
39話 シャンプーを買ってきます。
「今さら言われても遅いんですけどー」
「今さら言われても遅いんですけどー」
「今さら言われても遅いんですけどー」
「お客様、どういたしました?」
「今さら言われても遅いんですけどー」
「あとの祭りなんですけどー」
「あとあと押し寄せてくるんですけどー」
「お客様、会計550円になります」
「今さら言われても遅いんですけどー」
「今さら言われても遅いんですけどー」
「今さら言われても遅いんですけどー」
「ホー」
「一緒に言って下さい」
「はい?」
「ハモって下さい。ユニゾンというか」
「ユニゾン」
「今さら言われても遅いんですけどー」
「今さら言われても遅いんですけどー」
「そうそうそう。バッチリバッチリ。
今さら言われても遅いんですけどー」
「。。。。。。。」
「言えや」
「今さら言われても」
「早い早い。あくまでもこちらサイドが発進してからよ。
積極的になるな。あくまでも嫌々やってる感じで。
やらされてる感じじゃないと、おかしいじゃん。
あくまでもこちらサイドがヤバイんだから」
「あくまでもこちらサイド」
「そうやって、少し面白がろうとするな。冷めるわ。
ヤバイ奴に出くわして、ガチで身の危険感じてる風で頼むわ」
「ホウ」
「ホウじゃねーよ。もっとおどおどせい。
なんでこんな目に遭うんだと不運さを呪え。
決しておいしいとか、帰ってから誰かに言おうとか思うな。
SNSはもってのほか。
冷めるから。
頭にチラついた瞬間、もう何もかも変わってしまう。
そっちメインになって主旨変わっちまう。
それはもうマジで面白くない。
今この瞬間に起きてることが今じゃなくなるというか。
今のこの世界を別の世界にもって行こうとすんな。
マジでそれだけは。
寒過ぎるし、気持ち悪いわ。
マジでそれだけは勘弁。
その姿勢、その態度はなにもかもすべて台無しにするくらいクソだわ。
気付けよ。馬鹿。
薄ら寒いのう。
今この場を全力で乗り越えろ。
じゃなきゃマジで死んでしまうぞ。
これを言っても何も思わないくらいに手遅れなのか?
じゃ、何やってもダメじゃねぇか。
アホがジャッジしちゃ絶対ダメじゃん。
アホのくせにジャッジすな。アホのくせにジャッジすな。
なんで−100点のやつが100点のやつをジャッジするんだ。
勘違いするなよ。おれが100点とは言ってねえからな。
お前はすぐそうだからな。
そう言うとこがアホなんだよ。
マジでキツイわ。
「うーん、おれはそうでもないかなー」じゃねんだって。
牛タン食べに行って、牛タン側に、お前の舌は美味しくない。
って言われるぞ。
コイツヤダわーって言われるぞ。
美味しくない舌のくせに、おれら牛側を味わって、
「うーん、まあまあかなぁ」じゃねんだって。
お前の舌ごときに味わわれたくないんだよ。
アホな味覚とアホな態度だな。
それにすら気付けない思考停止の夕涼みブレイン。
下らねえ時だけ脳みそフル回転させてんじゃねぇぞ。
今この場を全力で乗り越えろと言ってるんだ、おれは。
クソみたいな安易な価値観に支えられて逃げんじゃねえぞ。
気持ちわりぃな」
「了解です。つづきをやりましょう」
「お、おう。お前はなんだ。優しいのか? 大人なのか?
おれの被害妄想なのか。えー。なんだこれ」
「つづきをおねがいします」
「えー? これどっち?
わかんない。 え!
この状況でつづき要求するのおかしいじゃん。
わかった。あれだろ。ヤバイやつだから、どうせ話通じないから、
こちらサイドの要求を呑んでこちらの気を落ち着かせて、
さっさと終わらせようとする感じのやつか。
闘牛士かお前」
「今さら言われても、のやつおねがいします」
「困惑させんなって。
絶対おかしいじゃん。ここでそれ要求してくるやつふつういないって。
初だわ。この感じ。ありえねぇ。えー?どうすりゃいいんだ?
闘牛士かやはり。赤い布ごと突っ込むぞ!スペインごと破壊するぞ!
この立派なツノ2本で」
「おねがいします」
「よーし、わかった。
イヤわかってないけど。
いったれーって意味のわかった。じゃ。
絶対すかすなよ!
まあそれも覚悟の上」
「。。。。。。。」
「今さら言われても遅いんですけどー」
「今さら言われても遅いんですけどー」
「今さら言われても遅いんですけどー」
「今さら言われても遅いんですけどー」
「なんか、どっちかわかんない。
もっと消極的に参加せえ。
協力されたことないから、なんかわかんない」
「今さら言われても遅いんですけどー」
「言ってるそばから!」
「言うほどヤバクないよ。アナタ」
「キュン。
イヤちゃうちゃうちゃうちゃうちゃうちゃうちゃう。
どうしたら良いんだこれ。いつもと違う」
「時代は変わっています。受け入れましょう。
うまく泳ぐことなんて、到底アナタには不可能です。
足掻くだけ無駄です。アナタがしがみついてる思想、哲学、価値観。
もはやなんの役にも立ちません。
ゲロ吐く程つまんないです。取るに足らん。
もはやつまることなんて皆無に等しい。
むしろ嫌悪感を回避するだけで手一杯です」
「おれのコンセプトを変えないでくれ。
当初の目論見をスルーしないでくれ。
当社の方針を改正しないでくれ。
我が社にとって有能な人材をスーパーのレジ打ちのバイトで発見させないでくれ。
遭遇しないでくれ。
日常にミラクルを巻き起こし非日常を演出しないでくれ。
いつもどおりの、ちょっと退屈で平穏な日々を揺るがさないでくれ。
幻であってくれ。
無精髭が似合わないでくれ。
清潔感を保とうとし、しかし天然のワイルドさを隠しきれないでいないでくれ。
どうか幻であってくれ。
やめてくれーーーーーーーーーーーー」
「そういうの、もうキツイです。とっくに。
悪臭がエグイです。わかった上であえてやってるって言いそうな感じも余計キツイ。悪臭がエグいです」
「そういう風に言わないで」
「知らんがな」
「知ってくれよー」
「今さら言われても遅いんですけどー」
「あ、それマジで要らない。あきらかに一手多い」
「うっせー。こうるせー。こざがしい。ブチ殺すぞマジで」
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『「フレア」か「パルス」か、それ以外』という物語を
試験的、実験的に書いています。