短歌のことなんて知るか
山城周です。
鳥居からのバトン、
短歌って変じゃないですか? どうでもいい話をするには長すぎるし、物語をやるには短すぎる。やましろさんは短歌を作るとき何を考えているんだろう。この連作はこういう話にしよう、とか考えたりする? それともこんな話には興味がないかな?
が、回ってきたときの私の第一声。
「バトンむずかしいわ!!!!!!」
ついに短歌のことを話す回が来てしまったかよ……って絶体絶命ヒーローの気持ちです(物語を使って喩えています)。ここは物語ではなくエッセイなのでハイパー魔法アイテムを与えてくれるキャラクターはやって来ない。
いや短歌って文芸の中で一体何者なのですか、みたいなのは誰かが書いてんだろうじゃんきっと○○的見地における○○論、みたいなので。私は文学を研究したわけでもないし文学論も全然読まないのでそのあたりはよく知りません。
ついでに言うと歌人と短歌の出会いのお話を面白く読んだ経験も殆どない。だから歌人としての私が短歌の話すんの、面白いのか?という疑念が拭えないよ。
こんなときには引用から話を広げるのがやりやすいです。
鳥居の記事に対してタイムリーなツイートがあった。
どうして短歌に物語を持ち込むのか、と(訝しげに)聞かれることがしばしばあるのだけど、もう、無意識レベルでそうなっているとしか言いようがない。むしろ、どうやって物語抜きでうまく生きていけるの?という気持ち。
石川美南さんが「(訝しげに)」とつけているからには、短歌と物語は相反するものと捉えることが(石川さんに質問する人の中には)多いってこと?
石川美南さんの歌は確かに「物語」を上手に短歌に取り込んでいる。そこはまじすごい。だから読んでて気持ち良さが圧倒的にある。
その質問をした人たちの訝しさとは別に、鳥居が言ってたような、「物語」の人を救ってしまう性みたいなものが石川さんの歌にはあって、良くなくない?とも疑っているが、本筋から逸れるので置いておく。
なんで短歌と物語が相反する、ぶつかるって思うんだろうね?
「物語をやるには短すぎる」から?
短歌とは1人の主体が立ち現れるべき文芸で、1人の主体とは、物語そのものではないから?
短歌のこと全然わかんねえ。
わかんねえけど、こんな話には興味がないかな?って訊かれて、興味ないんで、こないだ分籍した話しますわ、とは筆を進められない。嘘はつきたくない(私が嘘をつきたくない話は後日このnoteで読めるようになります)。興味はなくはない。
私なりに短歌の話をします。
私は物語も好きだしどうでもいい話も好きですよ。人間が好きって言ったじゃないですか。人間が生み出すものは何にせよ興味があります。
でも物語よりは、語りの方が好き。ストーリーではなくナラティブってことです。
ストーリーとナラティブは何が違うのか?
ストーリーは桃太郎みたいなやつだけど、ナラティブというのは本人の語りです。1人の人間を構成するのはストーリーじゃなくてナラティブじゃない?っていうのが私の考えです。
ナラティブによって人は自分が何者か分かるし、何者か分かることでナラティブを語れる。相互作用があるんです。もしかして短歌ってナラティブなのかな。
全部の短歌をナラティブだ!って言えるわけじゃない。でも、どうでもいい話としては長い、物語としては短い、にはそんなにノレない。もっと色々できるはずだから、短歌で。
だからナラティブもできるよ。
短歌という詩型の中に、どうでもいい話を詰め込みまくってもいいし、物語を入れ込んでもいいんじゃないですか。二択じゃないから。
短歌って変じゃないし、でも変な短歌作ってもいいよ。
私は短歌の長さはちょうどいいって思ってやってる。韻律とかいうやつもイケてる(山城さんって韻律自由派ですねみたいに言われたこともあるので、韻律好きなのに韻律音痴の可能性はある)。
自由律短歌をめっちゃやった土屋文明が「自由律必ずしも自由ではなく、また定型律必ずしも不自由ではない」みたいに言ったらしいけど、この詩型の中にこそ私が見出している自由な世界のひとつがある。私はそれを美しく思う。
だから嫌なんだよ。短歌の話って定型いいよね短歌大好きみたいになっちゃうから。
でも短歌のこと大好きだよ。
私は短歌を作るとき、「私の短歌で全員殺す」と思いながら作っています(この話も前述の嘘をつきたくない話にも出てきます)。殺し方ってやつがあるから、この連作はこういう話にしてこうして殺そう、も考えながら作っています。その話はまたいずれ。
次回は吉田さんではなくラブフェアリー様が書くんだっけ。ラブフェアリー様にはtwitter経由で既に質問をしたので、吉田さんに質問をしますね。この前みんなだいすきジュディス・バトラーの講演会行ったら内容とか理論より先に「美しい~!」が感情として想起されてしまいました。私はルッキストですか?
この記事は怪獣歌会アドベントカレンダー13日目の記事です。折り返し地点!
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