ラーメンマンをファッションチェックして気づいたこと。(#26)
前回の記事(#25)に引き続き、ラーメンマンについて、今回は衣装です。
彼は辮髪同様、実は清朝由来の衣装を身に着ています。
ちなみに日本で“チャイナドレス”と呼ばれるものは、一般的に女性の衣装で中国語で“旗袍(qipao)”と呼ばれます。
こちらも清朝貴族文化由来のもので、現代中国でも礼服として扱われています。
ただ広い意味では男性の衣装でもありました。
清朝以後はガウンタイプの“長衫”や“唐装”、中華人民共和国建国以降は人民服(マオカラー)などがあります。
※長衫
※唐装
※人民服(マオカラー)
ラーメンマンの衣装
ラーメンマンの衣装は超人になる前(修業時代)は唐装そして超人後は旗袍の2ピースタイプ(上着とパンツ)が披露されています。
引用:『闘将‼︎拉麵男』第一話より
2ピースタイプはスリット(切れ目)が入っていないため、ドレッシーな見た目とは裏腹に動きにくいのではという疑念が残ります。
反対にキン肉王位争奪編の際、着用しているタイプは体のラインに沿った現代版チャイナドレスにある可憐さを表現するとともにジャージ素材、あるいはコンプレッションウェアのような伸縮性・機能性を兼ね備えているようにも見えます。
ちなみに現代旗袍の大きな特徴は以下3点です。
・立襟
・大襟(斜め開きの襟)
・スリット(スカートにある切れ目)
超人になったラーメンマンの衣装には立襟の他に、大襟のディテールが追加されているのが分かります。
“キョンシー”の影響?
上記の衣装は主にラーメンマンのスピンオフ『闘将‼︎拉麵男』からの抜粋ですが、この第一話にはメンマという女の子が登場します。
引用:『闘将‼︎拉麵男』第一話より
何故この女性を取り上げたかというと、彼女にも清朝時代を思わせる特徴があったからです。
彼女の髪の毛は左右それぞれに丸めた両把頭(シニヨン)と呼ばれるものがあります。
実はこの髪型も清朝時代の女性の習慣です。
※旗袍を着て、シニヨンで髪を整えた満族の貴婦人
尚、現代中国では56の民族があるといわれ、55が少数民族です。
そして今も昔も漢族が圧倒的人数を占めています。
ですが、日本で中国を表現する際、清朝由来のものが登場します。
なぜでしょうか?
それは今のように中国を連想できる情報に乏しかったこと、中国を連想するとき香港・台湾からヒントを得ていたことが挙げられます。
特に1985年(日本では1986年)公開『霊幻道士』の大ヒットとそれに続く1986年台湾版『幽幻道士(キョンシーズ)』が与えた影響は大きかったと思います。
影響を受けたと思しきキャラクター
実際影響を受けたと思われるキャラクターを御紹介します。
①『ドランゴンボール』:チャウズ
②ベビースターラーメンの2代目キャラクター:ベイちゃんとビーちゃん
③ストリートファイターⅡ:春麗
④『らんま1/2』:シャンプー
いかがでしょうか?
実は他にも多数あるため、抜粋です。
1980年代、そして。
全てが1980年代後半以降に構想、掲載しています。
60年代後半から70年代にかけて中国では文化大革命が行われており、男女の多くが人民服を着用していました。
その後、改革開放路線に方向転換しますが、それ以前は日中戦争など第二次大戦の時代であり、80年代の日本には中国の過去を上手く表現するアイテムそのものがなかったともいえます。
加えて漢族の民族衣装“漢服”は韓国の“チマ・チョゴリ”、日本の着物へと発展した衣装です。
言うなれば兄弟、つまり、似ているのです。
そのため、アイキャッチで簡単に差をつけるために清(満族)の衣装の方が印象的だったというのも点も否めません。
奇しくも様々な日本の漫画が国外で評価されることで奇怪さを留めつつ、時間を経ていきました。
そのため、日に日にこの“奇怪さ”が“奇怪さ”を醸成させているようにも感じられますが、その時代性を味わえるのはまた面白いかもしれません。
芸術作品の味わいが歳とともに変わるように、往年の作品にも違った楽しみ方があると思えば、納得できるのかもしれませんね。
≪参考記事≫
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