P-MAXで、検索キャンペーンの健全度合いが分かる
Google広告のアカウント権限を持っていると、「Google広告アカウントサポート」なるものから連絡がきますよね。
その人達が決まって提案してくるのがP-MAXです。
PはPerformanceのPです。
日本ではP-MAXというプロダクト名ですが、海外ではPerformance Maxという名称です。
P-MAXがリリースされた当時は、私はまだGoogleで働いていたので「うわぁ、DSAとSDCとTrueview for Actionが合体したようなものだな」と思ってました。
ってか、SDC(スマートディスプレイキャンペーン)ってまだあるの?
まぁそんな昔話はさておき、今回はP-MAXだけではPerformanceがMaxにならないという話をしたいと思います。
PerformanceがMaxになる条件
SDCという懐かしいワードが出たので、SDCがなぜあまり使われなかったのかについてまず説明します。
SDCはGoogleが良い感じにディスプレイ広告を配信するもので、当時も主流であったリタゲ・リマケ以外の新しい選択肢として注目されていました。
しかし結果的に今は殆ど見る影もなく、チョベリグと同じように死語になっている気がします。
ではなぜ殆どSDCが使われなかったのか、それはターゲティングと業種・業態に関係があります。
今から説明することは、なぜか殆どのメディアや教材で解説されていません。意味分からん、教えろよ。
SDCは全く使われなかったわけではなく、一部の業界・業態によっては利用されていました。
これらは一見、関係のなさそうな業種・業態ですが、共通点があります。それはコンバージョンのハードルが低いことです。もう少し噛み砕くと、ニーズが顕在化していなくてもコンバージョンしてくれる商材です。
逆にニーズが顕在化しないとコンバージョンしづらいような「旅行」「不動産」「教育」などはSDCとマッチしませんでした。
普通に考えて、ウェブサイト見てたらいきなり賃貸の広告がでてきて、「よし!引っ越ししよう!」と思いませんよね?
もう少し概念的に捉えられるように図にしてみました。
前提、SDCは幅広くターゲティングをしていきながらコンバージョンしそうなユーザーを発見していきます。
そのため、「顕在化していないが需要が幅広いようなサービス」はターゲティングの広さと、ユーザーニーズの広さのギャップが小さいため、CPAを安価に抑えることができます。
実際に漫画バナーを見てアプリインストールをしたり、会員登録をした経験がある人も多いのではないでしょうか。
しかし旅行・不動産・教育・その他諸々のビジネスはニーズが顕在化しないとコンバージョンしてくれません。
そのためターゲティングの広さと、ユーザーニーズの狭さのギャップが大きくなるため、CPAが高くなります。要はコンバージョンしやすそうなユーザーを見つけられない状態です。
その結果、学習が進まなくなり、SDCは泣く泣く停止するハメになります。
機械学習と学習の仕組みは以下のnoteを読んでください。
なので、コンバージョンのハードルが高い=ニーズが顕在化しないとコンバージョンしないような業種・業態ではリマケ・リタゲを使って「顕在化したニーズを刈り取る」という手法が主流だったのです。
冒頭に述べた通りP-MAXの「ディスプレイ面」への配信がSDCの進化であれば、P-MAXでディスプレイ面のPerformanceをMaxにするためには、この業種・業態(コンバージョンのハードル)の条件はマストと言っても過言ではありません。
全く同じ理由でYoutube面やFeed面も、この条件をクリアしなければPerformanceはMaxになりません。
P-MAXはリスティング広告の健全性を評価するもの
「いや、P-MAXでPerformance Maxになってるけど?」って思う方もいるかもしれません。
ここからが今回の本題です。
先述の通り、コンバージョンのハードルが高い業種・業態で実施するP-MAXのコンバージョンの殆どは検索面からでしょう。
もしP-MAXのおかげでコンバージョン数が格段に増えた場合、単にきちんと検索面(リスティング広告)の運用ができていないだけです。
その理由は大きく3つです。
P-MAXはオークション上有利になるわけではない
P-MAXでは広告カスタマイザーを使えない
AIは心理的効果のある訴求を理解していない(現段階では)
P-MAXはオークション上有利になるわけではない
まずP-MAXは、P-MAXだからといってオークション上有利にはなりません。
オークションの流れは以下のnoteで解説していますが、P-MAXの検索オークションも同じ流れで同じオークションに参加します。
最もオークションで優先されるのは「ユーザーの検索語句」と、語順が完全に一致する「キーワード」であるため、きめ細やかにキーワードを登録しておくことは非常に重要です。
もし今の検索キャンペーンよりも、P-MAXの方が検索面における表示機会が多いのであれば、それは検索キャンペーンのキーワード登録が甘いだけです。
P-MAXでは広告カスタマイザーを使えない
きめ細やかなキーワード設定は、広告カスタマイザーで意図した検索語句に対して、意図した広告を出すためです。
それも、これまで紹介してきたnoteで解説してきたので今回は割愛します。
現在のところ、P-MAXでは広告カスタマイザーを利用することはできません。(P-MAXの検索面がDSAの拡張だとすれば、今後もない)
つまりP-MAXはユーザーの検索語句に対して、最適な訴求をすることができないということです。できたとしても登録したアセットの中からです。
これは検索面において、機能的に検索キャンペーンよりP-MAXが劣っている
といえます。
AIは心理的効果のある訴求を理解していない(現段階では)
「いやいや、P-MAXには自動生成アセットがあるでしょう!」と思った方、おはようございアース。
確かに将来的には、この自動生成アセットなしではやってられない!みたいな時代が来るかもしれませんが、現段階では人間が訴求を作ったほうが効果的です。
広告文作成には数値やキャンペーン、日付や期間・期限、記号など様々な作成テクニックがありますが、残念なことに現段階では自動生成アセットはユーザー心理を震わせるようなアセット作成能力はありません。
もし、きめ細やかなキーワード設定をしたのに、P-MAXの方が検索面における表示機会が多いのであれば、それは広告文作成の工夫が足りていないだけです。
P-MAXによる健康診断の目安
これまで説明してきたことを踏まえると、P-MAX(またはDSA)の配信比率が高いアカウントよりも、配信比率が低いアカウントの方が広告アカウントの健全性やパフォーマンスが高いといえます。
じゃあ実際にどれくらいの配信比率が良いのかというと、P-MAX+リスティング広告を実施していた場合、P-MAXが占めるコンバージョン比率は5~10%だと理想的だと思います。
アカウントで100件のコンバージョンがあれば5~10件がP-MAX、というイメージです。
これは私がGoogleにいた時の"肌感覚"の数値なので、あくまで参考程度に留めてください。
またこの数値は前提として、P-MAXの推奨設定を完璧に網羅した上での数値です。そりゃあP-MAXの設定がガタガタなら、P-MAXのコンバージョン比率は下がるよね。
裏を返すと、検索で月100件しかコンバージョンがなければ、P-MAXの学習はかなり絶望的です。なのでおおよそ月500件くらいコンバージョンが発生するアカウントであれば、P-MAXにチャレンジしてみる価値はあるということですね。
5~10%と聞いて「少なっ!」と思うかもしれませんが、月500件のコンバージョンがあって、それが25件増えたら結構ハッピーですよね。 ね?
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