声劇用台本「なぞなぞ文芸部!」(0:3:1)
舞台は某高校の文芸部。
田島はる、印鹿(いんか)マヤ、木乃伊(きのい)みらの3名が文芸部の課題に取り組んでいた。
※台本をご利用になる際は、Xのポストにてお報せくださいませ。
強制ではありませんが、反響を知りたいのと、
お伺いできる限りお邪魔して聴かせていただければと思いますので、よろしければ。
特に商用利用の場合において、著作権は放棄していません。無断での転載はお断りします。
登場人物
はる・・・田島はる。1年生。インドカレー大好き。語尾などの調整で男性が演じてもOKです!
マヤ・・・印鹿マヤ(いんか マヤ)。1年生。ギャルっぽい。
みら・・・木乃伊みら(きのい みら)。1年生。お嬢様。
部長・・・性別不問。部長。3年生。
以下本編。
0:某学校の放課後、文芸部室に集まる1年生3人。みらの謎かけに答えられない「はる」と「マヤ」。
はる:「朝は4本足、昼は2本足、夜は3本足・・・んー?」
マヤ:「新種のUMA?」
みら:「分からなくはありませんが、昔のなぞなぞですわよ?何でそうなるんですの・・・全然違いますわ。」
はる:「成長すると脚が抜けるタコか何かとか・・・?」
みら:「そんな生き物がいたら新種認定確実ですわね。しかも最後脚が生えてるじゃありませんか。おかしいでしょう?違います。」
マヤ:「カメ?」
みら:「足を出したり引っ込めたりしてるだけじゃありませんか!違います!」
マヤ:「いー!!!分からん分からん!!!スフィンクスめ!」
0:マヤがはるをぽかぽかと殴る。
はる:「ちょ!やめてよマヤちゃん!非暴力!不服従!!」
みら:「正解しないとそのスフィンクスに食べられちゃうわけですわ。」
はる:「いやだなー・・・エジプト怖いなぁ・・・」
みら:「怪談話みたいに言わないでくださいな。正解すれば何の問題もありませんわ。」」
マヤ:「いやいや、スフィンクスに食べられるってホラーでしかないし・・・。こう、ぐっちゃぐっちゃ・・・。」
はる:「シンプルに怖い!やめてよ!!」
みら:「さ、雑談はこの辺にして、作業しましょう!」
0:文芸部室の引き戸が開いて部長が入ってくる。
部長:「おつかれさまー!お、3人揃ってやる気だねー!やる気のあるのはいいことだよ。
部長:って・・・木乃伊さん、それ何?」
みら:「へ?何とおっしゃいますと・・・?」
部長:「それよ、それ!変わった紙とペン使うのね・・・?」
みら:「部長、ご存じないのですか?パピルスと葦(よし)のペンですわよ?『バク転市場』で取り寄せたのですよ?」
部長:「ピクルス?」
みら:「ぱ・ぴ・る・す!ですわ!部長、わざとベタに間違うのはやめてくださいまし!」
はる:「あはは・・・」
マヤ:「そだ、みら、さっきのなぞなぞ、部長に出してみたら?」
部長:「なぞなぞ?」
みら:「先ほどそちらのお二人になぞなぞを出していたのですが、
みら:『朝は4本足、昼は2本足、夜は3本足、これは何?』という問題ですわ。」
部長:「ふーむ・・・。あ、今週の課題、みんなやっといてねー。」
はる:「400字詰め原稿用紙1枚分の小噺、ですよね。」
部長:「そうそう。みんなで発表会するからね。朝は4本足・・・昼は・・・。」
0:そう言うと、部長が考え込む。しばしの間の後、ふと顔を上げる部長。
部長:「木乃伊さん、文章をヒエログリフで書かないようにね。」
みら:「ギックゥ!!」
マヤ:「誰が読めるのよ・・・ヒエログリフの小噺・・・。はる、アンタもインダス文字で書かないでよね!」
はる:「ギックゥ!!」
マヤ:「ホントアンタたちは・・・部長が読めない言語で書くとか何の嫌がらせよ?」
みら:「インダス文字は現在でも解明されてないのに・・・はる、あなた適当に書いてごまかそうとしてるでしょう!」
はる:「いやいやいやいや!そんなことは!」
部長:「そういう印鹿さんも!象形文字とかマヤ文字で書かないでよ・・・?焚書(ふんしょ)するわよ?」
マヤ:「ギックゥ!!部長まさか、マヤ文明を滅ぼしたスペイン人ですか!?」
部長:「んなわけないでしょ・・・。れっきとした日本人です!
