【日記】スマホの売り渡し
二、三年使っていたスマホのSIMカードの読み込みが悪くなったので、機種変更をすることにした。三世代も下ったもので、よっぽど性能が上がったものかと思ったけれども、使ってみて、違いが分かるような分からないような感じから先に行かないような感じで、これの為に三万円出したのかと思うと、デジタルに関する税金のような徒労感が漂う。
古い、SIMカードの差し替えのできるスマートフォンは、三世代前だけれども買取をキャリアの方でしてくれるようで、二千五百円の値が付いた。中古として、誰かが使うのだろうか。
今まで、記憶媒体を兼ねて使っていた機械にはつきものの、「オールリセット」というのをやった。はじめに「オールリセット」を押したのは、忘れもしない、データバトルという、その辺のバーコードを読んで、その乱数から一人のロボットのような個体を作って、敵と戦うというゲームだった。ものすごく簡単なシステムだったので、能力はすぐに頭打ちになり、また初めからやり直すのに、「オールリセット」というコマンドか何かがあった。それでも数日か、何週間か遊びつくしたデータが消えていく様を、何か災害が土地を襲うような、禍々しくも清々しいものとして眺めていたのを思い出す。
古いスマホの「オールリセット」を行うと、画面中央に、虹色に滲む円が表示された。このスマホを買った時、初期設定のときだけ出てきた表示だ。それが、最近見たドラマ「SPEC」の、記憶操作をする能力者が人の記憶を消すときのエフェクトとそっくりだったので、何だかスマホが自我を持ったようで生々しい気分になった。
リセットをした翌日、ヤマト運輸の人がそのスマホを取りに来て、ハン・ソロの冷凍カーボンパッケージのような感じで、圧着する段ボールに詰め込んで、十秒もしないうちに行ってしまった。