【日記】ONCE AGAIN

 私は、生きるという苦しみを得ながら、なんとか生き延びて見せる。

 ライムスターの「ONCE AGAIN」を、何度目かわからないが、聞き直した。なぜか、仕事が終わる直前になると、頭の中で流れて来る。
 ずいぶん昔に聞き込んでいた。佐々木中という哲学者が、ミュージシャン、あるいはものを作る人の中でたぶん一番くらいに尊敬していると言っていたのが、ライムスターであったと思う。そこで知って聞き始めたのだが、特にこの「ONCE AGAIN」と、同テーマの別サイドの趣のある「ラストヴァース」の入っている「マニフェスト」、それから「ゆめのしま」「The Choice is Yours」など名曲の入っている「ダーティーサイエンス」が、とても印象に残っていて何度も聞いた。
 初めに聞いたのは、アルバム「噂の真相」なのだが、これはまだラップというものを聞き慣れていなかったので、なんだか勉強のように繰り返し聞いた記憶しかなく、印象に残っていない。
 もちろん、今聞くといい曲がたくさんある。プリズナーNo.1,2,3が印象深い。だが、今は「ONCE AGAIN」の話だ。

「マニフェスト」は、たしか、ライムスターが活動を始めて十年目のアルバムだった。一つの節目であり、わからないが、何らかの伸び悩みがあったのだろうか。少なくとも、新曲を出すまでのブランクが少しあったようだ。しかし、満を持して十年目にして、それにふさわしいアルバムを出した。
 その劈頭第一が「ONCE AGAIN」である。その、ブランクがあったという状況自体を曲に盛り込んでいる。今、何かをし悩んでいる。あるいは、新しいことを始めるには、もう遅きに失しているかもしれない。創造的なことをしたい。けれども、それはもう若いものに任せるべきなのではないか。自分は、フレッシュな感覚をもう持ち合わせてはいない。会社員に甘んじて、新しいことをしようだなんて色気を出さずに、世の中に熟れていって、何万人の中の一人として埋没して生きていくべきなのではないか。
 たぶん、そういう悩みを持っている人は、少なくないだろう。
 ライムスターは、そこまでの無名者ではないし、どこまでか伸び悩んだというのは半ば演出であるかもしれない。だとしても、この歌はどこまでもそう思う人の背中を押し続けるのではないかと思っている。

午前零時 日付の変わる瞬間 雨上がりの冷気 感じながらまた誓うリベンジ 気が付けば人生も後半のページ なのに未だ半端なステージ 時には手痛く食らっちまうダメージ ……

ライムスター「ONCE AGAIN」

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