#1「ハダー1」
君と初めて出会った頃のことは、今でもありありと覚えている。
誰もが高校生になることで胸がときめいていた、中3の秋。終礼の時、先生から姉妹校提携されていた日本の中学校から、同い年の生徒達が数日こっちに泊まることになったというお知らせがあった。さすが中学の男子だけあって、教室内はすぐ「キモチー」と叫ぶ声ですぐ騒がしくなった。大人しくないなと偉そうに思いながらも、僕もやはり君達と出会うことを密かに楽しみにしていた。
先生からのお知らせがあってから1ヶ月後、16人の日本の学生らがうちの学校に来た。男女2人組で、それぞれ3年のクラス別に分けられて一緒に生活することになった。
そして君は、僕のクラスに割り当てられた女の子だった。
先生の手招きで君は教室に入った。白いブラウスにチャーコールのチェックスカート、そして首元に付けられた、スカートお揃いのリボン。夏の間海にでも行ったのか、少し日焼けした様子だった。そして何とちっぽけな体と、それに似合わない威風堂々な足取り。それだけでも充分インパクトがあるのに、続いて起きるできごとは僕の予想をはるかに超えるものだった。
アニメ通り黒板に名前を漢字で縦書き、君は一生忘れられない挨拶を朗々と言った。
「アンニョンハダ」
おはよう。
「ナヌンアイイダ」
私は愛だ。
「ザルブタカダ」
どうぞよろしく。
あまりにも史劇っぽい韓国語で、教室内は一瞬静かになった。予想外の反応だったのか、君は慌てて今にも泣き出しそうな顔をした。それを見た僕たちはほっとし、笑い声があっちこっちで弾け始めた。短期転校生の華麗なデビューだった。
まともな名前を置いて、君のことを「ハダ」と呼び始めたのも、あの日以来からだった。
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