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吸血鬼のポルノ事情 第二話
夕食前にタンクトップに短パンと言うラフな格好でネックカバーと簡易マスクをつけて自室でくつろぐキャサリン。
ノートパソコンにイヤホンを繋いで吸血鬼のアダルトサイトの最大手"Vanza"で配信されている吸血鬼向けポルノ映画”真夜中の娼女王”を食入るように見ている。
キャサリン「むむぅ!……ひゃぁ!」
ノックをしてもキャサリンが気付かないため自室に入ってきたキョウコに気付かずに背中をつんつんと指で突かれる。
キャサリン「うぇぇっ…キョ、キョウコ?!」
キャサリンのリアクションが予想以上で目を細めて笑う。
キョウコ「かかか!エロ動画見る時はもっと気を張らなきゃなぁ」
キャサリン「もうっ!キョウコったら、いじわるぅ」
キョウコ「おまえが可愛いから、ついからかっちまうのさ。晩飯だ。今日もいい夜になりそうだ」
キャサリンはキョウコにはいくつになっても敵わないという顔で台所に足を運ぶ。
キョウコ「さっき見てたエロ動画、ポルノ映画だろ?面白そうだな」
キャサリン「うん、華族相手の高級売血婦になった女の子のお話。純粋にストーリーに興味を持って見てたんだけど、どうにも官能要素がピンとこなくて……」
キョウコ「なぁるほど、浮かない顔はそういう訳か」
キャサリン「うん、自分なりに色々考えて解釈したいんだけど……」
キョウコ「そういうことなら、オレと一緒に見てみるか?”使い所”がどこか教えてやるよ」
キャサリン「えっ!それは……」
キョウコの"使い所"という提案にキャサリンはぎょっとして赤面する。
キョウコ「なんだ嫌か?照れるか?若い内はダチとそういうバカやって楽しむもんだぞ」
キャサリン「そ、そうよ!何事も経験よね」
場所をキョウコの部屋に移して、ポルノいる映画"真夜中の娼女"をテレビ画面で視聴する。
キョウコ「映画と言えば、やっぱりこれだよな」
キャサリン「映画に輸血パック……人間にはない発想」
キョウコは輸血パック、キャサリンは500mlの缶コーラを持ってきている。
キョウコ「おっ!始まったぞ」
冒頭の華美なマスクをつけた華族たちのパーティーを主人公の18歳の少女サヤが物憂げに眺めるシーンから吸血姫としての成人年齢に達して間もない伯爵令息の初吸血(筆おろしの)シーンに移る。
キャサリン「伯爵のお坊ちゃん、女の子にわざわざマスクを脱がせてるね」
伯爵令息のスチームパンク風のデザインのマスクが可変するギミックにキャサリンは見惚れる。
キョウコ「けったいな作りのマスクでもったいぶらせてるのは分かってるぜ監督。童貞小僧の不安と期待に満ちた表情の演技が良いな」
キャサリンは学術的な興味が先行しているが、キョウコはにやにやと目を細めて美形の若手俳優のおどおどとした演技に興奮を隠さない。
口腔側からサヤの表情で牙の大きさに対するリアクションを伝えたり、吸血シーンもなるだけ牙を映さず、女優のリアクションで魅せる演出を徹底している。
キャサリン「なんか、執拗に口元を見せないね」
キョウコ「そりゃ牙のモザイクが出たら興ざめだからな。おっ!今度は太ももにガブリだ!たまんねー」
伯爵令息がうなじ、太もも、腕と牙を付きたてていくうちに毛細血管が浮き出て、血管を吸血種菌が全身に広がっている演出が入る。
キャサリン「毛細血管の描写が生々しくてリアルだね」
キャサリンは純粋に凝った血管描写に感心するが隣のキョウコは鼻息を荒くしている。
キョウコ「おぉ……じわじわと細菌が広がっている……エロっ!」
キャサリン「えっ!これエロいの」
キャサリン「牙から撃ち込んだ自分の菌が広がり、自分の色に染まっていく……そそる」
うっとりとした顔で溜息をつくキョウコの顔をまじまじと見つめる。伯爵令息との夜を終えた後に昼に目が覚めて歯磨きをするシーンがはいる。
キャサリン「こんなに歯磨きを映す必要ってあるの?」
ストーリー上で特別意味があるとは思えない描写が長々と続きキャサリンは首をかしげる。
キョウコ「こりゃ、いわゆるサービスシーンだな。人間の場合は歯や口の描写の規制の度合いが若干緩くなるからな」
キャサリン「は、はぁ……」
いまいち、ピンと来ずに歯磨きからやたらと凝った口をゆすぐシーンを見つめながら、横目でキョウコを見るとマスク越しに口元がそわそわしていることに気づきます。
キャサリン(わぉ!牙が伸びてきてきてるんだ)
普段は長めの八重歯程度の吸血鬼の牙は性的興奮を覚えると著しく伸長する。知識では知っていても実際に目の当たりにすると好奇心が爆発する。
キャサリン(伸びきった牙が直に見たい……けど、友達には逆に頼みずらい)
勘の鋭いキョウコはキャサリンの気持ちを察した上で反応を楽しみながら映画を見る。
