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ドワーフ大戦奇~鉄風ルククの帰還~ 第三話


正午過ぎ、手枷足枷を付けられた数人の若い女エルフの裸体が転がる馬小屋の中に嬌声が響き渡る。

ビル「おい!報告がある時は犯ってる時だろうがなんだろうが速攻で伝えろって言ってあるだろうが!」

親分が"お楽しみ"の最中で馬小屋の前で遠慮して尻込みしている手下の気配を感じて目の前のエルフの美少女の染みヒトツ無い白い臀部から目を離さずに怒鳴り散らす。

手下「すんません!ビルの大兄貴!」

悪名高き賞金稼ぎの集団"ホーランド一味"の頭目であるビル(ウィリアム)・ホーランドは自分に気を使って外で待っていた手下を馬小屋の中に呼びつける。

手下「へ、へい!ジェファースンさんが例のジョーの兄貴殺しの犯人の情報があるって来てるんすよ」

それなりに腕が立つと一目置いていたジェファースンが自ら足を運んだ事にビルは強い関心を抱き口角を上げる。

ビル「ほほう、奴直々にか、そりゃ興味深い」

おもむろにズボンのポケットから小ぶりなリンゴを取り出して、無造作に握り締めるとあっというまにリンゴが圧搾され滴り落ちる果汁で喉を潤す。規格外の膂力を誇るビルに手下の男の額に汗が浮かぶ。

ビル「あと1時間待ってろとジェファースンに伝えておけ」
手下「了解っす!」

ビルの異常な握力の強さに戦慄した手下が下手糞な敬礼の後に慌てて駆け出す様を見送り、さらに腰の動きを加速させる。

ビル「オレの弟分を殺した奴は誰であれ許さねぇ。オレの左腕をもぎ取りやがって!」

目をかけていた弟分を殺された恨みと復讐相手の手がかりを得た興奮でさらに怒張した逸物で女エルフの奥底を深々と抉り、さらに嬌声が甲高く上がる。

場面は駅馬車の荷台に移り、ルククはパイプで煙草を吹かしながら娘に繋がる情報がないか新聞紙に目を通していく内に、賞金稼ぎのジョーが何者かに惨殺されたという記事を目にする。

ルクク「荒野に広がる名うての賞金稼ぎ”トマホークのジョー”とその一味の死屍累々、亜人の妖術による仕業か?!……やだねぇ。何かあればすぐに亜人亜人ってさぁ」
ルクク「まぁ、これに関してはあたしがやったんだけどねぇ。どう思うよ?人間の旦那は」
ハンス「人間は未知を恐れる生き物だ。自分たちの同胞に悪人がいてほしくない。だから亜人といった少数派をスケープゴートにする……嘆かわしいことだよ」
ルクク「んまぁ、これはまたバカ真面目に返してきたね。一周回って面白いよ。でも、女にはモテなさそうだね」
ハンス「言い方……でも、そんな記事に取り上げられたら、近々、ホーランド一味に正体がバレるかもしれない」
ルクク「がははっ!実はそれに関しては願ったりなのさ。ホーランドくらいの規模のでかい賞金稼ぎは表に出てこない奴隷売買の情報を知っているかもしれない」
ハンス「返り討ちにして情報を聞き出すってか?!相手は百人以上の手下を抱えた帝国南部でも屈指のならず者共の集団だぞ」
ルクク「ああいうのは烏合の衆っていうんだよ。帝国の正規軍に比べれば赤子も同然の連中じゃないか」
ハンス「頼もしいというか無謀と言うか……」
ルクク「がはは!こっちには泣く子も黙る”早撃ちハンス”がいるからな、怖いモノ無しさ!」
ハンス「こっちは一騎当千なんて無理なんだから、冗談言わないでくれよ」

一方その頃、ホーランド一味のアジトにある射撃場では残酷なショーが行われようとしていた。

ロブ「おらおら!、短足共!これから十数える間に好きに逃げていいんだぞ!」

身長二メートル近い髭面の大男のロブがガトリング・ガン(連発式機関砲)を構えて、数十メートル先の粗末な服を来たドワーフの奴隷たちにゆっくりと照準を合わせる。

ジャファースン「旧式とはいえあんなモノを……羽振りがいいな」

ジャファースンはビルと並んで瓶ビールを片手に見物をしている。背後にはビルの手下やジャファースンの子分たちがずらりと並び野次を飛ばしている。

ロブ「ひとぉーつ!ふたぁーつ!みぃーつ!」
ビル「くくく。帝国陸軍に女エルフ好きの趣味の良い将校様がいてね。格安で売ってもらったよ」
ジェファースン「ふん、デミフィリア(亜人嗜好)仲間って訳か。相変わらず良い趣味だな」
ロブ「よーぉーつ!いつつぅーつ!むっつぅぅぅ!」
ロブ「ななぁーつ!やぁーつ!ここのぉーつ!」

ゲームの開始に慌てふためいたドワーフたちはそれぞれの場所に散り、ある者はビルが”ゲーム”を盛り上げるために設置させた木箱に隠れる。

ロブがガトリング・ガンのクランクに手を掛ける。

ロブ「じゅぅぅぅぅ!」

ロブがクランクを回しガトリング・ガンの掃射が始まる。

ドワーフ奴隷A「ぎゃぁぁぁっ!」
ドワーフ奴隷B「ぐわぁぁぁっ!」

ドワーフ奴隷たちの必死の逃走も虚しく次々と銃弾の餌食になっていく。

手下A「ぎゃははっ!やっぱ見ていて気持ちいいな!」
手下B「的の小ささなんて関係ない!当たるまで撃てばいい!

