第26章 謎の液体
キッチンからコンドリア博士が戻ってきて言った。
「分からない液体と、分からない色んな物を混ぜ合わせて、
紫色の謎のジュースを作ったので、誰か飲んでみたいという猛者はいませんか?」
みんなが言う。
「勘弁してちょうよ」
オリ・ハルコンさんが言う。
「せっかくだから、ルーレットで決めましょう」
みんな、気が乗らないまま
オリ・ハルコンさんがルーレットを回した。
「ピンチくんに決定!」
「おれかー。 マジかよ」
みんな固唾を飲んで見守る。
「飲むよ」
ドキドキドキ。
ゴクゴクゴク。
「ど、どう」
「あれ? 味はなんかパイナップルみたいで美味しい。
飲みやすい」
「マジ?」
「あれ? ちょっと待って、なんか変な声聞こえる。おじいちゃんみたいな人が耳元で、
なんかずっと『ヘロス トヘロス トヘロス ヘロス』って言ってる」
「ええ!?」
「おじいちゃんと、もうひとりのおじいちゃんが話してる感じ。
口論というか、喧嘩みたいな。
時々普通に戻ったり。なんか話してるんだけど、おれには全部、ヘロス トヘロス トヘロス ヘロスって聞こえる」
「まあ!大丈夫!?」
「ダイジョバナイ!ダイジョバナイ!
全然大丈夫ではないよ!
みんなの顔が、なんかドクロみたいに見える。
しかも色とりどり。一人一人色が違う!
全員ドクロだから、誰が誰だかさっぱりわからない!」
「落ち着いて!声と服装で見分けられるよ!」
「2人のおじいちゃんのヘロス トヘロスが段々大きくなって、鳴り止まないんだ!
なんなんだこれ!」
ピンチくんは頭を抱えて、その場に崩れ落ちた。
ナース・レイナが言った。
「わたしの出番がようやく来たわ。
とりあえず布団に入りなさい。
今冷たい水とかでなんとかするわ!」
誰かが言った。
「頼もしい! 一安心」
「おれも飲んでみたい」
デンジャラスくんが唐突に言った。
みんな我が耳を疑った。
「今の見てたでしょ?」
「わいは好奇心旺盛なんや」
ゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴク!!!!!
「ホントだ。パイナップルみたいで美味しい」
「なにか聞こえる?」
「ちょっと待って。???????
女の人の声でシュワシュワシュワシュワシュワシュワシュシュワルって聞こえる。
最後のシュシュワルがなんか語呂が悪くて、イントネーションもおかしくて、凄くキモチワルイ。
どうせならシュワシュワで終わって欲しい。
耳と脳みそが溶けていってる錯覚に陥る」
「視界は?」
「あれ? ?? おかしい! 変だ!
みんなの左肩の上にカタカナみたいなのが一文字浮かんでる。
でも、なんか違うんだ。「ア」ぽいけど「ア」じゃないんだ。
なんていうか、なんか「ア」じゃないんだ。
キットンくんは「タ」みたいなヤツ、桃色ピンクちゃんは「ポ」みたいなヤツ。
オリ・ハルコンさんは「ミ」みたいなヤツ。
でもなんか、絶対的に「タ」でも「ポ」でも「ミ」でもないんだ。
誰かに見てもらいたい。
この感じ。見れば絶対おれの気持ちが分かるよ!
カタカナみたいだけど、絶対カタカナじゃないってしか言いようがないんだ!
なんかの暗号か?
意味なんてないのか!???
変だ!凄く変だ!」
コンドリア博士が言った。
「こうなるのかー。あぶねー。味見しなくてよかった!助かったー」
かつて銃で撃たれて棺桶に入れられていたトランポリン北澤が言った。
「今、生き返ったよ!」
「なぬ!?」
みんな目をまるくした。
フレイクくんが言った。
「なんか、なんとなく、この紫のジュースを、口から流し込んでみたんだ。そしたら生き返った」
黒柳大佐が言った。
「じゃあ、死んだ人全員に飲ませりゃいいじゃん!!!
ヤッター! またみんなで最初からやり直せる!
ヤッター! マジで嬉しい! 夢みたい」
筋肉ムキムキのイカツイ人が言った。
「コンドリア博士。
さっきは殺してやろうかと思ったけど、今は何かしらの賞を与えたい気持ちで一杯です」
コンドリア博士は内心思った。
「あぶねー。たまたまだー。殺されてもおかしくなかった。マジであぶなかった。
しかも何かしらの賞も貰えるのかー。マジで良かった。助かった。ホッ。セーフセーフ、結果オーライ」