終わりの始まり
なにから書こうか。書き始めるのがこれほど気が重いとは。
元々はひな誕三周年ライブの配信を見てすぐ感想とか書こうかなと思ってたが当日来ていたという卒業メンバーのことや復帰したこさかなのことなど考えてるうちにいろいろ想いがこみあげてきたものだから少し落ち着いてから書こうと思ってた矢先の渡邉美穂の卒業宣言だった。
ビートルズのドキュメンタリー映画「GET BACK」を見ていると日頃の鬱憤が溜まっていたジョージ・ハリスンがキレてスタジオを飛び出した後、割と冷静に「クラプトンでも誘うか」みたいな会話がなされていることに驚くが、それがクラプトンだろうがベックだろうが加入したとしたらそれはもはやビートルズではない、ちょっと違うバンドで、たとえばプラスティックオノバンド(後のジョンのバンド)やウイングス(後のポールのバンド)みたいなものだ。似てるけど別物だ。皮肉屋で攻撃的でリーダーシップの強い詩人タイプのジョンと、社交的で音楽的才能に溢れ、甘いルックスでいかにもスターという感じのポールと、内省的で静かだが芯が強く頑固で実は誰よりも大胆な行動をとるジョージと、明るく優しく皆の潤滑油的存在のお人好しのリンゴという4人だからあの奇跡のユニットが成立していたわけで、誰が欠けても誰もその代わりにはなれないことは世界中のビートルズファンが知っていることだ。これは他のバンドでもそう。急逝したキース・ムーンの代わりにケニー・ジョーンズはそもそも無理だったしフレディ以外でクィーンのボーカルはいないし、ジョン・フルシアンテのギターでないレッチリなんてレッチリではないし(復帰してよかった)、志村という才能が消えたフジファブリックは優れてはいるけどもう違うバンドだ。それくらいグループとかユニットの個性というのはそう簡単にすげ替えられるものではないと思う。おっと興奮し過ぎた。時を戻そう。
ひな誕を見てて、Overtureからもう泣いていた。ドームまでの軌跡は正直僕にとってそれほど感慨は無い。ハコとしては東京ドームよりも大きいところはあるし別にドームにそこまで拘らなくてもいいんじゃないかと昔からずーっと思ってたので。それよりはここまでの彼女たちの成長の歴史の方にはグッときた。デビュー当初、どうにも素人っぽく、悪く言えばイモっぽい女の子たちばかりだなという印象で、それからもなにかというとすぐ泣いたり休んだり落ち込んだりしてきた姿を僕らはずっと見てきた。それがこんなにも堂々と、あそこに集まった何万人もの人たちの前でパフォーマンスしてること自体が素晴らしかった。僕が見たのは初日なのだけど、翌日の千秋楽では新曲も披露されたり、「それでも歩いている」では空の椅子(ねるや柿崎や井口か?)が用意されたり、盛り沢山だったようで本当に良いライブだったんじゃないだろうか。
僕的にはこさかなの体力が心配で、途中から「座ってやればいいんじゃないか」とまで思ったほどだった。今までのライブで他のメンバーが頑張って代役センターをつとめた「キュン」や「ドレミソラシド」など、やはりこさかなが真ん中にいるだけでどれほど心が落ち着くことかあらためてその存在感に脱帽した。ルックスだけではなくその佇まいまでがアイドル中のアイドルのこさかなだけではない。他にもバラエティやクイズで力を発揮しているメンバーはいるし、影山のようにサッカー番組では欠かせない存在になった人やゲーム番組や教養番組や漫画などでその個性を伸ばしているメンバーも多い。たとえば齊藤京子は初期の頃の印象は可愛いけど中森明菜のように声が低い異色のアイドルだったが、一連の「ひなあい」などでの料理やぶりっこや阿修羅やその他いろんなシーンでオンリーワンともいえる圧倒的な存在感をしめしている。「キョコロヒー」の齊藤京子を見るともう無敵なことがよくわかる。つまりどのピースが欠けても日向坂の魅力は激減するということだ。それは井口や柿崎の時も同じだった。井口の破天荒なキャラや、柿崎の完全無欠のぶりっこは余人をもって替えがたい魅力だった。今1人でぶりっこ王を担わされている宮田の苦労を見るにつけあの無双2トップを懐かしく思う。また2トップといえば初期の柿崎と長濱ねるの2トップも最強だった。誰跳べは今でもあのMVばかり見てしまうほど完璧なアイドルによる完璧なコンビだった。
日向坂にはもう何も足さなくて良いし、もう何も引かなくていい。ビートルズやザ・フーやドアーズなどと同じだ。極論だけどそれが僕の想いだ。
始まりがあれば終わりがある。みほわたなべに言われるまでもなくそれはわかっている。永遠のピークというものはない。くみてんももう三十路が近づきつつある。僕たちはいつまでも幸せなおひさまではいられない。幼年期の終わりはもうすぐかもしれない。四期生オーディションはグループの新陳代謝のためには必要なのかもしれない。しかし肥大化した頃のAKBや今の乃木坂のように「誰だっけ?」というメンバーが増えることが果たしていいのかどうか。少なくとも全員選抜だけは死守してもらいたいのだがそれも増員のレベルによってはどうなることやら・・。
それにしても。齊藤京子がいみじくも書いていた通り、これからNO WAR in the futureのエンディングはどうなるのか。少しだけ気になった。