ボイコネ用ボイスドラマ「一葉の詩が綾なす出会いは。」第三話「ファーストコンタクト」
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0:-本文中、ト書きの部分は「一葉」役の方がお読みください-
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0:緩みきった教室の空気が、突如冷やされ、収縮したような緊張感を帯びます。
0:教室の引き戸が開かれて、藤澤先生が入ってきたから。
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藤澤先生:ほら、席に着いてー…えっと、深山さん、号令をお願いします。
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一葉:起立!礼!
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0:ああ…反射でやってしまった…。
0:「既成事実」ってこうして作られるのね…。
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藤澤先生:おはようございます。えー、ホームルームの前に、編入生を紹介します。
藤澤先生:椎名さん、どうぞ。
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0:先生がホワイトボードに名前を書きました。
0:そして、入ってきたのは、小柄な女子生徒。
0:あー…ギクシャクしてるし、右手と右足が一緒に出てる…。
0:クラスがざわつきます。一体何についてざわついてるのやら。
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0:先生に促され、椎名さんは自己紹介を始めます。
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綾子:はっ、は…はじめ、まして…ししし椎名っ、綾子、です。
綾子:よよっ、よろしく、お願いしまっす!!
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0:教室に入ってきた時から挙動がおかしかったけど…噛みすぎだよ…。
0:めちゃくちゃ上がってるのね…椎名さん。
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0:目の前に座っている怜央の肩が小刻みに震えてる。
0:笑ってやがるコイツ。失礼な。
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藤澤先生:椎名さんの席は、あそこの深山さんの隣ね。
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0:そういえば…私の席の隣、誰も座ってない!
0:まさかの丸投げ!?噓でしょう!?
0:ここまで仕組まれてた、って言うの!?
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藤澤先生:それから、色々と係を決めるけど、その前に学級委員長を決めるね。
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0:終わった…。
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藤澤先生:深山さん、お願いできますか?
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0:否応、なし…。
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0:-間-
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0:ホームルームが終わった。私の、いや、私の隣の席に、主に女子が殺到している。
0:曰く「椎名さん、どこから来たの!?」「椎名さん可愛いね!」。
0:「椎名さん、趣味は!?」「椎名さん可愛い!」。
0:「椎名さん、好きな食べ物は?」「椎名さん、めっちゃ可愛い!」。
0:「椎名さん、好きな哺乳類は?」「椎名さん、マジ可愛い!」。
0:いや、可愛い言いすぎでしょ…あとなんで哺乳類限定で質問してるの…。
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0:私は半目の状態で、ちらりと椎名さんを見る。
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0:案の定、椎名さんは目を回しながらあわあわしている…。
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0:本当にもう…。私は机を「ぱーん!」と叩くと立ち上がります。
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一葉:はいはい、ちょっとみんな、ストップストップー!
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0:あ…やってしまった。ええい、ままよ!
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一葉:椎名さん困ってるよ!はいはい並んで!一人一問ずつね!
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0:幸いにも、理解ある?クラスメートは列を作って椎名さんに質問していく。
0:はぁ…私は一体どうしてこういう…。
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0:一通り列が解消されたころ。
0:くいくい。
0:誰かが私の制服の袖を引っ張っている。
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0:椎名さんだ。
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綾子:あっあの、委員長さん…?
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一葉:椎名さん?何?どうしたの?気分でも悪い?
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綾子:いえ、あの…さっきは、ありがとう、ございました…。
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一葉:へ?あー!いや、あのね、あれはね、違うの!
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0:椎名さん、きょとんとしてる…あれ?
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綾子:ちがう…?
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怜央:あー、椎名さん、こいつ委員長体質なんだよね。
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一葉:怜央?
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0:余計な事言うな、とアイコンタクトを飛ばしますが…。
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怜央:だけどこいつ、委員長本当はやりたくないんだってさ。な、委員長さん?
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綾子:え、そうなん、ですか…?
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一葉:え、あお、ぅ、えと、ね?
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0:ん?んん?
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綾子:でも、でも、すごく、かっこいいな、って…!
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一葉:へ?あ、はい。ありがとう、ございま…す…?
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0:怜央、あんたその笑い方やめれ。
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怜央:あ、自己紹介まだだっけ。俺、坂口 怜央。怜央でいいよ。
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綾子:あっ、椎名 綾子です。よろしくお願いしますっ。
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一葉:深山 一葉、「ひとは」、でいいわ。椎名さんはあだ名とかあるの?
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綾子:えと、前の学校では「あーや」って呼ばれてました。
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一葉:「あーや」!かわいい!私も「あーや」って呼んでいい?
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綾子:はい!よろしくお願いします!委員長さん!
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0:やっと椎名さんがほころぶような笑顔で話してくれたぁ…。
0:え?あれ?私「ひとは、でいい」って言ったよ…ね?
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怜央:あっははははは!委員長、さん!!だって!!
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一葉:怜央うっさい!
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綾子:ひぅっ!
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一葉:え?あーや?
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綾子:すす、すみません!!びっくりしちゃって…!!ごめん、なさい…。
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一葉:ううん、私こそいきなり大きな声出しちゃって、ごめんね!
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綾子:いえ、えと、大丈夫、です!ご心配、おかけして、すみません…。
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0:やっと笑ってくれたと思ったのに…。
0:これはまた、やらかしちゃったかなぁ…。
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0:-まだ、続く?-
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