ペンケースから見る世界
ペンケース?ふでばこ?
最近ペンケースというのは、思った以上に人の生活に寄り添ってくれるアイテムではないかと、ふと感じることが多くなった。
小学校に入学するときには当たり前にみんな持っていて、その形はTPOで変遷を遂げていく。
最初は中身をしっかりと保護してくれる丈夫な箱型から始まり、徐々に布製やビニール製などちょっと人とは違う差別化されたものを持つようになり、大人になるとビジネス用の革製でスマートなものが主流となる。
その中には人それぞれのマイ筆記用具が彩る色とりどりの世界が広がり、まるでその人の性格を表すような、ある種のアイデンティティが感じられる。
そんなペンケースから見られる様々な世界を書き連ねていきたい。
まずは、ペンケースから見る自我の芽生えについて。
人生で1人あたり何回ペンケースを変えているのだろうか。
私自身6〜7回は変えていて、その度に様々な思いが込められていることも覚えている。
最初は小学校入学のとき。
確かアディダスかなんかの青い箱型ペンケースから始まった。
鉛筆削り付きでフタを開けると鉛筆を装着する筒が5個くらいあって、裏面には定規や分度器を入れておく浅いスペースがある。
絶対に鉛筆から始まる小学生のニーズに合った形である。
途中から徐々に周りの人の筆箱が変わり、箱型に嫌気が差してきたのか家にあったナイロン製の黒いペンケースに変えて、塾でもそれを使っていたことを覚えている。
そしてこっそりシャーペンも使っていたな。
少しだけおとなになった瞬間である。
その後は中学高校と何個か変えていった。
あまりその頃のモノを覚えていないので割愛するが、ペンが1,2本しか入らないほっそいペンケースを使っていた記憶がある。
ちょっと変わったものに憧れている証拠ともとれる。
大学ではなんか家にあったハリスツイードのペンケースを使い、これで終わりかなと思っていたが、その頃からFREITAG(フライターグ)というブランドにハマり、結局3つもFREITAGのペンケースを買ってしまった。
なんだかんだ自分で買ったのはこれが初めてだった。
それ以降は物欲もなくなり、今ではその3つを持ち運ぶ筆記用具用・その予備用・会社に置いておく用と使い分けて今に至る。
こうしてみるとペンケースを変える度に自我が大きく作用していることが分かる。
箱型が恥ずかしくなって変え(人とは違うものがいい)
だからといってこだわりもないので
家にあるものを使い(ペンケースなんてどうでもいい)
初購入は好きなブランドでさらに3つも。(やっぱりこだわりたいよね)
大人になってからは変える機会が少ない気もするが、青少年時代は思っているよりもペンケースを変えることに対する思いが強く、ちょっとした内的および外的要因が大きく働いているのだと感じる。
続いて、ペンケースから見る書くことへの執着について。
そもそもなぜペンケースを使うのか。
真面目に答えると文字を書くための筆記用具を収納保護するため、だろう。
スマホが普及するにつれて文字を書く機会というのは、徐々にではあるが確実に減少していることは否めない。
遠く離れた人との文通はSNSによって取って代わられ、スケジュール管理アプリなどによって手帳を持たなくなる人も出てきている。
それでも私は書くことにこだわりたい。
手帳も使うし、たまに手紙だって書く。
なぜなら日々のちょっとした出来事の記録や記憶に残すための作業として、また人へ気持ちを伝えるために不可欠なことだと考えるから。
と御託を並べてみるが、密かにデジタル化に対する抵抗なのかもしれない。
もちろんスマホのメモ機能も大いに役立っているのは事実なので、それぞれのいいところを今後も大事にしていきたい。
少し話が逸れたものの、このように書くことに対するこだわりは死ぬまで持っておきたいので、筆記用具にも実は少しこだわっていたりする。
もっぱら書きやすいジェットストリームと消せるフリクションがスタメンを勝ち取っていて、どちらも4,5本ずつペンケースに忍ばせている。
まさに書くこととペンケースは表裏一体、一蓮托生なのである。
最後に、ペンケースから見るファッションアイテムについて。
最近、若い女性に人気なのが中が透けて見えるペンケースで、どうやらペンケースのみならず、オーロラビニール傘やシースルーバッグ、スマホケースでさえもスケスケにしているそう。
韓国がその先駆けらしく、コスメのみならず小物まで先を越されている現状に、なんとも言えない気持ちになるが、それはまた別のお話。
インターネットが発達し、個人情報をどのように守っていくかを常に考えて向き合わないといけない昨今、アナログなところで自分の持ち物をあえて見せていくという、個人的には絶対にマネできないところである。
まあペンケースに関して言えば、人に見られても問題ないアイテム、むしろ見せびらかして自慢したいアイテムを入れてることもあるので、そこまで過剰に心配する必要もない気もするが、そのあたりを今の若者はどのように考えているのかは正直気になる。
でも透けたペンケースが人気ということは、間違いなくペンケースが自分を彩るファッションアイテムの一部になっていることを示しており、メーカーはその点も含め今後も開発していかなければならないのではないか。
ペンケースなんて多種多様で、どれを使うかは個人の自由。
そこまでこだわらなくてもいいのかもしれないが、こだわってみると意外と奥が深いモノだと改めて気付かされる。
ペンケースから自分の味を出していってもいいのではないか。特に青少年にとっては。
たかがペンケース、されどペンケース。
何でもそうだが、こだわり突き詰めた先にその面白みが待っている、私はそう思う。