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足すとだいたい1になる分数の組み合わせは、なぜだいたい1になるのか(2)

前回の記事をお読みでない方は、まずそちらをご覧ください。

(なお、冒頭のUKイラストは本題と完全に無関係です)

前回のおさらい

「くもん出版の『はじめての分数パズル』で、足して1になるはずのない分数の組み合わせでも『和が1』の枠に収まってしまう」というバズツイに遭遇し、強欲な私は以下のような表を作りました。この表の例では、和がいずれも 0.995 と 1.005 の間に入っています。

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「なぜこのような組み合わせで『ほぼ1』が実現できるのか」を説明しようというのが前回と今回の記事の目的です。
前回の記事では、【 1/8 + 1/8 = 0.250 】と【 1/7 + 1/9 = 0.254 】のように、分母に登場する数を前後に少しずらしても、分数の和はあまり変わらないという話をしました。今回はその先のお話です。

足して引いてちょっとずらす

上の例のように、 分母を (8,8) → (7,9) と変更するパターンは既に見ました。それでは、分母を6にして、(6,6) → (5,7) としてはどうでしょう。すると、
【 1/6 + 1/6 = 1/3 = 0.3333 】
【 1/5 + 1/7 = 12/35 = 0.3428 】
となります。この2式の差は 0.0095 なので、このまま使うと「1との誤差を 0.0050 以下に収めたい」という目標に届きません。
1/8 の場合に比べて、1/6 は分母が小さいので、それを変化させたときの誤差が大きくなってしまうのです。

そこで、これらの式に何かを付け加えて誤差を減らすことを考えましょう。そこで登場するのがこの式です。
【 1/6 + 1/6 + 1/9 = 4/9 = 0.4444 】
【 1/5 + 1/7 + 1/10 = 31/70 = 0.4428 】
太字になっている 1/91/10 を追加しました。上側の式には下側の式より少し大きい数を足したわけです。この操作で誤差は 0.0016 程度まで減少します。

最初の表に戻ると、次のような組み合わせが見つかります。

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この組み合わせは、以上のような操作で説明が付くというわけです。

7をやっつけろ

この分数パズルには 1/7 のピースが7枚入っています。7という数は他の数と相性が悪く、ラッキーセブンどころか、むしろ迷惑な存在です。和をちょうど誤差なく1にするには、「1/7 を 7 枚全部使う」か「1/7 を1枚も使わない」のどちらかしかありません。

そこでこの厄介な 1/7 を別の数に置き換えることを考えます。前回の記事の例では、分母の (7,7) を1つずらして (6,8) に変えるパターンを見ました。また、(7,7) を (6,9) に置き換えて、誤差を別の何かと相殺するパターンもありました。

ここではそれ以外の置き換えがないか考えましょう。1/6 ではなく 1/5 はどうでしょう。まず「2つ足して2つ引く」のではどうだろうかということで (5,9) としてみましょう。
【 1/7 + 1/7 = 2/7 = 0.2857 】と【 1/5 + 1/9 = 14/45 = 0.3111 】になりました。残念ながら、これは誤差が大きくなりすぎてダメです。1/7 と 1/5 の差を 1/7 と 1/9 の差では埋められないのです。

そこで、1/9 ではない別の数を試してみましょう。すると、(5,12) という組が見つかります。
【 1/7 + 1/7 = 2/7 = 0.2857 】と【 1/5 + 1/12 = 17/60 = 0.2833 】となるので、誤差は 0.0024 くらいです。うまくいきました。ラッキーですね。

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こういう方向性で登場したのが上の例です。
(7,7) → (5,12) という変換は誤差が小さいので2回繰り返すことも可能です。

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はい、なかなか綺麗ですね。『ほぼ1』の表の中には 1/7 がたくさん登場していますが、(6,8) や (6,9) や (5,12) に対応させる複数のパターンがあったからなのです。

もっと7をやっつけろ

最後に残った2例は、これまでのパターンの組み合わせで説明できます。

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これは今回見た (7,7) → (5,12) と、前回見た (7,7) → (6,8) との複合技です。

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最後の組み合わせは (7,7) → (5,12) と (9,9) → (8,10) を使って達成できます。

この最後の組み合わせの何がすごいかというと、誤差が 1/2520 しかないところです。つまり1との差はわずか 0.04% です。もはや知育玩具の精度では1との区別は不可能と言ってよいでしょう。

というわけで、「くもん出版、敗れたり」と勝手に勝利宣言してこの記事の締めくくりといたしましょう。なお、主たる敗因は 1/7 なんてピースを入れたことでした。めでたしめでたし。

それでは、皆さんもこのパズルを買うことがあれば、『ほぼ1』になる組み合わせを色々とお試しください。



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