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…終わったのよ。私たちの不幸が
劇中のセリフです。
公開して間もない映画【ゆきてかへらぬ】を観てきました。
このタイトルで、ピンときた方は純文学、特に文豪と言われる方の作品に関心が高い方なのかもしれません。
さっそく映画の《作品紹介》をします。
駆け出しの女優、長谷川泰子は、不世出の天才詩人、中原中也に出逢ってしまった。中也に出逢うということは、後に日本を代表することになる文芸評論家、小林秀雄に出逢ってしまうことだった。
さて、映画のタイトルは詩人・中原中也の1篇「ゆきてかへらぬ」から。
私自身は”ゆきてかへらぬ”にはピンとは来ず
中原中也と言う詩人の描かれ方に興味がわき観にいきました。
そのため、なんとなく程度の知識しかなほいため
映画内の言葉が事実か、付け加えられたものかは判断できておりません。
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そんな人間が映画を観た結果•••
古きかをりと理解しきれない消化不良が残る。
大正時代であり、そしてメインとなる人物の3人の内2人は言葉に長けた詩人と文芸評論家がゆえに、言い回しがまどろっこしい。
しかしながら、詩的な表現は世界観的には合っており、古き時代を感じさせる一端にはなっている。
一方で、興行映画として観た時、現在の映画としては評価が難しい作品だと感じざるを得なかった。
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気になったところ
✔主役は1人?
(主演:広瀬すずさん=長谷川泰子となっているが、本作のテーマでもある奇怪な三角関係を表現するために主役は1人ではなく3人のように感じる)
✔長谷川泰子を演じる難しさ
(演技の上手い下手ではなく、映像であるがゆえに広瀬すずさんの愛らしい顔立ちがミスマッチだった。男が惚れ込んでしまうだけの映画女優であれば適役だったに違いないが、長谷川泰子という、人を惹きつけ、時には不幸さえも引き寄せてしまう難解な人間には適切ではなかったように感じる)
✔史実的ゆえに波がない
(文学的に凪いだ海のような3人の日々はこの作品の魅力であると理解しつつも、長く感じてしまった。史実的な表現として合っているがエンタメとしては物足りなさがある)
✔すべては受け取り方次第
(言い回しがまどろっこしく、口調にクセがある。3人それぞれの言動について明確な答えは出されることはない)
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良かったところ
✔大正時代を感じる古めかしい表現
(華やかではないが、丁寧に描かれているため古き時代を感じることができる)
✔長谷川泰子のファッションコレクション
(大正ロマンなファッションはもちろん、映画女優の長谷川泰子の、映画衣装含めたファッションは解説付きでパンフレットに載せてほしかった)
✔中原中也の再現度
(中原中也と言えば浮かぶ顔写真に、木戸大聖さんの再現度が高い)
✔小林秀雄のインテリ美男子たるゆえん
(岡田将生さん演じる小林秀雄はくやしく感じるぐらいインテリ美男子であった)
✔エンディングで映画PVつくってほしい
(キタニタツヤさんが歌うエンディング「ユーモア (“You More”) 」〜エンドロール、曲入りがとても綺麗で美しかった)
もし、鑑賞されるなら
▶いまどきの明快さ、わかりやすさはない
▶共感できる部分は少ない
▶エンタメ要素は少なく、史実要素に重きを置いている
な作品だと個人的に感じました。
同じ時代を生きた太宰治を題材にした「人間失格 太宰治と3人の女たち」もありますが、魅せ方が真逆です。
描く人物も違えば変わるのは当然ですが、比較すると真逆だと感じました。
派手な太宰治映画か、純朴でけったいな中原中也映画か。
このワードで、自分の好みに合う合わないを判断していただければと思います。
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最後に
エンタメ映画として気になったところは多々ありますが、
純文学や文豪たちが好きな方には良い作品だと思います。
ネタバレにはならないと思いますが…
この記事を書きながら映画予告の確認して気づいた
男と男。というキーワードについて
一部の方しか気にしていないと思いますが
直接的表現はありません。