蒼蘭訣における金庸の影響

WOWOWオンラインでの蒼蘭訣の放映が1月いっぱいで終了してしまい、悲しい。もちろん、DVD BOXも購入し、先日、3巻中の第1巻が到着したのだが、DVDは好きな場面を飛び飛びで観るのに、一々DVDを出し入れするのが面倒である😅

閑話休題。以前、どなたかのブログで、陳情令には金庸の影響が沢山ある、と拝見したので、笑傲江湖を読んでみたら、実に面白かった。彼の作品を全部読みたいのだが、残念ながら全て絶版なので、図書館から借りてボチボチ読んでいこうと思う。

笑傲江湖を読んだくらいのシロウトがドラマへの影響を語るのも僭越だが、蒼蘭訣を観ていて、明らかに金庸の影響だと思われる箇所があったので、記してみたい。

  1. 名前—-笑傲江湖の悪役は東方不敗だが、蒼蘭訣の悪役は東方青蒼。これは偶然の一致ではない、と思う。

  2. 善悪の相対性—-笑傲江湖では様々な武術の流派があり、その中で師弟関係がある。主人公の令狐冲は「正しい」流派に属していて、東方不敗率いる魔教の流派は絶対悪の存在だ。しかし、令狐冲は自分の流派を咎なくして破門されてしまうのだが、魔教の姫と恋仲になり、様々な経験をしていく内に、自分の流派が絶対善で魔教が絶対悪というのが間違いであることがわかる。                         蒼蘭訣においても、小蘭花は「正しい」仙界から叛徒と見做され、追放状態になるが、悪人ばかりと思っていた月族は実は、家族思いの心情を持つ、普通の民であることがわかる。悪の帝王のはずの東方青蒼だって、七情を失っている状態でさえ、領民思いの為政者だ。そして、正しいはずの仙界も、差別と偽善が横行していることを、東方青蒼に喝破される。何より、仙界の本当の敵は他ならぬ仙界にいたことがわかる。

  3. 合奏が人を、世界を変える—-蒼蘭訣で少々強引に入っているエピソードに、長珩と東方青蒼が、成仏出来ない元神を救うために、敵同士ながら、琴を合奏する場面があるが、これは明らかに笑傲江湖のオマージュであると思われる。笑傲江湖というのはそもそも、琴との合奏曲である秘曲で、江湖のしがらみを笑い飛ばすという意味がある。正派の令狐冲と邪派の姫が、この曲を合奏して心を通わせるのだが、自分は正義、相手は悪、と決めつけ、憎しみあい、戦いあうことは虚しく、話し合えばどうこうなるものでもない。でも、頭ではなく、心に訴えて、憎しみの垣根を取っ払う力が音楽にはあるのだ。(陳情令では、音楽にそこまでの影響力があるために、悪用されてしまったりもしたが。)

現在、世界は混沌としていて、戦争が止まない。みんなでカラオケして一緒に歌えば仲良くなって戦争も終わるよ、なんて言ったらアホすぎる。でも、現実はファンタジーの中のようには行かないからこそ、より、ファンタジーの世界に惹きつけられるのかもしれない。


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