で飛ぶループ効果の過程でさえ、相互作用項を入れた全体のエネルギーは保存をしています。粒子の運動エネルギーだけを考えるから、短時間では保存をしていないように思えるのです。
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しかし前世紀の教科書でしか量子力学を学んだことがない方々の中には、未だこのことを知らずに、素粒子反応を記述する量子力学ではエネルギー保存則が破れていると説明してしまう人は多いのです。よくよく注意をして頂ければと思います。
ちなみに、湯川秀樹自身が「エネルギーと時間の不確定性関係により、エネルギー保存則が破れる」という主張をしたわけでなく、G.C. Wickや朝永振一郎らが、湯川理論が出てから後付けでそういう間違った説明を発明してしまったようです。
エネルギーと時間の不確定性関係に関する誤解や間違いについては、下記ブログ記事を参考にしてください。
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