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退職のご報告(おきもち)

これはただの私的なエッセイなので、適当に曲を聴きながらお楽しみください。

退職エントリに集まって来られた皆様。僕はあなたの短期的な利益やリファラル採用には貢献できません。デザインやプロダクトに悩みを抱えている方には長期的にしっかりと利益をもたらすご相談はできます、どうぞお問い合わせくださいませ。

退職ネタをちょっと喜んでしまう方々、ここにはあなたの喜ぶことは書いてありません。「最近、退職おおいですよね」「Gpの知ってる人みんなやめちゃいました」「そろそろやばいって聞きました」最古参社員だったので、僕は反論してもいいでしょう。そう言われ続けて十年間、弊社はずっと成長を続けてきました。当然、波はありますが、組織崩壊だろうが何だろうが、現場で踏ん張ったみんなの努力で、ここまで成長してきました。

良いことも悪いこともたくさんある中で、物事が悪くなっているというストーリーを作り出すことは簡単で。逆に、きらきら輝く未来を見出すことは非常に難しい。ポジティブなストーリーを創発し紡ぎ出す能力は、大きなことを成そうとするチームに必須のデザイナーの一種なのですが、これまでの人生の中でも両手で数えられるほどしか出会ったことはないのです。

なので、ほとんどの人がネガティブなストーリーを勝手に考えてしまう中で、世論は形成され、もっともらしく論理的な意見として私たちの周りを飛び交うわけで。そんな、重力がものを引っ張るくらい自明なメカニズムが働く中で、その思考に乗っかることは、なんて楽な選択なのでしょう。ただ、ヒトや葦であろうとするなら、自分が信じたいストーリーを信じるべきだと思います。

Goodpatchには今が一番いい人が集まっているし、人数の規模も大きい、テクノロジーの追い風(にできるかどうかは頑張り次第)もある、業界内のポジションという意味でも、総合して弊社を超える企業はないと、僕は(当然、主観的に)断言できます。だから僕は他社に転職する合理的な理由はここまで見出せなかったのです。ありがたいことにデザイン会社からGAFAMクラスの事業会社まで、多くの内定をいただこうとも、グッドパッチで自分が成せるであろうことと比べて可能性を感じることはできなかったわけです。

過去を振り返っても、入社直後にサンフランシスコ社員旅行に連れて行ってもらい、2013年当時の現地の空気に触れ、GoogleやAppleを訪問し、スタンフォードのd.Schoolで講義してもらい、PinterestやEtsyなどのスタートアップで話を聞くことができました。そして、「ここは憧れるべき別世界ではなく、友達になれる人がいて、自分たちと世界は繋がっている」と体感することができました。当時のCCOとともに、マネーフォワードさんのアプリデザインで日本の中で先駆けてiOSネイティブらしいデザインを実現することができたことや、他案件でも海外の先端企業の動きに先行して実現できた戦略やデザインを作れたのは、曲がりなりにもサンフランシスコで世界と繋がった感覚があったからだと信じています。当時の僕が取れる選択肢で、こんな体験ができる可能性は、ここ以外なかったと断言できます。

SF旅行のおもいで

そんなことを考えながら10年ちょいやってきました。当然ながらその間も、決して道のりは順調ではなく、辞めろと言われたことも、辞めると言ったことも数知れず、組織が崩壊したりして一番多くの別れを経験し、多くの失敗と誤解と喧嘩を繰り返してきましたが、僕はずっとGoodpatchの可能性を広げ続けたいと思っていました。一つ前までは毎年、酉の市で熊手を買い続けてました。

前置きが長くなりました。

そんな生き方をしてきたので、いわゆる退職エントリというものが苦手で苦手で、そのスタンスをただ嫌悪していました。そもそも会社と個人の関係性の歪さに嫌気がさしてAnywhereを作るくらいには、自分も会社を作っている1要素なのに「会社がさぁ」とかいう生き方はしたくはなかったんですよ。

それでも、前職の在籍年数の8年を超え、想定しているよりも事業成長ができていないという現実(夢みがちなので圧倒的に事業成長したいと思い続けています)もあり、これまでのアプローチを根本的に変える必要を感じていました。

ここ数年間、行政や教育機関でも活動させていただいたり、自分で会社も立ち上げてみたり、これまでよりもさまざまな経営者の方を話をするようになりました。さらに、そんな僕も昨年紆余曲折を経ながら子供を授かり、半ば強引に幾許かの育休をいただき、その後も有給などを消化しながら、半年くらいの充電期間を取りました。

その中で見つけた可能性が、外部からグッドパッチの事業を支援をするということでした。あくまでも社内で1社員として工夫するのではなく、融資や投資を含めて自分でリスクを負えるようにした上で事業貢献できるようにし、各ステークホルダーの存続可能なエコシステムを作りたいと思いました。

