クラウドとオンプレ、どちらが安全?
ITの世界では、「クラウド」と「オンプレミス(オンプレ)」という選択肢がしばしば議論されます。それぞれにメリットとデメリットがあり、「どちらが安全か」という問いに答えるのは簡単ではありません。
この記事では「結局は対策次第」である理由と、それぞれの特性を活かして安全性を高めるための考え方をまとめてみます。皆さんのビジネスがより安全で、成功へと導かれるための小さな助けになれば幸いです。
クラウドとは?オンプレとは?簡単に解説
まず、クラウドとオンプレの基本を押さえましょう。
• クラウド:サーバーやデータをインターネット上のサービス(例:Amazon Web ServicesやMicrosoft Azure)に置くこと。物理的なサーバーはサービス提供会社が管理し、ユーザーはインターネット経由でそのリソースを利用します。例えば、GoogleドライブやDropboxを使ってファイルを保存するのもクラウド利用の一例です。
• オンプレ:自社や自宅など、自分が管理する物理的なサーバーやデータセンターにリソースを設置する形態です。オンプレではサーバーやデータが手元にあるため、利用者自身がハードウェアやソフトウェア、セキュリティを直接管理します。
どちらも情報システムの運用方法として広く採用されており、それぞれに利点と課題があります。
クラウドのセキュアな面とリスク
クラウドのセキュアな面
1. 高度なセキュリティ機能
クラウドサービスプロバイダー(CSP)は、膨大なリソースを使って最先端のセキュリティ技術を導入しています。データ暗号化、アクセス制御、24時間365日の監視など、個人や中小企業が単独で実現するのが難しい対策が標準で組み込まれています。
2. バックアップと冗長性
クラウド環境では、データが複数の地域にわたり分散して保存されるため、災害時にもデータが失われにくい設計になっています。例えば、地震や火災が発生しても、他の地域に保存されたコピーが利用可能です。
3. 更新の自動化
セキュリティパッチやソフトウェアの更新が自動で行われるため、手動で対応しなくても最新の状態を保つことができます。
クラウドのリスク
1. 第三者に依存するリスク
サーバーが自社外にあるため、クラウドプロバイダーがセキュリティ侵害を受けた場合、データが流出するリスクがあります。過去には、クラウドサービスの大手でさえサイバー攻撃を受けた事例があります。
2. インターネット接続への依存
クラウドサービスの利用には安定したインターネット接続が必須です。接続が不安定な場合、業務に支障をきたすことがあります。
3. データ管理の不透明さ
ユーザーが直接データの保存場所を管理できないため、データがどの国のサーバーに保存されているのかが不明確になる場合があります。一部の業界や国では、データの保存場所に厳しい規制があるため、注意が必要です。
オンプレのセキュアな面とリスク
オンプレのセキュアな面
1. 完全なコントロール
サーバーが手元にあるため、データやシステムの管理をすべて自社で行えます。物理的なアクセスも管理しやすく、「このデータは絶対に外部に出さない」という要件を厳格に守ることができます。
2. データの場所が明確
データがどこに保存されているかを完全に把握できるため、法規制や業界基準に基づいた管理が容易です。例えば、医療機関や金融機関など、特定の規制に準拠する必要がある場合に適しています。
3. インターネット依存が少ない
クラウドと異なり、オンプレはインターネット接続がなくてもシステムを運用できるため、接続障害の影響を受けにくいのが特徴です。
オンプレのリスク
1. 管理負担の増加
サーバーの設置、メンテナンス、セキュリティパッチの適用など、すべてを自社で行う必要があります。これには専門的な知識や追加のコストが伴います。
2. 災害時の脆弱性
サーバーが物理的に一箇所に集中している場合、地震や火災などの災害が発生した際にデータが失われる可能性があります。バックアップを取る仕組みを自社で整備する必要があります。
3. セキュリティの格差
