裁判傍聴:常習累犯窃盗 その1
常習累犯窃盗とは、過去10年以内に6ヶ月以上の懲役を3回うけた者。
そのうえで、更に罪を犯すと3年以上の実刑をくらうのであ~る。
てかね、この罪状が付いてる時点で、執行猶予なんてものは無く、容赦なく行ってらっしゃ~い!なのであ~る。
さて今回は、窃盗の中でも強烈な印象を残した、40代後半の女性の話をするとしよう。
保釈金を支払い、シャバに出てるので一般ドアから車椅子で登場。
家族であろう2人が付き添い、甲斐甲斐しく世話をする。
自分の裁判が行われるまで、車椅子から傍聴席に座り待機する。
その際に、オイラの真横に気絶すように倒れこんだ。
そして動物のように唸り、半うつ伏せでヨダレまで垂らしている。
ドン引きぃ~
自分が裁かれる時間になり、証言台に移動するよう言われる。
今度は車椅子に倒れ込む。
フラフラのヘロヘロの、やり過ぎ感満載で手足をバタつかせ、証言台近くで車椅子から転げてみせた。
なに?
コント?
被告女性
『体調が悪くてコンニャクみたいになるんです。
寝ながら証言させて下さい……』
裁判官は、眉間にシワを寄せながら、寝ながらはダメだと断固として許可をせず、車椅子で証言することになった。
審理が始まる前に弁護士から
『精神不安定な為、暴言を吐くかもしれないので、ご承知して下さい』とのこと。
証言台に居る被告女性は、独り言をいい出す
『足が痛い~』
『イライラしてきた!薬!薬!薬をちょうだい!!』
『横にならして~えらい~』
『健康な人は私の気持ちなんか分からん!』
『岡大で検査があるじゃ!』
……などなど
さすがに検察官が静かにするよう促す。
グダグダ状態からやっと始まり、被告が窃盗をした物が読み上げられる。
薄黄色の靴1足。
黄色のワンピース1着。
被告女性
『私は何故か黄色に執着してしまうんです~』
……でしょうね
検察官に、なぜ窃盗をしたかを聞かれる。
被告は泣きながら
『21年間、我が子のようにしてた猫が死んでパニック障害になった』
それを言い終えると、背中を丸めヨダレをたらした。
先に説明したように、この被告は間違いなく懲役である。
少しでも時間稼ぎをしたいのか、それとも実刑を無しの方向にもっていきたいのか……?
弁護士
『被告は、光クリニックでの診断によると解離性傷害であり、クレプトマニア(窃盗症)です。
体調も悪く、今は刑務所での生活は非常に難しいです』
検察官が被告女性に問う
『体調が悪いとは?』
被告
『体はリュウマチ気味だし~、胃を悪くして胃ガンの恐れもあるし~、歯茎が悪く歯も痛むし~、鼻は軟骨がチビて悪いし~、検査と治療の為に、判決を出来るだけ伸ばして欲しいですぅ~』
ほ~
盛り沢山だね
審理の最後に判決日を決めるのだが……
裁判官は、車椅子でうなだれている被告女性をじっくり観察するように見る。
被告女性は時折、手をあげてヒラヒラさせたり、体を左右に揺らしたりしている。
裁判官は、ため息まじりに
『では、1ヶ月後の◯月◯日に判決をしましょう』と締め括った。
この審理が終わった後。
ちょうど裁判所も昼休憩に入った。
待合室に行くと、先程の被告女性と付き添いの家族も後から騒がしくやってきた。
被告女性は、涙とヨダレ後を拭き取っり化粧直しを始める
『どうよ!完璧じゃろ!』
いや……
芝居は猿の方が上手いぞ
乗っていた車椅子は、裁判所で借りた物らしく、そこら辺に放り投げ普通に歩いて帰ったのである。
さすがに、裁判官も、検察官も、下手な芝居を信じるとは思えないが、被告女性はどんな手を使っても刑務所に入りたくないのだ。
まぁ、どんなに頑張ったとしても実刑は確定だけどね。
なんともキャラの強い被告女性であった。