19の煌き2新刊「CUMULUS」制作秘話
はじめてのイラスト同人誌
前回のエントリは19の煌き2のイベントレポートでしたが、今回はそこで頒布した同人誌の方の制作秘話です。タイトルっぽくしたかったから秘話ってつけてますがそんなに面白い話も特にあるわけでもないです。
19の煌き2開催にあたり、参加する事は決定事項ですがどんな本を作って参加しようかという点について、色々と考えてみた結果、紆余曲折あって最終的にイラスト本を作ろうという事になりました。
これまでにそこそこの数の同人誌を作成しましたが、九割がコピー誌なのでオフセット同人誌というものをほとんど作った事がありません。というかオンデマンド形式の本しか作った事なかったわ。売れないから。
という訳でフルカラー本も作った事がありません。高いし。
ちなみに昨年は初めて小説本を作りました。
なんだかんだ言っても初めてというのは面白そうな事ですので、やってみたくなるのです。
印刷会社さんはイベント提携してくださったねこのしっぽ様に決定です。色々調べてみたんですが、わざわざイベント提携までしてくださった所に頼むのが筋というものでしょうし。
苦肉の策
さて、イラスト本を作るといっても秋頃の段階でまともなカラーイラストは五点くらいしかありませんでした。
という訳で「イラストが少なくても何とか間が持つ本を作ればいいんじゃないか?」というのが当初のコンセプトのとっかかりでした。
「そもそもイラスト単体で売りになる本じゃないだろお前の絵は」
「というかイラスト集なんて神絵師が作るもんじゃねえか」
「スペースで表紙めくった人が表情曇らせて本を戻したら帰りの新幹線はドアじゃない所から乗り込もうとしかねないだろ」
などという脳内会議の結果、レイアウトと文章で誤魔化そうという事になったわけです。一応そういう系統のお仕事をしていた事もあって、レイアウト先で何か作るのもそんなに大変な事でもありません。
おおよそのレイアウトを思い浮かべながら、KindleUnlimitedを利用してファッション誌を読みながらレイアウトを具体的にパク……参考にして作っていきます。ファッション誌そのもののパロディという形式ではないので、占いとか雑多なページを作ったりはしませんでした。そういう同人誌を買ったことがあるんですけどあれは一人で作るものではないと思います。今回はあくまでイラストの見せ方を工夫した本という程度。
基本的なレイアウトとして「1人見開き2ページで語る。1ページに大きめイラスト、隣に小さなカットを2枚くらい」というのがあるのですが、この辺を「もともとイラストを描いてあった人」とかに限定していた時はそんなに大変な作業でもなく、描き下ろしも数枚で済むかなと思っていました。にぃさんの絵は落書き一枚しかありませんでしたが、逆に語りたいと思っていたのでページだけは確保してありました。まあ何とかなろうだろうと思って。
肥大化するボリューム
方向性が変わったのは「リツイートした分だけ絵を描く」企画に乗った奴ですね。
まあ普段のリツイート数からすると10人くらい描ければいいかなーと思っていたんですが今の所50越えてました。新刊作業に入るまでに30人くらい描いてまして、「これ入れたらボリューム上がるんじゃね?」と気付いてそのようにしてみたところ、ページ数が増大。せいぜい数枚書き下ろして薄い本になればいいでしょと思っていたのがどんどんボリュームだけ肥大化していきます。
人間、欲をかきはじめると際限なくなっていくものです。
ここまでやったならこれも入れよう、あれも描こう、なんだいイベントが延期だって? じゃあ〆切も延びちゃうね! だったらページ増やせばあれも入れられるね! とかやっていたので二月になってから大幅に作り替えてしまいました。ついでにいくつか絵を塗り直したりしました。さらに描き下ろしも増えました。当時ガチイベの結果が出たりしててそのお祝いの絵をツイッターに上げて、そのまま本にも入れました。
気がついたら収録イラストが70点を超えました。
描き下ろしや修正したイラストも15点を超えました。
描いたSRバーチャル配信者は40人を超えました。
書いた文章は15000字を越えました。イラスト本なのに。
昨年の小説本より文章量が多いぞ。イラスト本なのに。