中小企業や個人では、クラウドサービスプロバイダーが提供するような高度なセキュリティ対策を同じレベルで実施するのは難しい場合があります。その結果、システムが攻撃にさらされやすくなるリスクがあります。
どちらが「安全」なのか?結論は「対策次第」
クラウドとオンプレにはそれぞれセキュアな面とリスクがありますが、どちらが安全かを一概に決めることはできません。最も重要なのは、それぞれの選択肢に適したセキュリティ対策を講じることです。
クラウドを安全に使うためのポイント
1. 信頼できるプロバイダーを選ぶ
認証や規制に準拠したサービスを提供するプロバイダーを選びましょう(例:ISO27001認証取得)。
2. アクセス制御を徹底する
ユーザーごとにアクセス権を設定し、不要な権限を与えないようにします。多要素認証(MFA)の導入も効果的です。
3. バックアップ戦略を強化する
クラウド上のデータも定期的にバックアップを取ることで、万が一のデータ喪失に備えられます。
オンプレを安全に保つためのポイント
1. 物理的セキュリティを強化
サーバールームの施錠や監視カメラの設置など、物理的な安全性を高めることが重要です。
2. セキュリティパッチを適用
システムやソフトウェアが常に最新の状態になるよう、定期的にセキュリティパッチを適用することが不可欠です。これにより、既知の脆弱性を悪用されるリスクを減らせます。
3. 災害対策を計画する
自然災害や停電に備えて、データのバックアップや冗長化(複数のサーバーでデータを保存)を導入しましょう。また、定期的な復旧テストを行うことで、いざという時の対応力を高められます。
4. 内部不正への対策
オンプレでは内部の人間が直接サーバーにアクセスできるため、不正防止のためのログ管理やアクセス監視を導入することが重要です。
ビジネスに合った選択をするための指針
クラウドとオンプレのどちらを選ぶべきかは、ビジネスの性質や目的、予算によって異なります。以下の視点を考慮してみましょう。
クラウドが向いている場合
• スタートアップや中小企業で、初期投資を抑えたい。
• グローバルに展開しており、世界中でデータを利用する必要がある。
• IT専門スタッフを多く抱える余裕がない。
• 災害対策や冗長化の負担を軽減したい。
オンプレが向いている場合
• 高度に規制された業界(例:医療、金融、政府機関)で、データの物理的な場所が重要。
• 業務上、インターネットへの依存を最小限に抑えたい。
• 自社で完全なシステム管理を行いたい。
• 特定のカスタム要件やレガシーシステムとの統合が必要。
最近では、クラウドとオンプレを組み合わせたハイブリッド型の導入も増えています。これは、重要なデータやアプリケーションはオンプレで管理し、その他の部分はクラウドで運用する方法です。
例えば、日常的な業務アプリケーションやストレージはクラウドに依存しつつ、顧客情報や財務データなどの機密性が高いデータはオンプレで管理することで、それぞれの利点を活かせます。
まとめ:クラウドとオンプレ、どちらも「安全」にするのはあなたの手にかかっている
クラウドとオンプレのどちらが安全かを決めるのは、単なる選択ではありません。重要なのは、自社のニーズを正しく理解し、それに応じたセキュリティ対策を講じることです。「クラウドだから安全」「オンプレだから安心」という思い込みに頼るのではなく、それぞれのリスクを理解し、適切に管理する姿勢が求められます。
この議論で一番大切なことは、「システムや技術そのものが安全を決めるわけではない」ということです。どんなに優れた技術であっても、それを守る人間の知識や意識がなければ、その効果を発揮することはできません。
この記事を読んでいただいた皆さんが、自分のビジネスにとって最適な選択をし、それを安全に運用するための一歩を踏み出していただけたらと心から願っています。大切なのは、リスクを正しく理解し、前向きに対策を講じること。そして、クラウドでもオンプレでも、選んだ道があなたのビジネスを成功へと導く力になると信じています。
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