短編小説 / わたくし
こう思うのです。
わたくしめは、きっとこの世に一人だけの
大層素晴らしい才能を持った人間だと。
わたくしめは、他の誰よりも見目が良く
ほがらかに笑う人間だと。
わたくしめは、人から好かれ、
また、おなじように人をあいせる素敵な人間だと。
ですがたまに、こうも思うのです。
わたしのような人間は、この世に腐るほどいて、
これのいった才能のない、ありふれた人間だと。
わたしのような人間は、たとえ笑っていたとしても、
わたしの笑顔をみてしあわせになる人など居ないのだと。
わたしのような人間は、ひとに好かれることなどなく、
ひとからのたいそうあたたかな好意を無下にする
どうしようもないほど愚かしい人間だと。
しかしたまに、こうも思うのです。
それがわたくしで、それがわたしで、
きっとみんながわたくしとわたしを持っているのだろうと。
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