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はす向かいの彼女たちへ

一昨日の昼間、スーパーへ行く時、はす向かいに住む姉妹が玄関脇で大きな段ボール箱と格闘しているのが見えた。
自分たちの背丈に近い四角い箱を抱えたり引っ張ったりしていて、移動させたいのか開封しようとしているのかわからない。
そのおかしな動きが気になり、クルマに乗り込んだあとしばらく眺めていた。

姉は高校3年、妹は中学3年。ふたりとも受験を終え、最後の春休みを満喫中というところだろうか。
箱の中身は、大学入学と同時に親元を離れる姉の、ベッドか何か大きめの家具かな。いや、家具はふつう新居に直接配送するだろうから、違うか。
とりとめのない想像を断ち切り、エンジンをかけた。

2年前までのおよそ20年間、自宅で子どもたちを教えていた。
今思えばあまり向いているとは言えなかったが、子どもと接することはわりと面白かった。
近所の子どもたちが入れ替わりやってきては、卒業したり、途中で辞めたり、のちにそのきょうだいが加わったりもした。

はす向かいの姉妹は、ふたりとも小学校の入学前から中学生まで関わった。
優秀で何事にもそつのない姉と、愛嬌ある自由な妹。わりとよくあるパターンかもしれない。「となりのトトロ」のさつきとメイみたいに。

巣立っていく人たちを見送ることを、何度も繰り返した。
やれやれと胸を撫でおろすこともあれば、不覚にも涙が止まらないこともあった。

始まったことには必ず終わりがくる。たったそれだけのことにいろいろな意味づけをして、3月という月は感傷的にとらえられ過ぎていないか。
と、そんなふうに思うくせに、職を離れてもこの時期なんだかそわそわする、自分がおかしい。

住宅地を走る広めの道路、十字路のはす向かい。
見通しはいいが、声をかけるには距離がある。
無言のエールを、勝手に送るね。あなたたちの今と、これからに。
卒業おめでとう。

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