ビルの手下たちは余興を酒の肴にして大いに盛り上がっている。

動く的はすべて仕留めたロブは木箱の山に隠れたドワーフ奴隷に照準を合わせる。

ロブ「かくれんぼの時間は終わりだ!」

クランクを回し銃弾を木箱の山に叩き込み、あっという間に木っ端微塵にする。

ドワーフ奴隷C「おぉぉぉっ!!」

崩壊した木箱の山からドワーフ奴隷の屈強な青年が木箱を盾がわりに抱えてロブに向かって突進してくる。

手下C「マジかよ!あの威力を目にして突進してくんのか!」
手下D「虐殺ショーも面白いけど、やっぱ、こういう展開がないとよ!」
手下E「もうかなり近づいてる!ひょっとしてヤバいんじゃ……」
ロブ「がははっ!つまらん臆病者かと思ったら、とんだ猛者だぜ!」

ドワーフ奴隷Cの身体は木箱にすっぽりと隠れるも、そんなことは関係ないと木箱に集中砲火を浴びせようと照準を合わせる。

ドワーフ奴隷C「ドワーフ、舐めんなぁっ!」

ドワーフ奴隷Cは雄たけびとともに思いっきり木箱をロブに向かって投げつける。

ロブ「うぉぉぉっ!この野郎ぉぉぉっ!」

泡を食ったロブは負けるかと木箱に銃弾を徹底的に叩き込んで粉砕するが、ついに百発のマガジンが底を尽く。

弾切れによって生じた給弾の隙をついてロブに飛び掛かり、木箱の長い釘を指の間に挟みロブの顔面に拳を振り下ろす。

ドワーフ奴隷C「くたばれぇぇぇぇっっ!」
ロブ「うおらぁ!」

ロブは腰から抜いた大口径の拳銃を連射して、殴りかかって来るドワーフ奴隷Cを迎撃する。

ドワーフ奴隷C「ガハァ!」

腹部と胸に大穴を開けられて血反吐を吐いてドワーフ奴隷Cが倒れる。

手下D「ロブの兄貴の早撃ちは流石だぜ」
手下E「今のはひやひやしたなぁ」

ドワーフ奴隷Cの思わぬ反撃に肝を冷やした手下たちが胸を撫でおろします。

ビル「ひゅぅ!大したもんだな!さすがはオレの右腕だ」
ロブ「大兄貴に褒められると照れるぜ」
ロブ「こいつもアホな野郎だな。弾切れまで生き残れれば、命だけは助けるってルールだったのによ」

ドワーフ奴隷Cの亡骸を見下ろして鼻で嘲笑う。

ビル「こいつらは奴隷暴動に参加して奴隷主からも見限られた連中だ。この余興を万が一にでも生き残れたところで、売り飛ばした先で一年持てば御の字の過酷な炭鉱労働だ」
ジャファースン「ここで勇ましく戦って死ねたんなら、逆に良かったかもしれないな」

ロブ「連発砲の試射も無事成功ってことで、ジョーの兄弟の敵討ちに行ってきますぜ」

ロブは手下に師事して馬車にガトリングガンを積み込ませる。

ビル「なんだよ。もう行くのか?」
ロブ「へへ、”猛牛”のロブは獲物の目星がつけば黙ってられねぇんでさ」

帽子の向きを直しながらロブは獰猛な笑みを浮かべて、自分の馬を手下に持ってこさせます。

ビル「本当にドワーフの中年女一人のために”こいつ”を使うってのか」
ビル「大げさか?俺の手下の三分の一近くを殺った奴だぞ?むしろ妥当だろ」
ジェファースン「しかし、あのトマホークのジョーとその手下をたったの一人で、何度聞いても信じられない」

ビル「手下の報告で訳がわからん戦槌を使うって話だが、こいつで遠距離から狙撃し続ければ、いずれは蜂の巣だ」
ビル「弾も1000発は持たせてあるし、手下もジョーの時よりも多い」
ジェファースン「まるで戦争でもするような話ぶりだな」
ビル「そりゃ、戦争さ可愛い可愛い弟分の敵討ちだからな。文字通りの弔い合戦よ」

復讐の愉悦で凶暴な笑みを浮かべるビルの顔にジェファースンは冷や汗をかきます。

ジャファースン「おまえには、本当に参るよ」
ビル「おいおい、ビビるなよ。オレは弟分や子分だけでなく、同業にも優しいんだぜ」
手下F「おら!とっとと乗れ!」
女エルフ「……」

ガトリング・ガンを積んだ馬車の荷台にビルが犯していた金髪の若い女エルフの一人が乗せられる。

ジェファースン「ん?女が必要なほどの長旅か?」

物々しい雰囲気の中で不釣り合いな女エルフの存在に首を傾げる。

ビル「おまえが言うには、もめ事のリスクを分かった上でエルフの女給を助けるために大立ち回りしたんだろ?」
ジェファースン「あぁ、ドワーフ族とエルフ族は長年対立してるから違和感があった」

ジェファースンはルククがエルフの女給を庇って子分を懲らしめる場面を回想する。

ビル「年齢から言ってそのドワーフ女は子持ちで、種族が違うとはいえ娘の姿とだぶったとかじゃないか?」
ジェファースン「なるほど、当たらずとも遠からずってとこか」
ビル「あの女エルフは最近は反応が鈍くなって飽きてきたし、精々ドワーフ女の弱味をつく材料になってくれればいい」
ジェファースン「これは、えらいヤマに首を突っ込んでしまったかな」

予想よりもことが大事になった事でテンガロンハット越しに頭を抱えると、自分がもたらした情報を頼りに手下を率いて出発するロブを見送った。

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