【日記】キーボード配列とバイリンガル

 言語において狭間を行っている人、多言語の波と格闘している人にとったら失礼な話かもしれないが、多言語を使い分ける人と、パソコンのキー配列をいろいろ使い分ける人とは、ある程度共通しているところがある気がする。
 今、たぶん、自分の言っていることを信用するとしたら、このかな配列、正確にはJISかな配列と、そんな呼び方をしていたことを思い出したのもやっとなのだが、これを練習し始めてから一週間が経過した。しかし、じつは、前にこのJISかなというキー配列を、やり込んだことはあった。記憶では、今は入力スピードは80~100key/minほどであるが、その時は60くらいでとどまっていた気がした。それほど本格的に取り組んではいなかった。前の記事に書いていたが、JISかなという配列を、当初は最も早く打てる配列として実証されていたのだが、自分個人の感想としては、ナメていたのだ。だから、JISかなは、周りの人間が使っていたから、使わずに否定するのもなんだから、申し訳程度に練習していたという程度で、ほとんど本腰を入れて練習してはいなかった。では、その頃に何を練習していたのかといえば、月配列というものだった。
 これは、説明すれば長くなるので、機能的なところ、理念的なところは、リンクを張ってごまかそうと思う。
中指前置シフト新JIS「月配列」
 前置シフト。新JIS。この配列を表現するには、この二語で足りると思う。新JISという、幻の企画をブラッシュアップし現実化し、今使っているJISかなという、一見して暫定的に、ドグマティックに決定したとしか見えない配列に対して、いくつかの要素において、完全に否を突き付けている。曰く、四段の、しかも広範なキー領域をすべて打ち尽くすのはハードルが高い。曰く、日本語に対して、何の最適化もなされていない。曰く、たとえば、「きゅう」と打つとして、キーはqwertyでいえば、「g(4」になるわけだが、ここで「(」という文字はshiftを押下しながら「8」のキーを打つことで、順番で言うと「g→Shift→(押しながら)8→(既にShiftを離して)4」という順番で打たなければならず、何というんだろうな、格闘ゲームの判定を過たずに打ち切らねばならないみたいな、独特の技能が要り、それって難しいから前置シフト(これについては、時間をいただければ、完全に説明することも可能だが、疲れたので、さっきのページを見て確認していただきたいと思う)に変えればいいじゃん、等々。
 その謳い文句に完全にやられた私は、その月配列という、PCでは標準ではどんなものも対応していないから、新しいユーティリティを入れなければ実現できない配列にはまり込み、そのユーティリティを入れて練習していたりしたのだ。本筋はここからだ。今、その月配列とやらも忘れ去り、またqwertyによるローマ字入力しかしなくなった現状から、急にJISかな配列を再び練習し始めたところ、この、前にやり込んでいた月配列のキーが、記憶としてどんどん割り込んでくるのである。で、これが、バイリンガルの人が、一つの言語と別の言語が混ざって奇妙なことになるのと、共通するところがある気がしたのである。
 これは、ある意味では意外ではあった。もう、その配列を練習していたのははるか前の話だ。そして、完全に忘れていたと思うのは、qwertyによるローマ字入力をしていた時期には、まるで思い出す予兆もなかった。それが、慣れないかなを入力すると思ったとたん、急に記憶を取り戻したのである。で、それがえらい邪魔をする。打とうとしたとき、間違って月配列のそのキーを思わず打ってしまうのだ。人間の記憶の積層って、こんな風になってるんだと自覚することにもなった。しかし、実用的に使うには、前の記憶を、とりあえずは噴出しないように、今のJISかなの記憶によって、上書きしなければならない。そんなことが、PCでもないのに、できるのかどうか知らない。しかし、私は、前に紛らわしかったqweとJISや月配列をしっかりと使い分けて使っていたじゃないか。もし、自分の脳があれから劣化していなければ、同じことが出来るはずだ。しかし、もしそうでないとしたら……

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