ひまわり

あるところに城がありました。
小さくて色のない誰もいないお城です。
ある日城の中にひまわりが咲きました。
きっと風に運ばれてきた種が
窓から降る太陽の光と
隙間から流れる雨水で育ったのでしょう。
奇跡のお話です。

ひまわりはすくすく育ちました。
ひまわりは上を向いたり下向いたりしながら
どんどん大きくなりました。
ある日ひまわりはお城の屋根を突き破りました。
太陽も雨も風もそうなることがわかっていたようでした。

今までお城しか知らなかったひまわりにとって
外の世界は面白いようで怖いようで
よくわかりませんでした。
四季をより濃く感じ、
今まで知らなかった生き物と出会いました。
そして良いものばかりの世界ではないということも知りました。

あるときひまわりは立っているのが疲れてきました。
太陽が暑く感じて
雨が冷たく感じて
生き物がうるさく感じたのです。
お城の中に戻りたい
ずっとそう思っていました。

そんなとき風に乗って小さなわたげが飛んできました。
わたげはふわふわ飛んで、
ひまわりのことなんか見もせず気にもせず、
ただそこに浮かんでいました。
ひまわりは自由に浮かぶわたげを羨ましく思いました。
つかもうにもつかめず、もどかしい気持ちでした。
手も足も出ずただしばらくわたげを見ていると、
ひまわりはだんだん「どうでも良いや」と思うようになりました。
無理に捕まえようとせず、
自由に浮かぶわたげを眺めていました。

すると、風が止み、わたげはひまわりの根っこの近くに落ちました。
わたげの姿が見えなくなりひまわりは寂しく感じました。

ここはひまわりが育ったお城です。
ひまわりが熱いと思った太陽や、
冷たいと感じた雨が、
ちょうどよくわたげに降り注ぎました。
するとわたげはすくすく育ち、
どんどん大きくなりました。
横に並ぶほど大きくなったわたげを見て、
ひまわりは驚きました。
白くてふわふわしていたわたげは、
黄色く輝くたんぽぽになったのです、
ひまわりは自分と同じ色をしたたんぽぽが隣にいることを嬉しく思いました。

それからひまわりとたんぽぽは、
互いに助け合いながら仲良く暮らしましたとさ。

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