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量子情報理論・量子測定理論の錬金術

堀田さんの書籍「入門 現代の量子力学 ~量子情報・量子測定を中心として~」(以下単に「書籍」という。)には、

たとえ未知の二準位系であろうとも、任意のユニタリー行列がその系の実験で実現可能な物理操作に対応するということを、量子力学という理論では前提にしている。

と書かれている。そこで、鉄の原子1個の状態$${|鉄\rangle}$$と金の原子1個の状態$${|金\rangle}$$からなる二準位系を考えよう。「任意のユニタリー行列がその系の実験で実現可能な物理操作に対応する」ということは、鉄を金に変える物理操作が存在するということである。つまり、錬金術があることを量子力学は前提にしているということになると思われる。

私は錬金術が存在することを前提として特段問題があるとは思わない(錬金ができないのは化学の話で物理ではない)が、書籍の読者には疑問を感じる方はいるだろうと思われる。

先の引用の内容は、特段通常でない仮定ではなく、一般の系について、小澤さんの量子測定理論入門では

公珊M4(ユニタリ実現可能性).任意の測定過程 $${(\mathcal{K},\sigma, U, M)}$$に対して,式 (43)を満たす装置$${\mathrm{\bm{A}}(x)}$$が存在する.

と公理として導入されていると思われる。そうして良い理由は、

上の仮説は次のように正当化される.公理Q1から,任意の自己共役作用素がある物理量に対応し,任意の密度作用素が状態に対応する.更に, Stoneの定理[13]により,原理的に任意のユニタリ作用素がある物理量で生成される時間発展として実現できる.従って,任意の測定過程は,原理的に(与えられた単位系と,物理系を数学的に記述する上で与えられたある実験精度の限界のもとで)実現可能である.

と説明されている。すなわち、量子測定理論でも、錬金術は可能ことが前提とされていると思われる。

この公理に対応する堀田さんの書籍の記載は、

たとえ未知の$${N}$$準位系でも、任意の$${U^{(N)}}$$に対応する物理的な操作は実現可能だと考えよう。ただしこの前提は、飽くまでも各系において、実験で検証されるべきことである。それは量子力学自体の検証に繫がっていく。

であろう。

量子情報理論も量子測定理論も、錬金術が可能なことを前提としているように私には思われる。

書いてしまったので公開するものの、本稿はほとんど意味のない駄文である。

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