部長:3人ともちゃんと普通の原稿用紙にシャーペンとかボールペンで書いて。現代文でお願い。」
3人:「(しょんぼりしつつ)はーい。」
0:間。しばし紙にペンを走らせる音が部屋に響く。
部長:「・・・そういえばピクルス、ってさー?」
はる:「はい?」
部長:「メソポタミアが発祥なんだってさー。」
マヤ:「そうなのー?てっきりアメリカとか思ってたけど。」
部長:「インドからキュウリが持ち込まれて、それを保存食として食べられるようにしたっていう説。」
はる:「あー、インドにもピクルスありますよ?アチャールっていう。」
部長:「さすがインド人ね・・・」
はる:「どの辺が『さすが』なのかわかりませんけど・・・。」
みら:「ピクルスとは・・・野菜や果実などを香辛料とともに酢漬にしたもの。シロップ漬のような糖水漬はピクルスとはいわない。だそうですわ。」
マヤ:「へー、そうなんだー。野菜も果物もピクルスになるのねー。アタシキュウリだけかと思ってた。」
みら:「ガーキンですわね。」
はる:「ガーキン?」
みら:「日本で一般的にピクルスに使われている野菜ですわね。小さなキュウリのようなものですわ。」
部長:「へー、あれキュウリじゃないんだね。」
みら:「ちなみにカレーに入れるラッキョウの酢漬けもピクルスの一種ですわ。」
はる:「え?カレーにラッキョウの酢漬け?」
みら:「え?」
0:静まり返る一同。
はる:「あれ?『カレーにラッキョウの酢漬けなんて入れない』、ですよね?『アチャール、入れます』よね?」
マヤ:「んー・・・アタシはそういうお漬物はカレーに入れないし・・・。アチャールなんてウチにないし。」
みら:「わたくしはそもそも辛い物が苦手ですので卵の黄身で中和してますし・・・お漬物は入れませんね。」
0:3人の視線が部長に向けられる。
部長:「え・・・?」
はる:「ぶちょう!」
部長:「ヒッ!?」
はる:「部長は・・・カレーに何を入れてるんですか・・・!」
部長:「アッ、アッ・・・福神漬け・・・。」
はる:「ふくじんづけ・・・?」
部長:「えっ、えっ!?はるちゃん!?」
0:はる、部長の机ににじり寄って、机をばーんと叩く。
はる:「カレーには!アチャール!!さんはい!!」
部長:「っ!!カレーには!アチャール!」
はる:「・・・よろしい。」
みら:「はるさんは・・・恐ろしいですわね・・・。」
マヤ:「学食のカレーもそのうちインドカレーにされちゃうんじゃないかなぁ・・・。」
はる:「あたし、生徒会長目指そうかなぁ・・・。」
みら:「唐突ですわね。」
マヤ:「いや、学食のカレーを本格インドカレーにしたいだけでしょ・・・。」
部長:「は、はるちゃん・・・?」
はる:「はい!何ですか部長?」
部長:「もう、・・・怒ってなぁい・・・?」
はる:「え?怒ってないですよ?あ、でも後でアチャールのレシピ、お渡ししますね。」
部長:「うん、・・・あぁ・・・びっくりした・・・。」
みら:「はるさんはカレーのことには目がないですしね。」
マヤ:「それよりさー?みら、さっきのなぞなぞの答えってなんなの?アタシ気になって全然モヤモヤしてんだけどさ。」
みら:「あぁ、そういえば答えを教えていませんでしたね。『人間』ですわ。」
はる:「人間?」
みら:「ええ、人間の人生を例えた問題ですわ。朝は幼年期を指しますので、両手両足で歩くので4本足。」
マヤ:「ということは昼は、青年でちゃんと2本の足で立って歩くってこと?」
みら:「その通りです。」
部長:「そうなると夜は・・・?3本足?」
みら:「杖をつく老人をイメージして頂ければわかるかと。」
はる:「はー、なるほどー。」
マヤ:「哲学、だねぇ~・・・。」
部長:「スフィンクスは別の問題、出すんだっけ?」
みら:「いえ、それ以外の問題は聞いたことがありませんわ。この問題にオイディプスが正解すると、スフィンクスは崖から身を投げたそうです。」
マヤ:「え?」
はる:「負けちゃったから、ってこと?」
みら:「どうしてなのかはわかりませんが、はるさんの仰ることが合っているかもしれませんね。」
部長:「ふむー。なぞなぞといえば、これは言葉遊びなんだけど・・・。」
0:部長、黒板に「子子子子子子子子子子子子」と書く。
部長:「はい、これ読める人!」
マヤ:「え~?「ここここここここここここ」?」
部長:「(得意げに)ぶっぶー!」
はる:「じゅうにこ?子が12個並んでるから!」
部長:「ぶぶー!ちがいまーす!」
みら:「ねねねねねねねねねねねね?ネズミの子(ね)、ですわ!」
部長:「ぶぶぶぶー!ちがいまーす!」
マヤ:「いー!!わからんわからん!!」
0:マヤ、またはるを「ぽかぽか」叩く。
はる:「ちょっとマヤちゃん!やめてってば!非暴力!不服従!」
0:そうして、文芸部室はなぞなぞ大会で盛り上がるのであった。
0:おしまい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?