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【インセプション】恋人と夫婦

アマプラにあるレオ様の映画全部見よう大作戦。映画で発せられる最初のセリフが日本語なので「吹替と間違えたか?こちとらレオ様のお声が聞きたいんだが?」などと思うが、これは作中で観客が分からなくてもいい外国語として日本語をしゃべっているだけなのであわてる必要はない。


言わずと知れた大ヒット映画インセプション、2010年公開。レオナルド・ディカプリオケン・ワタナベこと渡辺謙。監督はオッペンハイマーのクリストファー・ノーラン。サスペンスやSFの作品に強い監督らしいです。

あらすじ

渡辺謙(サイトー)はありあまるほどの金と権力を持つ大物実業家。敵対企業の御曹司に父親が築いた会社を崩壊させるアイデアを「インセプション」植え付けることをレオナルド・ディカプリオ(コブ)に依頼する。コブ一行に加えてなぜかサイトー自らお出ましのチームでミッションに挑む。自由自在に「設計」できる「夢」の中に入り、その夢の中で眠ることでさらに夢を見ることを繰り返し、複数の階層を作る。夢の中で死ねば現実にもどるが、今回のミッションでは強い鎮静薬を使って眠っているので死ぬと「虚無」に落ちる(廃人になるらしい。いくら相手は巨大コングロマリットとはいえたかが私企業、なんでサイトーそこまでのリスクを取ってまでついてきた?)という緊迫感にさらされて複数の階層で同時に戦闘、最終的にはすべての階層でタイミングをはかって「キック」(強い衝撃を与えて三半規管に揺さぶりをかける、水に飛び込むのが一番手軽)で目覚めて現実にもどらなくてはならない。

コブの動機

意のままに変形する市街地、上の階層で自由落下することによって無重力になったホテル、ワクワクするSFアクションばかり目を引き、あまり意識されないのがレオナルド・ディカプリオ演じるコブが命がけのミッションを引き受けた動機。なんかやたらと美人で怖い女の人出てきてレオ様の邪魔するけど何?最後子どもに会えてよかったけど、そういえばレオ様なんで子どもに会えなかったんだっけ?

要人の夢に侵入して機密情報を「エクストラクト」抜き取る産業スパイとして生計を立てているコブ(ドム・コブ)とその妻モル(モル・コブ)は夫婦で夢の中で理想の生活を送る。その生活はなんと50年間(!)にも及んだ。
途中でモルが現実にもどるのを拒否したので、なんとコブはモルに「ここは現実ではないから自殺することで上の階層に移動して現実にもどらなくてはならない」とインセプションする。
それで現実にもどってからもモルは「現実にもどらなくては」という強迫観念にさいなまれ自殺(当然
モルはコブのことを愛していたので、コブと一緒に現実にもどりたい。ということでコブも死んでくれるように、モルは自殺するときに前もって弁護士に夫に殺されそうと訴えておく()精神科医3人が揃ってモルの精神は正常だと診断し(!?)コブは妻殺しの犯人として指名手配の憂き目に。(モルあまりにも周到すぎないか)幼い娘と息子と引き離され国外逃亡を余儀なくされる。
そんなこんなで、コブは国外でやくざな商売をつづけながら逃亡生活を送っていたのだが、どうしてもアメリカに帰って愛しい我が娘と息子に会いたい。ありあまる金と権力の持ち主サイトーにとってコブの犯罪歴を消すのは造作ない。
というわけであとは映画の時系列に戻る。コブはモルにインセプションして自殺の原因を作ったという強い罪の意識を潜在意識に抱えているので、夢にモルが出てきて任務の邪魔をする。子どもに会いたくてたまらないので子どもの姿も夢に見る。

ここから個人的トンデモ理論

モルの当然の帰結と、コブの頑強すぎる精神

この夫婦、なんと50年間一度も現実の子どもに会いたいと思わなかったわけです。
インセプションって父と子の物語に見えなくもありません。コブは子どもに会うためにがんばるし、御曹司ロバート・フィッシャーは父の愛と承認を切望しています。モルコブ夫妻は50年間子どもほっといて自分たちだけでデートするし、ロバートは失望されたまま父親と死に別れ自分の願望を夢の中で叶えるしで、一見、父子愛の存在は希薄です。しかしコブはラストで子どもとの再会を遂げ、ロバートは自分の中で父親に愛されていたという感覚を得て折り合いをつけます。なんとなく父と子の物語って気がしてきます。

ここでモルです。インセプションが一応は父と子の話だとして、同時にコブとモルのラブストーリーでもあります。劇中でコブが作り出したモルの姿はずっとコブにぞっこんのコブの理想の恋人です。子どもの立場だったらママにはコブと一緒にいたいばかりじゃなくて一度ぐらいフィリッパとかジェームズとか子どもの名前を呼んでほしいところです(呼んでましたっけ?)

そもそも二人ともあまりにも所帯くささがなさすぎる。モルが映画に初登場したとき、モルとコブの間に子どもがいると思った人は少ないでしょう。二人からは子どもとの具体的な触れ合いがほとんど感じられません。

コブの潜在意識のモルはコブにぞっこんです。二人は最後まで恋人関係に取り残されています。コブによるインセプションを抜きにしても、そもそもモルは夢の世界に留まることを選んだのです。子どもが待っている現実より夢の世界を選んだわけです。不用意に現実に連れ戻されたモルが自殺するのも当然です。むしろどんなに深い階層の夢にもぐっても現実にもどって子どもを愛せるコブの精神が強すぎます。

つまり、コブとモルは理想の恋人関係でありながら、コブだけが理想の父親でもあるわけです。そんな都合の良いことあるかいな。そんなわけで映画を見た人は、モルがコブの邪魔をする理由とか、コブが子どもの会えない理由とかが頭に残らないわけです。夢の階層を上に下にと移動するSFの情報量が多いので、モルとコブの話は気にしなくても十分楽しめますし。

トンデモ未来予想

これ現実だったら実はモルを支配下において夢の世界に留まらせていたのはコブで、成長した娘に亡き妻を重ねてまたなんかインセプションして自殺に追い込みそうですよね(ド偏見)

ラストシーンどっち問題

現実派です。映画の中でここにどうやってきたのか思い出せなかったら夢だというくだりが何回かありました。ラストシーンではコブが目覚めて空港に着いて入国し義父のマイルス教授におかえりと迎えられて家に帰るまでの流れがしっかり描かれています。

結局ラストシーンは現実でも夢でも、コブがトーテムを気にしなくなったことが重要という話もネットで見かけました。


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