作業も〆切前日まで続けました。ギリギリまで絵を描き続けて、文章も直しました。ここにきて丸ごと塗り直したりしたものもあります。とにかく良いものにしたかったので妥協点を限界まで上げました。今の自分に出来る事を大体突っ込む事で、自信を持って「これが今の自分の最高傑作ですよ」と言えるものにしたいと思いました。
本気を出すことのリスク
僕は自己評価が極端に低いタイプの人間です。そのために真面目にやる事を恐れがちになります。真面目にやった事が評価されない事を恐れます。だったら最初から本気でやってない事にすれば、低い評価を下されても「いやまあ本気で作ったわけじゃないからさ」と言い訳が立ちます。なんなら自分からこれは本気で作っていないから評価しなくていいよ? みたいな雰囲気を醸し出したりします。カラオケでネタソングを歌うことで歌唱力を問われなくするような、落書きしか描かない事で仕上げたイラストの評価をされないようにするような。
今回はそれをしないようにしたかった。評価軸は他人のソレでもなく売り上げでもなく、自分がどれだけ胸を張れるかという所に持っていきましたが、それでも後で見返しても正視に耐えられるものにしたかったし、存在をなかった事にしたくなるような本にはしたくなかった。売れ残るであろう在庫を焼き捨てたくならないようにしたかった。
絵については時間が経過する事でどうしてもアラが見えてきたり恥ずかしくなってきたりするんで、それは仕方がないとしても全力で描いたものってそれなりに気に入る部分があって、まだ見られるものになります。今回の描き下ろしイラストについては幸いにしてまだ正視に耐えられます。
今回の新刊はVの人を題材にしたイラストの本ですから、普段の二次創作とはちょっと違ってナマモノジャンルに近いところにあります。イラスト対象者がイラストを見る可能性がちょっとあります。そんな本を指して無駄に強い謙遜をするというのはもはや対象者に失礼と言ってもいいし、そんな事を本人の耳に入れたくありませんね。
という訳で全ページフルカラーの薄い本が出来ました。
レイアウトはAdobe InDesignを使用。
イラストは古いものはSAI2を、それ以外はクリップスタジオを使用しました。
入稿を済ませて、あとは本が出来上がるのを待つばかり。
納品はイベント当日の会場納入となるのでイベントが始まるまで読めないんですよね。仕上がりがわかりません。ちょっと不安。
反省点など
前回のイベントレポの通りのアレで無事に本が仕上がってました。
一つだけ失敗したのは、表紙にPP加工をしてもらった事です。
全体的に光沢のある仕上がりにしたかったのでコート紙を選択し、オンデマンドの塗膜の弱さを補うべく表面加工を施したのですが、これによって色が大分赤くなってしまったのです。
物によるんですけどPP加工って若干色が赤くなる傾向にあるんですね。マゼンタが数%高くなって見える。透明なフィルムとはいえ完全な透明というわけではないので。
その辺の事を完全に忘れていたのでイラストに調整をかけておらず、しかも逆光の表現をしていたせいで顔のあたりが想像以上に暗くなってしまいました。画面上ではそこまで気にならなかったので(今見ると十分暗いけど)うっかりしていました。元プロなんじゃなかったのかよ。
ちなみに合同誌に寄稿させて頂いたバージョンは逆光処理していないので明るいままです。あと胸のボリュームが数倍あります。え?これよりでかいの?と思った方はぜひ合同誌を見てください。
ちなみにタイトルは「CUMULUS」。これは積雲の学術名です。ラテン語で積み重なったものという所から付けられた名前で、ついでに語源として膨らむ物という意味もあるそうです。一年間の集大成というべき本に付けるタイトルとしては一番合っているかな、ついでにファッション誌のロゴっぽく作りやすそうだなという所で決めました。
まあそんな訳で新刊であるSHOWROOMバーチャル配信者イラスト集「CUMULUS」、BOOTHにて再版分が絶賛予約受付中ですので是非お買い求めください。再版かけなきゃトントンだったのに九条家の推理ともども再版かけちゃったので大赤字です。無職に酷い仕打ちだと思いませんか。思った方は是非お買い求めを。