裁判傍聴:窃盗 その2
窃盗の裁判は実に多い。
そのぶん窃盗された物も様々であ~る。
【窃盗】(ろ)第96号
20代後半の男性。
ガリガリに痩せ、服装はヨレヨレ。
目が覚めるようなブルーの長袖のポロシャツ。
下はグレーの短パン。
そして膝まである長いソックスで登場。
失礼ながら、その風貌なんか変。
家族でノリ養殖を営んでいたが、両親が亡くなり、程なく閉店した。
現在は京都で生活保護を受けている。
起訴状を読み上げる検察官
『○○は、京都からわざわざ岡山に来て、江崎グリコミルクキャラメル1箱160円を窃盗した』
あぁ、グリコのね…………
って、オーーイ!!
さすがにメモを取る手が止まる。
聞き間違いかと思い、起訴状に集中する。
検察官は、おお真面目に、やっぱりキャラメルと言う
……マジっすね
おまえ、京都から何しに来たんだ状態。
そして傍聴席でクスクスと笑いが聞こえだす。
裁判の邪魔になれば、即退場させられるので、みんな必死で笑いを堪え、肩を震わしている。
笑いを堪えることで、さらに可笑しなことになり、中には涙を流している者までいた。
自分も笑いにつられ、歯を食い縛りながら、震える手でノートに
「被告、キャラメル好き」
と記入した。
窃盗
たかがキャラメル、されどキャラメルなのであ~る。
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