ノーマスクやノーネックカバーの女の子が無防備に過ごす姿をマジックミラー越しに見せる風俗店の店員を売血婦に仕立て上げるためにサヤがスカウトに訪れる。
キャサリン「私服の女の子が普通におしゃべりしたり、お茶してるだけ……これが見世物になるんですか?」
キョトンとしたキャサリンがツボにはいったキョウコがくつくつと笑う。
キョウコ「そりゃ見世物になるさ、ほら全員髪をたくし上げて思わずガブリとやりたくなる綺麗なうなじが丸見えだろ?眼福ってやつさね」
キャサリン「はぇー!なるほど」
自分のスカウトした女子大生ユミが下着姿の人間や吸血鬼の若い男女たち乱吸いパーティーの吸われ役として参加するシーンを見開きで映す。マスク姿の吸血鬼たちが思うがままに血を吸う退廃的な光景が繰り広げられる。
ユミは目隠しを両手両足に枷をつけられている。キツネや鬼、道化師など顔上半分を覆う様々なマスクをした吸血鬼の男女五人がユミを取り囲み牙を剝いて次々と噛みついていく。
痛痛しいシーンに思わずキャサリンが顔を覆うが、指の間からしっかりと見ている。
キャサリン「きゃぁ!生々しい!」
キョウコ「ほほぉ。顔上半分を隠すことで口元に視線を誘導してるって訳かぁ」
乱吸いシーンが終わり、首筋、太もも、乳房、脇腹、ふくらはぎ、二の腕、手首と次々と穿たれる吸血痕がズームで映る。
キャサリン「吸血痕はポピュラーなフェチと聞いてましたが、やたらとクローズアップするね」
キョウコ「一人から一回に吸える血の量は法律で制限されてるから、こんなガブガブやったら失血死しちまうぜ」
キョウコ「おっと、いかんいかん!フィクションとはいえ、そういうこと考えると醒めちまう」
映画も終盤に差し掛かり、主人公のサヤが高級売血婦になった理由は自分の母親を弄んだ公爵に対して復讐することが明かされ、公爵を磨き上げた美貌と血の味で篭絡して弱味を握り復讐を果たし大金と自由を手に入れる。
キャサリン「面白かったね。まさか最初の伯爵令息が重要キャラになるとは意外だった」
キョウコ「あぁ、ラストの吸血シーン気合入ってたなぁ♥」
にんまりと目を細め、口元をむず痒そうにしているキョウコを見て、キャサリンは勇気を出して口を開く。
キャサリン「キョウコ!今、牙伸びてるよね!み、見せてくれないかな?」
真剣な顔のキャサリンがおかしくてキョウコは破顔する。
キョウコ「かかか!おいおい分かってる?人間でいえば股おっぴろげて勃ったナニ見せろっていうようなもんだぞ!」
キャサリン「わ、分かってるよ!でも、気になる!キョウコなら私のわがままを聞いてくれるかと思って」
キョウコ「かかか!普通なら下手しなくてもセクハラだぜ。でも、可愛い年下のダチのたっての頼みなら見してやるかなぁー」
キャサリンが固唾を飲んで見守る中、映画のストリップ・ショーのシーンを真似てもったいぶった仕草でマスクを脱ぎ下ろす。
キャサリン(やっぱりキョウコって美人……綺麗)
キョウコのハッとするような美貌に見とれながらキャサリンの意識はキョウコの唇に集中する。
キョウコ「それでは御開帳~~」
キョウコはがばっと大きく口を開けて立派な牙を見せつける。
キョウコ「ほへ?どーふぁ?」
キャサリン「す、すごい!実物は初めて見た!」
好奇心MAXで目に星が散っているキャサリンにキョウコが気圧される。
キャサリンが牙の裏側で舐めるように観察する。覗き込む際にキャサリンの首がせわしなく動く。
キャサリン「あ、あれ小さく」
牙が徐々に小さくなっていき、キャサリンは首を傾げる。
キャサリン「ど、どうしました?」
キョウコ「そんなジロジロ見られたら萎えるだろ。ほんと遠慮知らずだな」
キョウコはキャサリンの頭を撫でて慰める。
キョウコ「その素直さが、おまえの取り柄さ、この監督の映画面白そうだからまた一緒に見ようぜ」
キャサリン「うん!でも子ども扱いはあんまりしないでよぉ……もう大人なんだから」
少し照れ臭そうにするキャサリンにキョウコは笑みを浮かべる。
キョウコ「かか!じゃあ、これでおあいこだな!」
キャサリン「もぉ、キョウコったらぁ……」
場面は変わり、就寝前。ノートパソコンで今日見た吸血鬼向けポルノ映画についての覚書きをまとめてキャサリンは眠りにつくために布団に仰向けになる。
キャサリン「ポルノ映画関係者への取材にも行ってみたい……実際にポルノ映画館にも足を運んでみたい……!」
先々の希望と共に眼を閉じるとキャサリンはすぐに眠りに落ちていく。
画面が暗転して、キャサリンは夢の中で吸血鬼たちに全身に噛みつかれて牙を穿たれて悲鳴を上げ、朝に目を覚ます。
キャサリン「はっ!ゆ、夢っ!?」
股間に違和感があって毛布の下を覗き込むとしっとりとパンツがほんのりと湿り気を帯びているのを見て赤面するキャサリン。
キャサリン「え!、えぇ!!、えぇぇぇ!?映画を見ただけでこれって……研究者としては良い傾向?なのかなぁ」
モノローグ【どうやら被吸血願望に目覚めたみたい……♥】