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いずれ訪れるもの

川岸の際に立つ木の根っこが露わになっている。その複雑に絡み合う根の下を安らぎの場所としてつがいと思われる二匹のカモが静かに浮いていた。その姿を見て遠い未来のことを考えていた。いずれは訪れる死。人間にも他の動物にも等しく訪れるこの現象を、他の動物たちはどのように受け止めているのだろうか。人間と同じく恐れているのだろうか。ある話を思い出した。


「オオカミに追われたカリブーはとうとう疲れ果て、死を受け入れるようにその場に座り込んだ。そしてオオカミに食べられるのを静かに待っていた」


死とはそんなに簡単に受け入れられるものなのだろうか。恐い、つらい。このような言葉は全て人が感じたものから生まれたものだが、そういった感情を動物たちはどう感じているのだろうか。それは分からない。人が恐れる死であっても動物ごとに捉え方は違うのではないだろうか。


「オオカミがカリブーの子供を次々と殺して走りまわっていた。しかしそれはオオカミの存在を低くするものではないだろう。人間の狭い善悪の世界の問題ではない」


いつの日かカモの夫婦にも別れが訪れるだろう。そちらかが先に逝くことは避けようのない事実なのだ。そのとき、残された鳥は何を思うのだろうか。

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