第28章 鬼ストレス、解放祭り
「おれ、本当はさ、毎秒気分が滅入ってて気分が悪くて、立ち上がることさえ、ギリなんだ。
全く笑う気になんてならないし、どっちかというと、なにやっても全体的にアホらしいんだ」
「マジでヤダわ、生きることはあまりに辛い」
「おれはこのまま醜態を晒して、恥の上塗りをして、
なんか違うよな、なにもかも違うよな、
と思いながらも、でも黙って座ってるのも苦痛だから、
何かやってしまって、ただそれを繰り返していくだけなんだ」
「希望なんかあるわけねぇ。良い事あったとしても、ぬか喜びで、地獄へのフリにしか思えないんだ」
「面白いとか、笑うどころじゃないんだ。
悲しみ、憂鬱、切なさ、やり切れなさ、疎外感、嘘っぽい空気、納得いかない感覚。
わからない不安感。わからない恐怖心。なにかが怖い。
何もかも怖い。人が怖い。自分も怖い。
ちょっとおかしなテンションになって、あれ、なんか大丈夫かもって眠りについて、気分が悪くて目が覚めるんだ。
寝てる間に何かが起こってるんだ」
「なんの自信も確信もねぇ、常に手探り。自信満々のヤツにたまに出くわすと、吐き気すら覚えるわ。なんか、そういう宗教か、自己催眠、自分で洗脳してんのかって思うわ。
そういうヤツは自分が的外れにも関わらず、自分を疑わず、刺さらない言葉だけを吐き出して、嫌悪感こそ感じるが、魅力を感じたことは一切ないな。だせぇな。必死か。
違和感とか罪悪感とか感じないんだろうか。
子供や動物、昆虫の方がよっぽど立派だよな。
誰かの粗探しをしてダメ出しして、
おれの方が凄いって、中身空っぽのハッタリをかます。
ビッグマウス。口だけ大将。
実力と言葉が合ってなさすぎるわ。
お前ごときがなにほざいてんだ。
口もぎてぇわ。誰が誰に言ってんだ。
Mr.的外れ。アホらしい。クソだな。やってられん」
「あー、おめーらいいな。楽しそうで、
おめーらいいな、勘違いの解釈して、
楽しんだもん勝ちとか、アホみたいな浮わついたセリフ吐いて、はしゃいで、
自分よりだせぇヤツが見てたら余計はしゃいで、
自分よりはしゃいでるヤツがいたら競り合って、
冷めきったヤツが見てたら萎縮して」
「おれは悪くない、おれは間違ってない。そんなん知らん、どうでもいいって、
半分切れ気味で強引に消化して。
逆に面白いわ。滑稽。間抜け。
空っぽ。ハハハ」
「どんな解釈してるんだろうな」
「とにかく生きてても面白くねぇ。
これはそういう面白くねぇじゃなくて、
なんか、腹立つ、フェアじゃねぇ、納得いかねぇ、とかそういう言う意味のやつな!!!
みんな死ねカスども!!!」
「おれの場合は、なんつーか、圧力で押し通してくるやつが特に嫌いだな。
で、やり合うのもめんどくさいから、弱者のフリして、
あ、すんませんってやるんだ。
でも、あとあと思い出して、腹立ってきて、ぶち殺すって、眠れなくなるんだ。
ジャイアンとジャイ子に殺されるわ」
「押し付けがましいヤツも嫌いだわ」
「あと無神経に、引くわー、とか言って自分を守ってディフェンスしてるだけのヤツとかもな」
「あと偽善とか、しょうもない駆け引きとか、どっちもたいして変わらんだろって。
どっちもしょうもねぇ』
「まあ世の中の全部だな。居心地悪いわ」
「いわゆるリア充とか、うまくいってるヤツって、
なんかノーテンキでアホみたいだよな。
なんか嘘くせぇ。胡散くせぇ。
本質からもっとも遠い気がする。
ダメなヤツを反面教師にしてほくそ笑む。
賢いのかもしれんが、黒々しい笑顔を時々浮かべる。
で、おれは賢くて悪魔でしたたかだからいいんだ、ってその時だけ自分に都合良くやり過ごす。
おれはお前らより優れているからいいんだ。何が悪い?と。別に誰も悪いって言ってねぇし、なに顔赤らめ気味で強引に自己肯定してんだ? 必死か。
誰かの上に立たなきゃ死んでしまう病気なのか?
