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野球に審判は何名いればよいのか?

これがnoteデビューになりますTwitterとちがってここでの投稿は多少真面目寄りにしたいかなと思います
なお今後ここに投稿することは所属している団体等の意見を代表するものではありません

はじめに

いまでこそ日本のプロ野球(NPB)で行う試合は4人の審判で運用する4人制が定着していますが導入当初は問題が起こるたびに六人制に戻すべきという意見が噴出していたものでした。
今でもファームや独立リーグが3人制で運用した場合に何か起きれば4人でやれと野次が飛びますので結局いつの時代でも言われるものですけどね(泣)

そもそも試合で最低何名以上の審判が必要なのか

公認野球規則(Official Baseball Rules)には
『1.01 野球は、(中略)1人ないし数人の審判員の権限のもとに、本規則に従って行われる競技である。』
リーグ会長は、1名以上の審判員を指名して、各リーグの選手権試合を主宰させる(後略)』とあります。
要は規則上、審判の必要人数は1人以上としか規定されていません。草野球だと派遣審判や攻撃側審判による球審のみで行う試合がプロの試合でも規則上では問題ないということです。とはいえ1名のみだと支障をきたすことが多いので2人~4人ないし外審を加えた6人制で運用することが多いです。

アメリカだと4人制で運用しているケースの方が少ない

国内でプロ野球や高校野球の中継を見ていると球審が1人に塁審として1塁、二塁、三塁の各塁に配置された計4人のいわゆる4人制というのがポピュラーです。
ところがアメリカだとデフォルトで4人制で運用しているのはメジャーリーグ(MLB)ぐらいでマイナーリーグでは最上級のAAA(3A)級では一部で運用しているものの
・ルーキーリーグ、A(1A)級・・・2人制
・AA(2A)級・・・3人制
・AAA(3A)級・・・3人制or4人制
といったように最下級のルーキーリーグからレベルが上がるにつれて審判の数も増えていきます。(高校だと公式戦でも1人とか2人でカレッジ(大学)でも2人~3人制がポピュラーで日本では高校野球クラスでも4人制だと知ると逆にびっくりするらしいです)

アメリカは2人制審判(TWO-UMPIRE)がベース(基礎)になっている

選手同様に審判もMLBを目指しているわけで彼らもマイナーリーグから研鑽を積んで昇格をめざします。最終的にめざしているMLBが4人制で運用しているのなら最初から4人制で運用すればいいと思われますが実は二人制審判がアメリカにおける審判法のベースになっています。審判学校でも2人制のシステムを教えます。

なぜ2人制審判がベースなのか

たった2人であれだけのフィールドを判定をするので状況や要素(走者の有無、どの塁に走者がいるのか、打球の種類や方向に守備体系など)に合わせて用いるフォーメーションは多岐にわたります。4人で行っている仕事を2人でやるので1人あたりで分担する判定責任(仕事量)が単純に2倍以上になります。そうなると自然と判定する機会が増え経験値を得ることができるわけです。2人制ゆえに2試合に1回は球審を担当するため球審としての実戦経験の機会も増えまたより多くの球数を見ることでの経験値を増やせるわけです。

2+1+1と4-1-1

あれだけ広いフィールドを2人の審判だけでこなしまた経験値も積んでAA級やAAA級そしてMLBと昇格していくと人数も3人、4人と徐々に増えていきます。それに伴い判定責任の分担も減っていくことになり楽に判定もできるわけです「2+1+1」の考えです。
そういったシステムですので試合中に審判に不測の事態が起きても3人あるいは2人で運用すればいいので控え審判制度もないのです。
逆に4人制がポピュラーである日本ですと人数が減ったことで感覚として「4-1-1」となって逆に判定責任の分担が増えてしまいます。そのリスクを回避するためとしてNPBには控え審判制度があるひとつの理由があるかもしれません。
アマでも東都なら二部以降は学生審判といって加盟校の部員を充当したり学童野球や大人の軟式の大会ではチームから塁審を出したりとか審判の専業でない人を使ってまで4人制で行う例も多々あると聞いてます

日本でも2人制や3人制の理念概念は導入されてつつある

ただ近年では審判不足という事情もありますが、審判としてMLBを目指す日本人が増えたことや元マイナーリーグ審判達によるセミナーで2人制の理解が増えた事もあります。NPBも技術体系や試合におけるゲームコントロールもMLBのそれに倣ってきたようになってきた事に加えて審判採用の為に立ち上げた毎年12月に行われるアンパイヤースクールでは米国審判学校と同様に2人制審判のシステムを教えています。ファームのゲームでも3人制で運用することも珍しくなくなってきました。
またアマ審判の最高峰と目されている六大学でもフレッシュリーグ(新人戦)では2人制を導入しています。

最後に

日本では以前よりはかなり改善されたとはいえ審判に対する理解が低い(というかあまりよく知られていない)こともあるので何か問題がある度に「技術の低下だとか」「審判の数が少ないから問題がおこるから六人制に戻せ」「外審専門審判を雇え」(←どんでんが東スポで言っていた)とかいう意見がでますが実は人数が多くても残念ながら問題はおきます。
ですので責任分担や経験値の多い審判を集め養成する方が2人~4人でも充分にこなせます。誤審を容認しろとは言いませんがも少しプレイヤーと同じフィールドにいる審判のことも対戦チーム同様にリスペクトしていただけると幸いです。

参照文献
・大リーグ審判武者修行日記/内川仁
・パ・リーグ審判、メジャーに挑戦す/平林岳
・サムライ審判白熱教室/平林岳
・わかりやすい野球のルール/粟村哲志
・公認野球規則
・MANUAL FOR THE TWO-UMPIRE SYSTEM/PBUC
・審判メカニクスハンドブック/日本野球協議会 オペレーション委員会 審判部会

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