【日記】植物

 植物は強い。先日、亀戸天神の藤を見に行ったが、ちょうど散りかけのいい具合になったタイミングだった。綺麗だなあと暢気に見ている分には見世物にもなるが、山をよく知っている人は嫌うらしい。この蔦植物は、いったん山に蔓延ったら最後、どんな樹木にも絡みついて殺し、藤だらけにしてしまうらしい、しかも藤には毛虫が付きやすいという、必然的に毛虫の湧いた嫌な山が出来上がるという、その山に藤があるかどうかで、手入れされた山かどうかが判断できる、と、そういったことに詳しい人から教わった。繰り返しにはなるが、それがどういう生態を持っていようと、眺めている分には、縦に垂れる紫のきれいな花の連なりには違いない。ナガミヒナゲシも繁殖力にものを言わせてどこでも見られる花の代名詞となっている、じっさいにはどんな恨みがあるのか知らないけれども、インターネットできれいな花が咲いていると画像が上がると、なぜかそこに、これはナガミヒナゲシだ、外来種だ、毒があるので危ないなどと急に言い始める人がたくさん現れる。こちらの方は、それほど草木に詳しくない人でもこういうことを言いはじめるように見える。どの植物が見た目はきれいでも醜い生態を持っているとか、一様になるからいけないとか、うまくは言えないけれども自分は同じ意見を持たない。圧倒的な淘汰圧が働くというのも、自然界を長期的に見ていると、いくらかあった光景なのではないだろうか、人間様が、自分個人の精神を働かせて、目くじらを立てるべき問題なのだろうか。山の管理とかいった、実利あるいは実害のある問題であるなら話は別だろう。全くそれらとは関係なく、仕事のお客さんから、あるとき庭に生えているジャスミンの枝を、傍から見るとあっさりしすぎるような感じでポキっと折ってしまい、それを貰ったことがある。水に差しておけばしばらく持つ、匂いが良いからと。じっさい、水に差しておいたらもう何日も生き延びて、花の小ささからは意外なほど、一室を充たすような匂いを放ち続けている。じつに快い光景だった。

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