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量子状態トモグラフィ法は実現不可
量子状態は、Wikipediaによると、
量子論における状態とは「各物理量$${ A,B,\ldots }$$ について、それを測定した時に得る測定値の確率分布$${ P(a),P(b),\ldots }$$を与えるもの」を指す。
とされている。そして、記号$${\rho}$$で表されることが多い。
しかし一方で、量子状態については、量子複製不可能定理
任意の未知の量子状態に対し、それと全く同じ状態を複製をすることはできない
が知られている。未知の量子状態$${\rho}$$の量子状態、すなわち確率分布$${ P(a),P(b),\ldots }$$を知ろうと思えば、同一の$${\rho}$$に対して多数の実験を行う必要がある。確率分布を近似的にでも求めようと思えば、複数回の実験が必要なことは明らかだろう。
しかし、量子複製不可能定理から、未知の量子状態$${\rho}$$を複数用意することはできない。複製ができないのであるから、未知の量子状態$${\rho}$$は実験前に存在する一つのみである。物理量を測定する実験を行うと射影が起こるので、量子状態$${\rho}$$はもはや無くなる。
というわけで、未知の$${\rho}$$の量子状態、すなわち確率分布$${ P(a),P(b),\ldots }$$が実験でわかることはない。
堀田さんは、
直交座標系を任意固定して、その各軸方向のパウリ行列に対応する以下の3つの物理量を考えましょう。するとその3つの期待値を実験で測定することで、元の量子状態ρは一意的に下記のように決定されます。このように実験から量子状態を同定することを、量子状態トモグラフィと呼びます。
と量子状態トモグラフィで未知の量子状態がわかる実験が可能なような記載(「実験から量子状態を同定する」という記載)をしているが、そんなことは量子複製不可能定理からありえない。量子状態トモグラフィは、未知の量子状態を知るための実験方法としては実現性がないのである。
実験で可能なのは、あらかじめ量子状態がわかっているときにその量子状態が予言するとおりの確率分布の実験結果になるかどうか確認することだけである。すなわち、あらかじめ確率分布がわかっている前提でその確率分布を確認することだけである。