ダメなヤツと比べて安心というか、
対比として自信を高めてるというか。
まあ俗に言う優越感というやつか、
アホらしいわ。マジで」
「なにやっても気持ち良くねぇ。
なに言っても気持ち良くねぇ。
ピンとこねぇ。ピントが合わねぇ。
しっくりこねぇ。
だから迷うんだ。決断出来ない、後悔する、躊躇するのは、どれを選んでもアウトだからだ。
がんじがらめじゃねえか、クソ!」
「なんか、あずましくねぇ。
おれの縄張りを侵そうとするカス。
おれのテリトリーに土足で入って来ようとするヤツ。
バレバレの偽善者丸出し。
たかが知れてる必死の偽悪者。
怯えながらディフェンスしてるやからども。
引き笑いしてんじゃねーよ。
カウンターぶち込んで、再起不能にしてやるわ」
「あと、ひねくれ過ぎて、おかしい解釈して、逆ギレしてくるヤツとかな」
「あと人を疑いすぎるヤツも嫌いだな。そういうヤツってほとんど的外れだもんな。
自分にそういう部分があるからなんだろうな。
事実を捻じ曲げる。
ムダに疑われた本人の気持ちになれや!
どんだけ気分悪いか。
正直でいるのがアホらしくなるわ」
「あと、なんかあった時非を認めず開き直って、
面白くないのに、的外れに笑うヤツとかな。
なに誤魔化そうとしてんだ。ありえねっつーの。
死ね、クソみたいな笑い皺、汚らしい笑顔。
面白くねーって気づいてるんだろ?
猿みてぇだな。猿に失礼か。
今の場合は猿に罪はない。かたじけない、お猿さん。
猿の笑い方、みたいな笑い方よ。
まあ、ムカつく猿もいるだろうけどな、
今の話とは関係ない」
オリ・ハルコンさんが言った。
「みんな、相当ストレス感じながら生きてるのね」
「すべてがフラストレーションです」
「鬼ストレスです」
「鬼フラストレーションです」
今野さんが言った。
「そう、あまりにも面白くないから、この会で面白いことあればって、参加したんです。
面白くないのはぼくにとっては死活問題なんです。
退屈しのぎではないんです。
退屈なんてあり得ないんです。
常に苦痛で、存在してるのが苦痛で、和らげるために、
なにか良いこと、楽しいこと、安心できること、好きなこと、トキメキ、癒し、充実、面白いことが必要不可欠なんです。じゃなきゃ、呼吸するのも困難で、さらにまいってしまう。滅入ってしまう。死んでしまう」
「本末転倒でも構わない。不発でも構わない。
逆に面白くなくなり、今以上不快になったって構わない。
ド畜生。ぶち殺してやる。ぶち壊してやる。
どちらにしろアウトなら、どうやっても面白くならないのなら、やってやる。息の根止めてやる。
長い時間かけてじわじわ内側から崩壊じゃ」
「もともと死んでんだ。もともと終わってるんだ。
もともと地獄から始まってるんだ。畜生、やってやる。
今以上大怪我してやろうじゃねぇか、今以上大惨事になってやろうじゃじぇねぇか」
オリ・ハルコンさんが言った。
「今日は、なにも考えないで、日頃のストレスぶち撒けましょう。ネガティブ、タブー、本音、何でもありの日にしましょう。ってことで始めてみたけど、どんどん出て来るわね。まだまだ出て来そうね」
「あたりめーよ、すべてがヤダわ。
ヤじゃないように努力しても良くなってる気がしなくて、余計アホらしいわ。
でも何もしないのも苦痛過ぎるしな、気分が悪くて目覚めるから眠るのもこえぇし」
「『逆フレア』『逆パルス』とかでもないのかもな、
言葉考えるのもダリィわ。
じゃあ何でここに居るんだって、ガチの本末転倒だが、
それすら知らん。関係ねえ」
「ストレートにイヤでイヤで仕方ない。
めんどくせぇよ、もう」
オリ・ハルコンさんが言った。
「そんなことないよ。そんなこと言わないで。
とか、今日は言わないわ。
だって現にそうだし、そんなことばかりだもんね」
トランポリン北澤が言った。
「でも、良いこともあるよ」
それを受けて誰かが言った。
「お前今までの聞いてたか!?わざと言ってるのか!?
そんなことわがってるじゃ!
アホか、イヤなことと比べたらそんなの皆無に等しいだろ。
取るに足らねぇよ。不毛だわ!
変なこと言うなよ。余計虚しいわ。
クソが!ぶち壊す!破壊あるのみ!」