見出し画像

記憶を綴る

触れたくないような気もした。今の私が一度物語にしてしまえばそれは嘘になる。
上書きしたくなかったのだ。思い出の中のあの街を。

例えば夏のカラッとした薄黄色の日差し、埃っぽい中庭、ランニングシャツで日に当たる人。
あの記憶を、空気や湿度はそのままに保存できるような、そんな技量は私にはまだ無い。

でも、そんなことを言っていたらたちまち忘却の彼方に消え去ってしまいそうだったから。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?