もちろん、内部でやれよという方がストレートだとは思いますが、それもAnywhereの思想(?)に反するのではないかという直感があり、正社員信仰の幻想を破りたいという考えの方が強くなってしまったのです。これで晴れて、僕も普通の正社員ではなくAnywhereスタイルの契約形態に移行できる…。DAOの世界も最近また盛り上がっているし…、やりたいことは色々あるんです。

ちなみに一連の考えや行動は、明確にいつ発動したという類のものではないし、結論ありきで動いていたわけでもなく、これまでの人生で積み重ねた大事なものと、数年かけて色々チャレンジしてきたものからなんとなくグラデーションのように移り変わる中での、今この状態ということです。ぶかぶかとおおいに不確実性の中に漂っている状態です。きっと明日には違うことを言っているでしょう。そんなもんです。

入社して数年くらいで、全体ミーティングで社長から何気なく「お前が一番グッドパッチを愛しているということはわかった」と言われてから、僕の生きる方向が決まったと思っています。自分で何かを産み出せるわけではなく、突出した才能を持っていないコンプレックスの中では、愛することだけがアイデンティティでした。おそらく本人は何の気なしに言ったと思うんですが、その言葉を勝手に信じ込んだ勢いで、10年以上Goodpatchを愛し、誰よりも長く立ち続けることができました。

改めて、社長、辞めて行ったみんな、残っている人、エニィたち、(当然エニィなんだけど)Anywhereのバックオフィスチームのみんな、自社のメンバーのように仲良くしていただいたクライアントの皆々様、イベントなどで気にかけてくれた皆様、全ての皆様に支えられてここまでやってこれました。本当にありがとうございました。

これからも僕は老害らしく、「一番大きな実績作ったし(主観)、売上も一番作ったし(妄想)、一番採用したし(一部詐称)、一番長く在籍したし(事実)、これからも一番長く関わり続けるし(意志)、僕が一番グッドパッチを愛しているし(自称)!」という自負と覚悟をもって生きていきます(こんなもんは妄言だから、みんなは気にせず自分が一番になってくださいね)。

これからのこと

具体的には何も発表などはしていないですが、近日中になにか発表できればと思いますので、各種アカウントのフォローをお願いいたします。デジタルプロダクトやサービスを作る人には絶対貢献するので!



後ろ盾を持てなくなった哀れな子羊を、どうか応援していただけるとありがたいです。ちょいちょい拡散協力いただけるだけで僕はもう幸せです。



大好きなエニィたちへ(一部内部Slackに貼れなかったので)

お疲れ様です。気がつけば、7月でけいたはGpを退職し、晴れて身分がほぼ無職になりました(ギリ非常勤地方公務員でもあるけど…)。
後で述べますが、昨日までの僕と、今日からの僕で何か違うかというと別に変わることはないのですが、一応節目ではありますのでちょっとだけお目汚し失礼します。なんだかんだ2013年に入社して、10年以上の在籍となり、サイコサンシャインの称号を手にしてからもだいぶ長かったのですが、新規事業だと思っていたAnywhereもその歴史の半分を占めるまでになっていました。なんだかんだエニィで遊んできた写真を見ると目頭が。

Anywhereに集まってくれた皆様とともに、プロジェクトに取り組んだり、悩んだり泣いたり笑ったり、喧嘩したり、深夜までだべったりと、オンラインであったとしても、圧倒的に濃ゆい人間としての付き合いの中で仕事ができたことが、こんなに怠惰な自分を楽しく働かせ続ける原動力でした。かねてからお伝えしている通り、事業責任者としての運営はとうに引き継がれていて、今後は外部からの営業活動に注力することになります。採用と離職防止が極端に難しいこの業界において、Anywhereというスケーラブルな組織をみんなに作ってもらった、次は営業力だ!そのために、経営としての自由度とリスクを上げて、外部から営業&プロジェクトサクセスするチームを作りたいというのが僕の気持ちです。これからもみんなでAnywhereを支えていってもらえるとありがたいです…何卒。

そしてこれも、ずっと言っていますが、正社員という法的にも何の裏付けもない身分だけが信用される世界から、Anywhereはそんなの関係ない世界にひとっ飛びできたので、あんまり入社とか退職とか、どうでもいいと思っていますし、むしろ明日また一緒にプロジェクトするかもしれないよねという状況において、あまり盛大にセレモにってしまうとなんか気まずくってむしろ良くないのではとは割と本気で思っています(絶対にめんどくさいとかじゃないんだから!)。なのでひとまず、Anywhereに関わってくれた全ての皆様に感謝を捧げつつ、今日からまた変わらずにお付き合いくださいませ。独立したところで変わらず、1人では一番能力が低いので、これからも懲りずに助けてください。

楽しそうなのを遠くで見るんが一番幸せなんやで。

追伸。
娘はすくすくと育っていて、ひといちばい大きな体と声でそろそろ歩き出しそうです。夜寝る時はすんやり、起きてしまっても自分でおしゃぶりを見つけてすんやり、壁に頭をぶつけてもすんやりでめっちゃかわいいです。まもりたい、この笑顔。


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