副審物語2 リジャッジメント
あの試合の後、
主審であり先輩の吉田さんは容赦なく私を叱った
「副審!何だね今日のジャッジは!オフサイドにしまくりじゃないか!一試合で58回なんて前代未聞だぞ!」
「すいません、、」
「君がそういう事すると主審の私の責任になるんだよ!」
「はい、、次からは控えめに、15、いや12回くらいには、、」
「んん〜、違うんだよ、その考え方がおかしいんだよ、フラッグを上げるのが仕事じゃないんだよ我々は!試合を裁くのが仕事なんだよ」
「し、試合をっ!裁く、、」
「知らなかったのか!よくライセンス取れたな」
「フラッグを何回あげられるかの勝負じゃない、、」
「違うよ!なんだ勝負って、誰と戦ってんだ」
「すいません、なんか勘違いしてました、フラッグを1番多くあげたやつが主審になれる大会だと思ってました」
「そんな大会だったら主審になった私が1番恥ずかしいだろ」
「わかりました、今度から気をつけます」
あれから1年、
彼女は未だに帰って来ない、
私が回数をオーバーしてしまったから、、
そして今日は彼女の誕生日、
会うことはできないけど、きっと彼女は試合を見てくれているはず、
今年は29回、、
やってみせる
これが成功すれば、去年の失敗は帳消し、きっと帰って来てくれる、、
私は試合前の、フォワード近藤選手の元を訪れて挨拶した
「近藤君、今日はオフサイド29回やるから、そのつもりで」
「はぁ?!てめぇ、なに宣言しに来てんだ!ふざけんな!」
「もし試合中に私に抗議するような事があったら、そこからはずっとフラッグ上げっぱなしにするから」
「上げっぱなし?」
「そうだ、無限オフサイドに突入する!」
「な、なんだ無限オフサイドって、、どうなるんだ、それ」
「さぁな?わからない、私にとっても未知の領域だ、どうなるかわからない、だから、そうならないように気をつけるんだな」
ピーーーッ!!
試合が始まった、
近藤選手は納得してくれただろうか、、いや、納得していなくてもやるしかない、、、よし!早速いくぞ、、、
それっ!
私は前回を遥かに上回るペースでオフサイド無双した、
試合開始5分でオフサイド8回!
いける!これなら29回なんて楽勝だ!ふと観客席に目をやった、、
彼女だ!
やっぱり見に来てくれたんだ!
喜んだのは束の間だった、、
彼女の隣りには親しげに話す男の姿が、、、、
終わった、、
込み上げる怒りを抑えきれず叫んだ、
「無限オフサイドに突入します!!」
フラッグを天高く掲げた、
もうこの腕を降ろすことはない!怒りの無限オフサイド!
主審が慌ててこちらに走ってきた
「副審よ、お前、、、もう、その腕を降ろす事は無いんだな?」
「はい!もう決めたんで、一生このままです、棺桶にもこのまま入ります」
「、、ならば私も腕を上げよう」
「え?」
主審の、空に向かって伸ばした手には、レッドカードがにぎられていた
「退場!」
終
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