NovelAIは難しい / AI利用者はどうあるべきか
経緯
先日、NovelAIを使用してみました。
元々、「NovelAIのDanbooru使用案件」を見てからというもの、無法地帯過ぎるAIイラスト界隈に少し嫌気を感じていました。一方で、mimic等の最低限整備されていた諸サービスが理不尽な具合で荒れたこと、そして各サービスに対する風当たりの異常な差に対しても気味悪さを覚えていました。
とにかくAIは素晴らしい技法であると頭の中では理解しつつも、上記の理由から何となくとっつきづらさを感じていたのです。
とは言え、こうして世に解放されてしまった以上、AIが芸術表現におけるゲームチェンジャーになることは間違いなく、今後の表現方法の1つとして確立されるであろうと判断したので、加害者意識を持ちながらもAIサービスを利用することにした次第です。
やはりこういうものは自分で実際にやってみると価値観が変わってくるものです。200枚くらい生成してNovelAIの活用法について感じたことを整理します。
NovelAI試用感(2022/11現在)
思った通りの画像を出すのは難しい
想定通りの画像を出すには技量が必要です。プロンプトだけで生成するよりもimg2img(ラフを描いて変換する方法)を用いた方が現実的なのかもしれません(試していませんが)。
例えば以下の画像は「サイバーチックで背景はネオン、少女が中央にいて俯瞰、目と髪は青、全体の色数は少な目」という想定の元生成した中での成功例の1つなのですが…
それまでに様々な失敗作(というと失礼ですが…)が100枚くらい完成してしまいました。
画像5に至っては画像1と全く同じプロンプトですが、出力にかなり差があることが分かります。
作画の安定性・再現性という面においてはプロンプト研究の余地があります。作画が安定しやすいプロンプトとそうでないプロンプトは明確に存在し、その差は主にNovelAIが得意とする絵柄かどうかに依拠している印象です。とは言え、NovelAIがあまり得意としない絵柄やシチュエーションについても、条件を適切に増やすことによって、ある程度は出力の幅を狭めることができます。
練習を重ねればもっと高い精度で狙い通りの画像を生成できそうです。
なんだかんだでプロンプト作成にもそれなりに技術が要る
プロンプト作成は難しいです。絵師各位がイラストの研究をしてきた労力とこれとを比較するのはご法度なレベルですが、ある程度の技術を要するレベルではあると思います。少なくとも1日で体得できるような代物ではありません。
プロには勝てない
お世辞にもまだAIの技術はプロ絵師のそれを上回っていないでしょう。同じ案件をAI絵師とプロ絵師に委託したら、十中八九プロの方が素晴らしいクオリティのイラストを描いてくれると思います。
一部、プロ絵師と区別がつかないイラストもありますが、そのほとんどは「NovelAIが得意な絵柄」という土俵で勝負したときのものです。
「代理プロ」として使っても上手くいかない
現実的な視点だと、AIは限定的なシチュエーションにて役立つ、といった印象です。主な使い方の中でも幾分倫理的なものとして思いつくのは、
ゲーム制作でのキャラ絵作成(特にカードゲーム等大量のイラストが必要になるもの)
ゲームのテクスチャ生成
キャラの背景画像生成
構図のアイデア生成
ラフ代わり
アニメーション生成
今まで作業量が多すぎて出来なかったもっと革新的な何か
辺りでしょうか。かなりイラスト1枚1枚の消費性が高い場合や、加筆修正をしっかり加える場合は、実用的になるといった感じです。
あと、細かい指定はAIだとかなり難しいですし、細かい部分が上手く描けていないことも多いです。
例えば、以下のイラストは元素法典という有名なNovelAIのプロンプト辞典から引用したプロンプトを用いて生成したものになります。確かにクオリティはハイレベルで、私なんかよりは間違いなく上手に描けるのですが、よく見ると髪の毛のシルエットが雑であったり、変なオブジェクトが入っていたり、右手がいまいちだったりします(右手は髪を掴んだりした方が効果的に見える)。
また、こういったいわゆる優等生的なイラストから少しでも外れるとクオリティが落ちるので、その点も改善に時間がかかると思われます。
そういうわけで、AIをプロ絵師の代理として使う方法は上手くいかないと考えます。
ここまでがNovelAIを使用してみた感想でした。NovelAIは画期的なサービスではあるものの、活用するには妥協・工夫が必要です。
仮に近い未来、AIイラストの幅が広がったり、AIイラストのクオリティが向上しても、望み通りのイラストを想像して生成してもらうというプロセスがある以上は、この傾向はそこまで変わらないと思います(大した根拠はないですが)。
追記(12/06)
どうやら元素法典等で普通に用いられている括弧()はNovelAIには対応していない説が有力(元素法典はリーク版で研究されている可能性大)なので、括弧()を全部中括弧{}に変換して再度何回か出力しました。
生成9,10枚目。上の生成例よりもエフェクトや色彩に富んでおり、より現代的なイラストが出てきました!
因みに1枚目から6枚目は人が出ませんでした。NovelAIはガチャと言われる所以がいかんなく発揮されました。
(追記終わり)
AIイラスト利用者としては、常に創作者へのリスペクトは保ちたい
話を変えて、ここからはAI利用者側としての心得なるものを考えます。
現状、AIイラストは賛否の分かれる技術ですが、その理由の1つに、「AI利用者側の、イラスト文化に対するリスペクトの欠如・理解の少なさ」があると私は考えます。
元来イラストをはじめとするデジタル文化は、様々なグレーゾーンを、時にお互いの「リスペクト」によって許し合いながら大きくなっていったという側面があります。
2次創作、MAD動画、実況動画、サンプリング、オマージュ等の、法的・倫理的にグレー・アウトのものはネット上に多く転がっており、そしてそれを享受する人も多くいるのが事実です。
こういった行為の多くは、原作への愛情や、投稿作への熱量を、原作者が認めることによって初めて、不安定ながらも成立します(原作者が泣き寝入りしている場合や怒る場合もあります)。
イラストは、1つの歴然とした文化であり、コミュニティであり、信頼関係であります。
こういった背景を蔑ろにして、AIイラストを単なる新しい技術スタックとして使用して、「MMDからアニメーションが出来る!!AIの新時代だ!!!」みたいなことを(なんならリーク版で自動生成して)喧伝するのは、余りに元動画作成者一同及びMMD創作者等へのリスペクトを欠き、文化を破壊する危険な行為であると言わざるを得ません。
AIイラストによって創作者の裾野が拡大することは間違いありません。今後凄い作品が世の中に誕生するでしょう。ですが、その準備として、著作物に対する意識の矯正、そして創作者に対するリスペクトを今一度大切にする必要があるのではないでしょうか。
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