夢日記 商店とドア

変な時間に寝ると、見ることがある。

この場所に来たのはたぶん二度目。

暗くて出口が見つからない商店。

今日は、前回諦めた「close」と書かれたドアを開けた。

この商店は細長く、コンクリか石でできた壁床天井、窓なし。かなり閉塞感のあるところ。高架下にあるスーパーがイメージに近いと思う。

わたしは前回も今回も、気付いたときにはそこにいる。


その商店は、通路が真ん中にあって、向かって左が謎の野菜や謎の肉が売られていて、向かって右には調味料とか日用品。

前回は確か、ちらほらいる店員に生気がなく、室内全体が薄ら気味悪いため、寄り道せず真ん中の通路を直進しただけだったと思う。

今回は試しに左の生鮮食品売り場に足を踏み入れた。

売り場の手前側、つまりさっきまでわたしが立っていた通路側には、段ボールに積まれた菓子や乾物?が所狭しと並んでいた。
狭さはヴィレッジヴァンガード、積み方は業務スーパーだ。

通路から5mくらいで壁際に到達。
壁際には冷蔵ケースがあって、パックされたお肉が並んでいる。

冷蔵ケースの手前にも段ボールが積まれていて、ところどころに漬物用の黄色っぽいバケツみたいなのも並んでいる。

天井からは、見たことない皮を剥がれた竹?みたいなやつとか、焼かれたイモリ?みたいなのとかが吊られている。

どうやら、ここはおじいちゃんおばあちゃんが経営してるらしい。通路から見えた店員も、この二人だった。

おばあちゃんが「何探しにきたの?あっこれ美味しいのよ、持ってきな」と、いつの間にかわたしの手に持たされているカゴに放り込んでいく。

わたしは、今電子マネーしかないんだけどな……ここ現金しか使えなそうだな……と思いながら、肩にかけた食材を見ていた。

その商店ではなく、昔通った高校の近くにあってよく行っていたダイエーで、食材や、マグロ尽くしのお寿司の大きいパックを買った帰りだった。

ナマモノがあるから早く帰りたい。

次々にわたしのカゴに物を詰めていくおばあちゃんには悪いけど、「アッ!お財布忘れたあ……」と小芝居を打ってみる。

少し離れたところにいるおじいちゃんからの視線を感じる。

ここ何時までですか?後で来てもいいですか?と聞いてみた。

「あら……うちはいつもじいさんと9時くらいまではやってるかなあ」と、残念そうにするおばあちゃん。

おばあちゃんがカゴに詰めていた商品は、わたしの気付かぬうちにおじいちゃんが売り場に戻してくれていた。

じゃあまた来ますね、と言って軽く会釈して自転車を引いて、再び真ん中の通路を奥へ歩いた。

おじいちゃんおばあちゃんの生鮮食品屋さんから少し進むと、右側に冒頭の「close」のドアが現れる。

日用品売り場の終わりのところにあって、ごちゃごちゃと物を置かれてはいるが、一応人が通れるようになっている。

従業員用の出口なのかな、と思って前回は断念した。今回は早く帰りたいので、一か八か、開けてみる。

ドアには鍵もかかっておらずすんなり開いて、拍子抜けした。

外の明るい日差しが、薄暗い室内に慣れた目に眩しい。

夕方に差し掛かる15時くらいの明るさに照らされているのは、シャッター付きの車庫みたいなところだった。

ドアの下に目をやると、コンクリートでできた階段がくっついている。幅は1mくらいで、高さは2m近くある。左が階段、右がスロープ。ほぼ梯子みたいな急勾配なのだが、頼みの階段の角は削れており、左もほとんど坂になっている。

車庫から判断するに、ここが搬入口なのかな、と考えつつも、でも毎日この急勾配を上り下りしてるの?と思った。

下を覗き込みながら横に目をやると、階段の横は喫煙所らしい。タバコが刺さって年季の入った、汚れた灰皿スタンドが置いてある。

ふと気配を感じて振り向くと、従業員らしい若い男の子が様子をこちらを見ていて、訝しんでいる。

「すみません、出口かと思って…」と言ったら、わたしの言葉を聞いてるのか聞いてないのか、開けたことがないらしいドアの向こう側に興味津々で近寄ってきて、わたしの後ろから外を覗き込んでいた。

するとどこからか「おい!そこ開けんなっつっただろ!」と怒号が飛んでくる。

男の子は高校生くらいで、綺麗な顔立ちで背はそんなに高くない。怒号に怯むことなくキョロキョロと外を見て風を感じていた。

しかしわたしはそれどころではない。階段横にスロープがあるってことは、自転車を押して通れるってことだ。

わたしは脱出を試みる。自転車を右に歩いて降りてみる。2段降りたところで、自転車はハンドル以外がバネのようにビヨ〜ンと伸びて車体は商店の中に取り残された。

自転車よりわたしが先に階段を降りて、無理矢理引っ張ったらついてくるかもしれない、と考えて、ハンドルを握ったまま階段を滑り落ちてみる。

地面に足がついて、すぐに振り向き、腕を持ち上げてハンドルを引っ張る。

バネのように伸びる車体。もはや自転車とは言えない。

まだ外を物珍しそうに見ていた男の子に、「外出ますか?」と聞いてみた。「このまま引っ張ったら自転車がこっちに飛んでくるかもしれない。危ないから降りるなら降りておいで。」とも伝えてみた。

男の子は、いいのかな…ここから出ても…、というような、期待と不安のある表情をしていたが、思い切ったらしく階段を滑り落ちてきた。

そこでわたしは、ハンドルを持ったまま車庫の方へ走ってみた。

自転車はビヨーンと伸び、バネはほぼ直線になっている。

こうなるともう、自転車なしで帰れるかを考えるが、そもそも、ここがどこなのかもわからない。

記憶を辿る。

わたしはダイエーからの帰り道、自転車で車道脇を走っていた。

いつもの道のはずなのだが、いつの間にか道は迫り来る波のように捻れ、どうしたって走れないだろう状態になっていた。

一旦ペダルを漕ぐ足を止め、引き換えそうとしたところで空間が歪み、気付いた時には商店にいたのだった。

そうなると、帰れない可能性が?

と思ったところで目が覚めた。

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