ナンバーナイン...ナンバーナイン...
ポッドキャストというものをご存知だろうか。ポッドキャストとはざっくり言えばテレビやラジオみたいな放送番組で、iPodとbroadcastを組み合わせた造語である。最近私はspotifyにあるポッドキャストの一つ「POP LIFE」を入眠時に聴くことが習慣になってきている。このポッドキャスト「POP LIFE」は、音楽評論家である田中宗一郎氏と、趣味が音楽であるモデルの三原優希氏が毎度ゲストを迎えて音楽、映画、漫画などのポップカルチャーについて語るというものなのだが、これがドンピシャで私のハマるものだったのである。ゲストにはたまに私も知っているような人物が登場し、メディアには見せない一面を見せることもある。最近の回では、私の好きなバンドであるNUMBER GIRLのBa.中尾憲太郎氏がゲストとして登場した回があった。その回は私は非常にウキウキしながら聴いていたが、中尾氏と共にゲストとして来ていたミヤシタという人物が酒を飲んだ状態で出演していたようで、終始ほぼ泥酔状態であった。その状態のままミヤシタ氏は他人の話を遮る上に、若干支離滅裂な話を無理やり展開していくためスタジオは困惑した空気で包まれ、その雰囲気もリスナーに充分伝わっていたと思う。そのまま終盤では放送事故感が漂い、私の楽しみにしていた中尾氏の話はこのミヤシタというおっさんのせいでほとんど聴けずに中尾氏の出演した回が終わった。そのせいで私は相当ムカついおり、このミヤシタという奴は誰だと、調べ始めた。
するとこのミヤシタはファッションデザイナーである宮下貴裕という人物同一人物であることがわかった。彼はブランドのNUMBER (N)INEを立ち上げた人物のようである。するとここであることに気づく。宮下貴裕という人物は知らないが、このブランドは知っていたのである。何故知っていたのかというと、学校の先輩がこのブランドの服を着ていたのを見たというのもあるが、このブランド名はビートルズ由来のものだからである。私のビートルズで一番好きなアルバムである2枚組のセルフタイトルアルバム通称「White Album」の最終曲の一つ前の曲に、ビートルズの公式発表曲で最も長い楽曲(8分21秒)として知られる「Revolution 9」という曲がある。あまりにも実験性の高い曲のため、ビートルズの最悪の曲と言われることもある本作であるが、冒頭で「ナンバーナイン...ナンバーナイン...」というアナウンス音が聞こえる。このアナウンスから名前が取られたブランドこそがNUMBER (N)INEなのである。
ビートルズ関連のWikipediaを読み漁っていた時期に「Revolution 9」が由来のブランドが存在するということは知っていたが、まさかそのブランドを立ち上げた人物こそがミヤシタこと宮下貴裕氏だとは全く思っていなかった。この人物が私の予想もしていないところでつながっていたという事実は、ポッドキャストを聴いてムカついて調べ始めなければ発覚しなかったことであり、すでに怒りの感情は感動に変わっていた。とりあえずNUMBER (N)INEのショップを覗いてみると、Kurt Cobainが着用していた赤と黒のニットっぽいものやNINE INCH NAILSのロゴ風にNUMBER (N)INEと描かれたスウェットなどビートルズ以外にも様々なバンドを思わせる服があった。次第に欲しい気持ちが湧いてくるのだが、金額を見てうなる。私が自分のお金で買った服の最高額は6500円なのだが、遥かにそれを上回るような品ばかりである。そして金額が低い順に並び替えてある程度見た後、そっとメルカリを開くのだった。